一般的に、記事にはリード文がある。Webでも、雑誌でも同じ。雑誌は見逃されがちかもしれないけれど、特集やコーナーの最初に「ABOUT」的なリードが入っている。書く人にとって、記事の内容はある程度決まっているが、リード文は自由度が高い。そのため、なかなか難しいと感じる人もいるようだ。
リード文をすべて書き換えられていた修業時代
私の持論は「リード文は本文より難しい」。ライターになりたての頃は、雑誌のリード文を書くたびに毎回ごっそり書き直されていた。今でも、初めての媒体を担当するときや、記事の趣旨が編集者さんとすり合わせできていないときに、まるっと書き直されてしまうこともある。
本文は、必要な情報、書くべきことがある程度決まっているため、そこまでダメダメなことは少ない。リード文は短いだけに、言葉や内容の選定が難しい。
ただ、数を重ねるうちに、ある程度のセオリーがあるとわかってきた。それを知っていると、少しはラクに書けるのではないかと思う。
一文目は「自分に関係がある」と思わせる
冒頭から魅力的なセリフを入れたり、衝撃的な事実を入れたりと、テクニックはいろいろあるが、毎回は使えない変化球のひとつ。それらは後で覚えるとして、基本的なセオリーから。
リードはだいたい3文~5文ほどで構成されると思う(もちろん例外もある)。やはり大事なのは一文目。そこで離脱されるともったいないので、まずは「読みたくなる」以前に「自分に関係がある」と思わせたい。例えば、「あるある」はそのひとつ。
「習慣って大事ですよね」
みたいなことだ(文章はもっと洗練させたいけれど)。ジョギングの記事だからって、
「ジョギングっていいですよね」
と始めると、「いや、よくないけど?」と考える人が離脱してしまう。それよりは「習慣が大事」と思う人の方が多そう、という予想から、たくさんの人を取り込むところから入る。
そこで読者に「私に関係ありそう」と思ってもらいたいわけだ。
ここで「必然を演出する」こともある。「リモートワークで○○に悩んでいませんか」と言えば「最近リモートワークが増えているから、この記事が必要なのだ」という説明になる。他にも季節性、流行、社会問題などがその種になり、「まさに今の自分に関係がある」と思わせる効果がある。
「こんなことを書いている記事です」と伝える
関係あるということを伝えたら、その大事なことのために「こんなことを書いている記事です」と伝えていく。「だから、読んだ方がいいですよ」と、さりげなく説得する。
「毎日10分の習慣を確実に身に着ける方法を教えてもらいました」
など、できるだけ具体的に書いた方がいい。
「毎日10分の習慣を継続するには、時間を決めるのがポイントでした」
と、さらに具体的にしてもいい。ネタバレで中身を読んでもらえないと思うかもしれないが、それで離脱する人より「もっと知りたい」と思う人が多ければいいのだ。この例でいえば「時間を決めるってどういうことなんだろう?」と、より興味が湧くことが想像できる。
もったいないからといって、隠しておくのは逆効果。ぼんやりとさせるほど、魅力的なリードからは遠のいていく。
ぼんやりしたリードでイメージができるのは、中身を読んだ人だけ。それではリードの意味をなさない。それはつらい。
読者が知らない(わからない)言葉をなくす
これは本文中も大事なことだが、「読者が知らない(わからない)言葉をなくす」ことはとても大切。知らない言葉を使う場合は、説明を付けなくてはならない。
本文中では言葉を丁寧に解説することもできるが、リード文ではさらりと説明する必要がある。がっつりした説明文は読みたくないからだ。
これらの要素を踏まえて、短くコンパクトに、わかりやすくリズムよく、冗長にならないように書く(それが難しいのだけど)。人によるが、基本的にすぐ書けるようになるわけではない。少なくとも私はなかなか書けなかった。だから、雑誌やメディア記事など、さまざまなリード文を、上記の観点で研究してみるといい。
※この記事は、Radiotalkで話したネタをもとにしています。音声で聞く場合はこちら(↓)をどうぞ