
最近は「世界をわかりたい」というモチベーションでいろいろなことをしているという、イラストレーターのヤギワタルさん。わが道を行っているようなヤギさんですが、意外にも流行に流されて道を選んでいたことがあるそうで、そのことになにか嫌な気持ちがあるようです。詳しく聞いてみました!
栃尾クリエイティブの。
ヤギ反対語。
栃尾こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
ヤギイラストレーターのヤギワタルです。
栃尾このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人や好きな人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。引き続き、ヤギワタルさんに来ていただております。よろしくお願いします。
ヤギよろしくお願いします。
栃尾えっとですね、休憩中にちょっとお話を聞いたら、「わかりたい」が強いと。
ヤギそうですね……
栃尾(笑)あれ? 強い?
ヤギ世界を。
栃尾うん、世界を。
ヤギ世界をわかりたいという気持ちだけで最近生きてますね。
栃尾(笑)わからなくもないです。今どういうところがわかりたいんですか?
ヤギ「今どういうところがわかりたい」それまた難しいですね。
栃尾えっ、そっか。
ヤギまあ……
栃尾「なんでそう思うのか」とか。
ヤギ色んなレイヤーがあるというか。
栃尾うん、うん。
ヤギ自分が仕事で関わっているのが出版業界なんですけど。
栃尾はい。
ヤギその「出版業界ってどういうことになってるんだろう」っていうのを、僕は普段イラストレーターとして出版に関わっている、出版の仕事が多いので。
栃尾うん。
ヤギイラストレーターとして出版に関わってはいて。
栃尾はい。
ヤギそのイラストレーター目線では、ある程度理解できているつもりなんですけど、「他の人から見たらどうなってるんだろう」「他の人から見たらどういう風に見えてるんだろう」っていうのを気にするようになってきているんですよね。
栃尾ふーん。
ヤギ「そうやって他の人から見たら、違う出版業界っていうのが見えるんじゃないか」と思って。
栃尾はい。
ヤギまず、誰が出版に関わっているのかっていうのを調べて、デザイナーとか、編集者とか、取次とか、あとは営業さんとか。
栃尾はい。
ヤギ宣伝とかもあるのかな。
栃尾うん、うん。
ヤギまあ、事務とかもありますけど、出版社と、あとは書店か。
栃尾はい、はい。
ヤギあと読者っていうのがいますよね。出版に関わっているっていう仕事ではないですけど、読者がいるから成り立ってるみたいな。
栃尾はい。
ヤギで、それぞれから見て、どうなっているのか、っていうのを見るために、書店の人が書いた本とかを見ると。
栃尾ふーん。
ヤギ並べ方にすごい工夫をしてるとか。
栃尾うん、うん。
ヤギ仕入れ方とか、ビジネス……、なんだっけな、こないだ読んだのが『タイトル』っていう荻窪にある本屋さんの辻山さんっていう方が書いた本を読んだんですけど。
栃尾店長さんが?
ヤギ店長さんが書いた本を読んだんですけど。
栃尾へぇ、タイトル?。
ヤギそうですね、荻窪にある……
栃尾タイトルっていう。
ヤギタイトルっていう。
栃尾タイプル?
ヤギ『Title(タイトル)』。
栃尾『タイトル』っていう本屋さん。
ヤギはい。
栃尾へぇ、はい。
ヤギ池袋のリブロで働いていた方が。
栃尾あぁぁ、はい。
ヤギリブロがなくなったタイミングで、自分でお店開いてやってるんですけど、「ビジネス本を置かない本屋じゃなくて、何割、自分が好きな本を全部置くっていう考えもあるけど、街の本屋としてはある程度新刊書が必要なんじゃないかみたいな考えがあります」とかって書いてて。
栃尾うん、うん。
ヤギなるほど、と。
栃尾本屋さんの。
ヤギ本屋のあり方みたいなのを書いてるんですよね。
栃尾うん、うん。
ヤギ本屋もどこに本屋があるかによって違ってて、そこは荻窪の駅から15分とか20分くらい歩かなきゃいけないところで、その辺に住んでる人のための本屋でもあるわけですよね。
栃尾そうですよね。
ヤギだから、その辺に住んでて、別におしゃれな本とか真面目な本が欲しいわけじゃなくて、ちょっと週刊誌買いたいとか、漫画買いたいっていう人も絶対いるから、そういう人にも本を置いてるとか。ショーウィンドウにはそういう人が通りかかったときに、「何だろう?」って思うような本を置くとかしてるって言ってて、なるほどな、みたいな。
栃尾役割がちゃんと。
ヤギそうですね。
栃尾そこに哲学みたいなのもあるわけですね。
ヤギそうですね。
栃尾ふーん。
ヤギで、まあ、そうやって「色んな人がいるんだなぁ」みたいなのをわかったっていう……。
栃尾(笑)。
ヤギだけですね。で、それが出版業界。
栃尾はい。
ヤギまあ、デザイナーの人の話とか聞くとすごく面白くて。
栃尾はい、はい。
ヤギまあ、印刷会社とか。
栃尾うん、うん。
ヤギ印刷、こんなこだわってんだみたいな。
栃尾ね、印刷のところ、私も見てみたいなぁ。
ヤギとか。
栃尾なんて本ですか、それは?
ヤギデザイナーですか?
栃尾はい。
ヤギデザイナーのやつは、こないだ『アイデア』っていう雑誌が出て。
栃尾知らない。
ヤギで、「日本のブックデザイン史」っていうのを特集があったんですよ。
栃尾はい。
ヤギ長田さんっていう編集者とか、デザイナーでいうと水戸部さんとか。
栃尾ふん、ふん、それで。
ヤギが関わってる号で、色んなトークイベントやってて、鈴木成一さん呼んだり。鈴木成一さんって、装丁家で、日本で一二を争う仕事量の方で。
栃尾へぇ、一緒に仕事されたことあるんですか?
ヤギ何回か。
栃尾へぇ。
ヤギあって、とか、トークイベントで祖父江慎さんっていうコズフィッシュっていう、結構漫画とかが多いですかね。
栃尾ふーん。
ヤギとかやってる人の話を聞くと、装丁家は何を見てるかみたいなのは、また違うんだって。
栃尾うん、うん。
ヤギイラストレーターはイラストを使う本しか見てないですけど、装丁家はイラストを使わない本とかもいっぱいやってるんで、文字の置き方とか、書店に入ったときに見える本の見え方。
栃尾あぁ、はい、はい。
ヤギ「何メートル先にあるときの見え方と、手に取ったときの見え方が違うんだ」みたいなことを言ってて、「なるほどなぁ」みたいな。
栃尾(笑)「なるほどなぁ」って。
ヤギ「そんなこと考えてんだぁ」みたいな。
栃尾あぁ、はい、はい。
ヤギのがまあ面白いなと思って。
栃尾それ、でも出版という枠でそこまで手を伸ばしていくってことですかね。
ヤギそうですね。
栃尾ふーん。
ヤギそうすると、出版業界って言っても、一言で出版業界ですけど。
栃尾うん。
ヤギそれが色んな層があることに気付く。
栃尾うん。
ヤギそうすると、自分の頭の中の出版業界っていうのが結構豊かになってくるんですよね。
栃尾うん、確かに。
ヤギ色んな人の視点が入って来るから。
栃尾うん、うん。
ヤギだから、本を見たときに、そこから得られる情報量が違うんだと思ってるんですよ。
栃尾あぁ、それ教養ですね、まさにね。
ヤギそう、で、その延長線上で、例えば街を歩いて……、これなんか前も誰かに話したかもしれないですけど、街を歩いたときにその街から得る情報っていうのは、わかりたい……、わかりたいと繋がりますかね?
栃尾(笑)わかんない。
ヤギ色んな視点に立ってないと、その街から得られる情報が違うんですよ。
栃尾そうですね。
ヤギ自分の視点でしか、その街に行ったときに、自分の視点しか持ってないと、自分がどう思うかしかわかんない。
栃尾はい。
ヤギだから、京都とか行っても、何にも、子どものときに京都に行っても面白くないのは、何にもわかってないから。
栃尾そうですね。
ヤギですね。でも、まあ、わかりたい……。なんでわかりたいかが、わかんないですけど。
栃尾(笑)。
ヤギちょっと日本史を勉強してから京都に行くと、「ここアレか」みたいな。
栃尾うん、うん。
ヤギここで、池田屋事件っていうのが、薩摩藩士が新撰組にやられたみたいなとこがあるんですけど。
栃尾はい。
ヤギそこが居酒屋になってて。
栃尾へぇ。
ヤギ居酒屋なんだ、みたいな。
栃尾はい、はい。感慨深いですよねぇ(笑)。
ヤギ感慨深いじゃないですか(笑)。
栃尾(笑)。
ヤギ居酒屋になっちゃったみたいな。
栃尾由緒正しい場所なのにみたいな。
ヤギ由緒(笑)。
栃尾由緒正しくはないか。
ヤギ人殺し、あんな人殺しがあったとこで、ワイワイ飲んでんだみたいな。
栃尾確かにね。
ヤギとかまあ色々あって、まあ、わかるだけで面白いなぁ、みたいなことを感じますけど。
栃尾うん、うん。
ヤギまあ、それがどうなるのかっていうのはちょっとわかんないですね。
栃尾うーん、私も、わかりたい気持ち結構あるなって思ってて。
ヤギはい。
栃尾先ほどちょっとチラッと休憩時間にお話したりとか、このポッドキャストでも結構言ってますけど、植物を勉強し始めて。
ヤギうん。
栃尾でも、植物と言っても、植物学のほうにたぶん興味があって。
ヤギうん。
栃尾なんか、どうやってこう生存してきたのかとか、まあ、生存戦略ですよね、簡単に言うと。
ヤギうん。
栃尾「そういうことによって、なんか物事がわかるんじゃないか」という予感で勉強しているって感じなんですけど、今、ヤギさんがおっしゃったように、教養的なわかりたいっていうのはすごい少ないんですよね。
ヤギあぁ。
栃尾少ないっていうか、欲しいんだけど、そこに向かって行動できないっていうか。確かに、おっしゃってることはわかって、京都に行ったときに、歴史とかをすごい知ってると全然違うんだろうなと思うんですけど、全然気持ちが向かないっていう(笑)。
ヤギあぁ。ちょっと今思い出したんですけど。
栃尾はい。
ヤギ「なんでわかりたいと思ったのか」っていうのを今ようやく思い出しました。
栃尾はい、はい。
ヤギ今、イラストレーターなんですけど。
栃尾うん。
ヤギなんで自分がイラストレーターになったんだろうとかっていうのを気付いた瞬間っていうか。
栃尾へぇ。
ヤギ別になりたいから、将来何になりたいって思う時点で、子どものときとかって全然モノ知らないのに、何になりたいとか思うのは。
栃尾うん。
ヤギその時代に何が流行ってるかっていうのがすごい影響してて。
栃尾そうですね。
ヤギ僕の場合は、子どものときに『ドラゴンボール』とか流行ってて。
栃尾はい。
ヤギ『ジャンプ』が最大発行部数達成した時代とかに、『少年ジャンプ』読んでたんですけど。
栃尾はい。
ヤギだから、漫画っていうのがすごい身近にあった。
栃尾あぁ、はい。
ヤギだから、なんか漫画家になりたいみたいなのが最初にあって。
栃尾ふーん。
ヤギそのあとに、『スラムダンク』とかも読んで、バスケやったり、バスケ部に入ったんですよ、僕。
栃尾めちゃめちゃ影響されてる(笑)。
ヤギそう、めちゃめちゃ影響受けてて。でも、その時点では自分がそのブームの中にいるっていうよりは、自分はスラムダンク好き、だからバスケやる、バスケ面白い、バスケ部入る、みたいな自分の中で、自分がブームに踊らされてるとは思ってないんですよね。
栃尾(笑)自然な流れですもんね。
ヤギ自然な流れなんですよ。
栃尾はい。
ヤギで、お笑い流行ってる、お笑い面白い、自分もボケてみる、面白い、じゃあ、お笑い芸人なろうみたいな理屈が、自分の中で、理屈が結びついてお笑い目指したりしたんですよね。
栃尾あっ、したんですか?
ヤギそう、して。お笑芸人になろうとしてた時期もあって。
栃尾え、それ初耳ですかね。聞いてたかな?
ヤギ初耳かもしれないですね、あんまり言ってないですね。
栃尾そうなんだ(笑)。
ヤギでも、そういう「ブームに踊らされてる自分」っていうのに気付いてないのに。
栃尾はい。
ヤギ「自分は何かやりたいんだ」みたいなことを言ってたっていうのに、大人になってから気付いたんですよ。
栃尾うん。
ヤギそれって、「今もブームに踊らされてる可能性ある」って思って。
栃尾うん。
ヤギまあ、踊ったから何みたいなのはありますけど、そのブーム、今時代がどうなっているのかを知らないと、自分の決断じゃないと思ったんですよね。
栃尾それがちょっと……。
ヤギ自分の決断じゃなくて、時代がこうだからこういう風にしたいとかって思うのは、時代の要請というか、時代の影響受けてる、それ嫌だって思ったんですよね。
栃尾ちょっと癪だみたいな(笑)。
ヤギそう、それ嫌だから、社会とか歴史とかがどうなってるのかっていうのをもっと俯瞰して見て、自分が影響受けないように。
栃尾あー。
ヤギ自分の決断とか、これが本当に自分の決断なのかっていうのを深く、深掘りしたかったんですよね。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギだからそのためには、社会とか歴史とかがどうなっているかっていうのを理解しないとダメで、だから、ずっとわかろうとしてる。歴史とか勉強してるのもその一つなんですよね。
栃尾流行に踊らされたくないから(笑)。
ヤギそうですね。
栃尾流行をちゃんと流行として把握したいってことですね。
ヤギそうですね。だから根本で言うと自由というか、その流行が、流行っていうのは誰かが作ってるもので、誰かが「これ買ってください」みたいな気持ちで始まってるから。
栃尾はい、はい。
ヤギその誰かが「買ってください」って言う気持ちで、自分も買って、しかもなんかバスケ始めて。
栃尾(笑)。
ヤギ別に井上雄彦が悪いわけじゃないですけど、あのマンガすごくいいから。
栃尾いいけどね(笑)。
ヤギ今も大好きですけど、それで結局バスケ部入っちゃうっていう自分の浅さに悲しくなっちゃうんで。
栃尾(笑)そうなんだ。面白い。
ヤギその「浅さ」から逃れたいですね。
栃尾で、わかりたいと。
ヤギそうですね。
栃尾へぇ。それはなんか私も考えてみたいですね。
ヤギ結構、なんか皆がどうかわかんないですけど、わりと、「今これ流行ってるからこれやろう」みたいな、「今教養だから教養を身につけよう」みたいな。「えっ、じゃあ、今教養じゃなかったら教養身につけないのかよ」みたいな。
栃尾うん、うん。
ヤギその辺ちょっと、もうちょっと冷静になってみてもいいんじゃないかな、みたいな。
栃尾(笑)そうですね。なるほど、なるほど。はい、じゃあ、ちょっとお時間になりましたので、えっと、ちょっと告知を久しぶりに入れたいと思いますが、私、アウトプット相談とライティング相談っていうのを無料でやっておりまして、毎週土曜日の午前中にやってるので、もしご興味があればホームページを覗いてみてください。ということで、よろしいですかね? 以上、栃尾江美と。
ヤギヤギワタルでした。
<書き起こし、編集:折田大器>

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