【コラム】「好きセンサー」を磨く方法


何かを継続するためには、自分の「好き」や「楽しい」を組み込むことが大切。特にアウトプットや発信は能動的な行動なので「好き」「楽しい」と思うことでないと続けられない。でも、そこで立ちはだかる大きなハードルが「好きがわからない」「興味がわくものがない」という問題。そういう人は、「好きセンサー」が鈍っているのかもしれない。

見れば見るほど「見る目」が養われる

「見る目があるね」と誰かに言ったことがあるだろうか。その際、その人のどんな部分を見て「見る目がある」と言ったのか。きっと「質の善し悪しがわかる」ということだと思う。何かを目にして瞬時に「質が高い」とわかる。それは「見る目がある」人の能力だ。

その人はどうやってその能力を手に入れたのか。よく言われるのは「たくさん見る」ということ。例えば「親が書家で、子供のころから優れた書を見ていた」「子どものころからクラシックを聴き続けている」「映画を1年に何百本も見て、感想をしたためている」など。

よいものをたくさん見て、その何かを自分の中にためている人が「見る目」を養うことができる。

だから、自分の本当の「好き」「楽しい」を知るためには、自分の中にある「好き」「楽しい」にたくさん触れなくてはいけない。自分の中にある、質の高い「好き」と「楽しい」。

「楽しい」を求めて怒られてきた私たち

ところが私たちは、子どものころから「好き」や「楽しい」を追い求めると叱られる環境にいた。学校でおしゃべりをすると怒られる。教わったことと別のやり方をすると注意される。ずっと遊び続けていると叱られる。

大人になっても同じだ。「将来のため」「体づくりのため」「人付き合いのため」といった「~ため」を抜きにして、「好き」で「楽しい」だけの時間をたくさん持っている人が、どれくらいいるだろうか。私たちには圧倒的に「好きセンサー」を磨く時間が足りていない。

比較されて「嫌い」になってしまった私たち

小さな子どもを見ると、ほとんどが楽しそうに走り、楽しそうに歌い、楽しそうに絵を描いている。ところが大人には、「走るの嫌い」「歌うの嫌い」「絵を描くの苦手」という人がたくさんいる。

これは、比較される環境にいたり、自ら誰かと比較したりして、嫌いや苦手になっていったのだろう。本当は好きだったり楽しかったりするのに、だれかと比べて劣っていることが恥ずかしくて情けなくて「嫌い」になっていくのだ。

誰とも比較しなかったら、誰にも聞かれなかったら、たとえ音が外れていたって歌うことは楽しいのだ。

下手でもいいから、ただ「楽しい」を求めてみる

怒られたり、比較したりして追い求めるのをやめてしまった「好き」「楽しい」の時間を、改めて増やす。ちょっとやりたかったことを、とりあえずやってみる。意味がなくてもいいし、詳しくなくてもいいし、誰かよりすごく下手でもいいし、1回で飽きてしまってもいい。とにかく、やりたいことを全部やる。

それこそが「好き」を見つける方法。本当の好きを見つけるために「好きセンサー」を磨く方法。そうしてセンサーを敏感にしておくと、「好き」を見つけやすくする。

「やってみたら好きじゃなかった」と思っても、その分センサーが磨かれているから大丈夫。「見る目を養うためには、好みじゃない美術品も見ておいた方がいいよね」と同じことだ。

私が好きな『ずっとやりたかったことを、やりなさい』という本でおすすめされているのは、毎週数時間「アーティスト・デート」をすること。自分の中のアーティスト(私はどんな人の中にもアーティストはいると思っている)とデートをするのだ。美術館に行くでもいいし、写真集をめくるでもいい。そこで、自分の中のアーティストの感じ方を「じっ」と見つめる。

もうひとつ、「ソース」という本でおすすめされているのは「やりたいことを全部やる」という方法。絵を描いてみる、楽器を弾いてみる、小説を書いてみる……。「いまさらプロになんてなれないし」なんて言い訳は置いておく。「~のために」という目的や意味は必要がなくて、「好き」の時間を増やすことが大切だ。

「好きセンサー」が磨かれて、「好きなはず」がわかってくる

「好きセンサー」が磨かれると、好きなものを見つけやすくなる。ちょっとしたキャッチフレーズ、感じ方や雰囲気、そんなものでも「私は絶対好きなはず」がわかってくる。魂に響くものがわかる。

そうしたら今度は、仕事でも、目的のあるものでも、好きなことを見つけやすくなる。匂いで分かってくる。

「楽しいけど意味がない」ことには「好きセンサーを磨く」という大きな意味があるのだ。

好きなことが分かれば、アウトプットや発信もしやすい。さらに、アウトプットしているとますます「好きセンサー」が磨かれる、という好循環が訪れる。

<執筆:栃尾江美

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