
再三言っておりますが、最近植物の本を読んだり、街中の植物を観察している栃尾です。井川さんはカフエマメヒコでハタケ(農業)をやっていることもあり、植物に関しても思うところがありそう。私は植物を通して世界の何たるかを知りたいのですが、それは叶うのでしょうか?
栃尾クリエイティブの。
井川反対語。
栃尾こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
井川はい、マメヒコの井川です。
栃尾はい、このポッドキャストは私、栃尾江美がお話したい人をお呼びして、クリエイティブなことや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。
井川はい。
栃尾私、最近植物のことを詳しくなりたいなって思ってるんです。
井川ほう。
栃尾ほう(笑)。
井川植物。
栃尾そう、私ね、何回か前に話した教養にもつながるのかもしれないんだけど。
井川うん。
栃尾興味の方向が抽象的な方向ばっかりなんですよ、わりと。
井川うん。
栃尾で、具体的なことをちゃんと学んで抽象化を自分でするみたいなことをしないと、ずっとモザイクがかったパンダを見ているみたいな。
井川うん(笑)。
栃尾わかりますかね?(笑)
井川わかるよ。
栃尾「モザイクがかったのしか知らない」みたいなことになるんじゃないかなと思って。
井川うん。
栃尾究極的には、「世界とはなんたるか」みたいなことを知りたいんです。
井川なるほど。
栃尾で、そのためには何か「具体を極める」というとあれだけど。
井川知りたい、と。
栃尾知らないといけないんじゃないかと思って、その中で具体的なものの中で興味のあるものあるかって言ったら、なかなかなくて、「あっ、植物なら結構興味あるな」と思って。
井川はぁ。
栃尾(笑)っていう経緯(いきさつ)で、それにそういう話をしたときに、すごいつまんなそうにする人と、グッとくる人と2タイプいるんですけど(笑)。
井川うん。
栃尾「それはいいんじゃない」って言ってくれる人は、結構男性に多いですね。
井川うーん、ただ、今の話だと植物っていうだけだと具体性ないからね、植物っていうものがあるわけじゃないから。
栃尾あぁ、植物学。で、例えば、NHKで「植物の生存戦略」みたいな番組があるんですけど。
井川うん。
栃尾例えば、梅の花っていうのは蜜がランダムにあると。
井川うん。
栃尾蜜のない花が結構ある、と。
井川うん、うん。
栃尾っていう話があって、何のためかっていうと、とにかく花を咲かせるんだけど、全部に蜜があると木のエネルギーをすごく取ってしまうから、なるべくエネルギーを少なくして花をいっぱい咲かせて鳥を呼び寄せて、受粉をいっぱいするみたいな(笑)。
井川うん、うん。
栃尾生存戦略なんだよ、みたいな話をしていて。
井川うん。
栃尾で、そういうのを例えば人の世界で考えるとどうなのか、ビジネスの世界で考えるとどうなるかみたいなことを考えていきたいの(笑)。
井川うん。
栃尾という感じです。だから、生存戦略……自然淘汰が起こっているのが植物っていうか、自然の世界だから。
井川そうだね。
栃尾人間の思考が入らないじゃないですか。思考が入っていない世界で、何が生き残れるのか、何が生き残れないのかとか、そういうことを知りたいなって今は、まずは、思ってるんです。
井川うん、うん。わかりますよ。
栃尾わかりますか(笑)。
井川何か聞きたいことありますか?
栃尾(笑)聞きたいこと? 聞きたいことか、前に農業は自然じゃないと言っていたでしょ?
井川あぁ、言った。
栃尾でも、農業もやってみたら上手くいかないこととか色々あると思うんですよね。
井川うん。
栃尾それで、「農業も知るとやっぱり深いんだろうな」と思っていて、知りたいことっていうと具体的に難しいけど。井川さんはどれくらいやってるんでしたっけ、ハタケは?
井川ハタケはね、もう10年。
栃尾10年? 段々上手くなります?
井川ならない。
栃尾なんで?
井川なんでかって。
栃尾(笑)。
井川なんでかって、あのね、農業と植物っていうものでいうとね。
栃尾はい。
井川さっきの植物の戦略っていう話だけど、農業っていうのは、植物の戦略をむしろ無視しているわけ。
栃尾なるほどね。
井川例えば、キャベツっていうのがあっても、キャベツそのものには虫を避けるっていう能力があるわけよ、免疫力が。
栃尾ふーん。
井川だって、全部食べられたら。
栃尾困っちゃうもんね。
井川キャベツは困っちゃうわけだから。
栃尾うん。
井川だけどそうならないように農薬を撒いちゃうわけじゃん。
栃尾うん。えっ、キャベツの力を弱めているっていうこと?
井川そう。
栃尾はい。
井川っていうことになるから。
栃尾確かにね。
井川その植物の持っている本来の力を活かせているかって言ったら、活かせてないと思うわけよ。
栃尾すごい。ホント人間に喩えたくなりますね。
井川うん。
栃尾(笑)。
井川だから手助けをしてあげれば、その人の持っている防衛能力、もしくは免疫力を落とすことにもなる。まあ、落とす危険性もある。
栃尾うん。
井川っていうことがあるわけ。
栃尾まさに学校教育みたいだ(笑)。
井川ね、例えば、木に登って落ちちゃって怪我しちゃったっていう子がいたとするじゃない。
栃尾子どもがね。
井川子どもが。すると学校側は木登りを禁止する。
栃尾するね。
井川っていうことがあるでしょ。
栃尾はい。
井川で、これはよくないよね。
栃尾うん。
井川なぜなら、怪我をしないことが目的なんだから。でも、子どもはどうしても木があったら登りたくなる。
栃尾なる。
井川なるじゃん。でも、登りたい子どもと、怪我をさせたくない大人っていうのがあって。
栃尾うん。
井川その怪我をさせたくないっていう点において、自分の責任を取りたくないっていう思惑があれば、その木に登らせない、もしくは木に近づけさせないっていうことしか考えないわけ。
栃尾うん。
井川でも、一番は木に登らせて、折れる枝を見つけられる能力が子どもにあるはずなんだから。
栃尾なるほどね。
井川その枯れた枝に全体重かけたら落ちるわなって。
栃尾はい。
井川でも、子どもは自分の持っている防衛本能からすれば、「これは折れそう」、「これは折れなそう」っていうことを嗅ぎ分けられれば、その子は木にも登れるし、怪我もしないわけじゃん。
栃尾そうね、パーフェクト(笑)。
井川パーフェクトでしょ。でもそれを狙わないわけよ。
栃尾そうね。
井川っていうことがあるわけでしょ。
栃尾はい、あります。
井川それは何でかっていうと、それはサンプル数が少ないからなわけよ。
栃尾子どもの?
井川子どもが木に登って落ちるっていうサンプル数がいっぱいあれば、「こういうものは折れそうだ」。
栃尾はい。
井川つまり、何回か落ちればサンプル数が増えるから、落ちないかどうかがわかるわけじゃん。
栃尾何回も落ちないといけない。
井川何回も落ちないといけない。でも、中には落ちたことが致命傷で、一生台無しにするヤツもいるかもしれない。
栃尾うん。
井川でも、植物の世界ってそれが起きているわけ。
栃尾うん。
井川つまり、植物っていうのは、例えば、草や木は、すごいダメになっている数が多いわけよ。
栃尾うん。
井川ダメになっている数が多いことで、そういう風に何て言うんだろう、生存戦略が達成されているわけじゃん。
栃尾はい。
井川だけど、人間っていうのは、自分の人生を台無しにしたくないから。
栃尾1つの命がすごい重要っていうこと?
井川そう。
栃尾確かに植物とかに比べてね。
井川そう。
栃尾はい。
井川だから、生存戦略を活かしきれないのよ。
栃尾人間という生命の定めだってこと?
井川そう。
栃尾はい(笑)。
井川つまり、「ダメになるヤツもいたってしょうがないよね」っていう概念を持てれば。
栃尾持てないねぇ。
井川植物の生存戦略っていうのは活かせるけど。
栃尾うん。
井川「いや、ダメになっちゃダメです」なんて言ったら、植物の生存戦略なんかを当てになんかしてないで、農薬撒いちゃったほうがいいになっちゃうわけ。
栃尾確かにね。
井川でも、そうすることで、その植物の持っているポテンシャルを下げちゃうことになるから、ダメ人間がいっぱい増えるってことになっちゃうじゃない。
栃尾そっか、実際、今そうなっているってこと?
井川そう。
栃尾ふーん。
井川だから、植物から学びたいっていうことがあるとすれば、ある程度、子どもなら子ども、もしくは自分なら自分。
栃尾うん。
井川植物からビジネスを、植物の戦略からビジネスを学ぶなんていう都合のいいことを考えず。
栃尾(笑)なんで。
井川「植物っていうのはある程度の犠牲の上にその戦略が成り立ったんだ」って考えるべきなんだよ。
栃尾わかります。でも、ただ、今は命だったから、一個の命をムダにできない話だけど、例えば、企業がやる色んな施策とかってあるでしょ。
井川うん。
栃尾そういうのって、「バーンと数を打って、残ったヤツだけやりましょ」っていう戦略もあるから。
井川ある、ある。
栃尾命にはたぶん対応できないけど、転用できないけど、それが以外のことには結構使える理論もあるんじゃないかなと思って。
井川あると思う。だから、「失敗を恐れるな」っていうことじゃん。
栃尾そう、そう。そうねぇ。
井川だから、失敗を恐れるなっていうことはまさに植物から学んでいるわけよ。
栃尾あぁ、そう、そうね(笑)。
井川そうでしょ?
栃尾そうね、そう、そう(笑)。
井川で、植物はそうやって生き残ったものが、いわゆる、戦略っていう言い方になっているだけで、植物は戦略しようとしてそうなっているわけじゃないわけ。
栃尾たまたま、そうなっている。
井川たまたま、そうなっている。サンプル数が多いから、そうやって生き残ったものだけが、生き残ったっていう哲学的になってるわけよ。
栃尾生き残ろうとしているかもわかんないしね、っていう。
井川ううん、生き残ろうとしてないけど、生き残ったものが結果的には生き残ったってことなんだよ。
栃尾そうね(笑)。
井川当たり前だけど。
栃尾グルグルしてるけど(笑)
井川だから、そういう意味でいったら、自分の人生においても、やっぱり失敗を恐れない。
栃尾うん。
井川それでとにかく失敗の数を、サンプルを増やして失敗をしないようにするっていうことを学ぶべきだし、植物から。
栃尾うん。
井川いわゆる農業みたいなもので言えば、さっき10年もやってなんで上手くならないのかって言うと、毎年天候も違う。
栃尾はい、あぁ。
井川植えてる畑も違う。
栃尾うん。
井川どんどん、地力も落ちてくるっていうようなことがあって、サンプル数が足らな過ぎて。
栃尾なるほど。
井川10年やそこらでは、サンプル数としては全然足りてないのよ。
栃尾なるほどねぇ。
井川だから、そういう意味では、本当に絶対に上手くなるっていうことなんて、たぶん農業にはあり得なくて。
栃尾へぇ。
井川常に……、だから畑が広いとか。
栃尾色んなところにあるとかね。
井川色んなところにあるとか、先祖代々ここでお米だけ作ってるとか、そういうことなら別だけど。
栃尾うん。
井川うちみたいにやっぱり「今年はこんな風にしてやってみよう」みたいなことをトライアンドエラーだっていうことでいうなら、10年なんて植物のスパンで言ったら1年に1回しか試せないんだから。
栃尾うん、ほんとね。
井川3毛作とかね、2毛作やれる地域なら別だけど。
栃尾あぁ。
井川だから、高々10回しかやってないから。
栃尾うん、そう言われると確かに。
井川10回で上手くいくわけねぇだろうっていう。
栃尾うん。
井川だから「上手くならない」って言ったの。
栃尾へぇ、大変ですね。
井川うん。
栃尾えっ、じゃあ、農業やってる人は誰も上手くならない?
井川ならないよ。
栃尾だってせいぜい30回、40回でしょ。
井川そう、だから「農家は何年経っても1年生」っていう言葉があるのよ。
栃尾あっ、そうなんだ。
井川そう。だって「こんなに夏場に雨降らなかったときはないなぁ」みたいなこともあるし。
栃尾ね、「何十年に1回だ」みたいなね。
井川そう、「こんなに収穫の直前に、急に台風が来るなんてないな」ってこともあるわけでしょ。
栃尾はい、はい。そんなのばっかり。
井川そんなのばっかりだから、上手くいく方法なんかないわけよ。
栃尾へぇ。
井川だけど、農家をやってる人ってたくさん、いっぱいいるから、どっかが穫れてるわけだから。
栃尾たまたま、当たったね。
井川たまたま、当たって。
栃尾あぁ、ホントに淘汰。
井川それがたまたま、東京のスーパーとか、八百屋に卸されてるから「えー、そんなのってつくりゃできるんでしょ」って思われてるけど、そんなことはなくて。毎年、「えっ」って思うことがあって。
栃尾へぇ。
井川それを植物について、その農業研究所みたいなところで、「なんとか冷害にも強くて、虫にも強くて」みたいなものを考えてるけど、それだってそんなもの上手くいってないんだから。
栃尾そうなんだ。
井川うん。
栃尾へぇ。
井川だから、全世界レベルで、どっかの国で上手くいったものを輸入して食べてるわけじゃん。
栃尾えっ、じゃあ、一人ひとりはギャンブルみたいなもの?
井川もちろん。
栃尾(笑)そうなんだ。
井川だから農業なんていうのは、もう完全なギャンブルでしかないから。
栃尾へぇ。
井川農協っていう仕組みをつくって、ギャンブル化をすこし軽減はしてるよ。
栃尾ふぅーん。
井川なるべく、採れなくても、なんとかしようとか、補助金を出してとか。
栃尾なるほどね。
井川だけど基本的に農業で絶対に上手くいくってやるんだとしたら。
栃尾うん。
井川だからある程度肥料をドッと投入するとか、農薬をドッと投入するとかってことで、軽減はしてるけど、根本的に考えてるのは、絶対的にコントロールできないっていうことよ。
栃尾そうですよね。まあ、それは天候が一番のネック?
井川まあ、そうだし、じゃあ、学校教育みたいなね。
栃尾学校教育(笑)。
井川子育て。
栃尾うん。
井川じゃあ、栃尾のとこだって、2人いるんだっけ?
栃尾2人いる。
井川2人じゃサンプル数足りないじゃない。
栃尾足りない、足りない。
井川ね、2人が上手くいかなかったらさ、子育てとして。
栃尾うん。
井川「なんかダメなお母さんかも」って思うじゃん。100%ダメだから。
栃尾うん。
井川でも、これがもしかしたら10人子どもがいたら、残りの8人は上手くいってるかもしれないじゃん。
栃尾うん。
井川つまり、サンプル数が多ければ、ある程度、ダメなものについても諦めが効くっていうか。
栃尾(笑)、あっ、でも私それで一人っ子嫌だなって思ったのはある。
井川でしょ。
栃尾一人に執着しすぎると危険だなっていうか、成功か失敗かみたいな観点で見ちゃいそうだなって思って。
井川そう、と思うわけよ。
栃尾うん。
井川だから、仮に10人、いや子どもが2人いて2人ともダメだったとしても別にそれは私の責任じゃない、と。
栃尾うん。
井川「たまたま、ダメだったに違いない」って思えれば逆にいいわけよ。
栃尾なるほどね。まあ、何をもってダメだったと思うかによりますけどね。
井川よるけど。だってそれが植物の生存戦略なのよ。
栃尾うん。
井川植物は100%上手くいく方法を選んでるわけじゃないわけ。常にいろんなことがあって。
栃尾うん。
井川だから何ていうんだろう……、植物にしたって例えば街路樹ってある。
栃尾うん。
井川街路樹にもメジャーなものと、流行り廃りがあるから。
栃尾へぇ。
井川例えば、昔、今植わってるソメイヨシノって。
栃尾はい、はい。
井川ソメイヨシノって、アレ、100年前くらいのブームでソメイヨシノ植えてるけど、今新しくソメイヨシノって、今ダメになってきてるんだよ。
栃尾うん、なってる、なってる。
井川ソメイヨシノそのものが。
栃尾うん。
井川で、ソメイヨシノを植え替えようとして、ソメイヨシノ植えてないんだよ、今。
栃尾なんで?
井川ソメイヨシノがダメになって、ソメイヨシノが虫が付くとか、そういうことを改良された別なものを今街路樹で植えてるんだよ。
栃尾へぇ、なるほどね。
井川ソメイヨシノは大きくなり過ぎちゃうとか。
栃尾うん、うん。
井川だから、そういう風に常に時代に合わせて、人間が知ってる植物も替わってるわけじゃん。
栃尾へぇ。
井川一番わかりやすいのは外来種だよね。
栃尾うん、うん。
井川例えば今は西洋タンポポしか生えてないけど、昔は日本タンポポが生えてたわけよ。
栃尾はい、はい。
井川だから植物の戦略って、別に今あるものでなんとかやりゃいいじゃんだから。
栃尾うん。
井川それを在来種を守ろうとかって人間のエゴでしょ。
栃尾まあね、それは確かにね。
井川うん、だからそれはもちろんそれが良いとか悪いって問題よりも基本的には植物っていうのはすごくシンプルで、残るやつが残ればいい。
栃尾適応したものが正解みたいなね。
井川そう。
栃尾うん、確かにね。
井川誰々が悪いとか良いとかって考えないわけよ。
栃尾確かにね。
井川だからそういう意味でいうと栃尾は、植物から学ぶべきことは2つ。
栃尾(笑)2つ?
井川1つは、「なるようになる」。
栃尾なりようになる(笑)。それ結構(私に)ある気がするけどな、はい。
井川うん、なるようになるっていうことと、「ある程度の失敗は恐れない」。
栃尾はい。
井川この2つを植物から学ぶべきだと思いました。
栃尾(笑)わかりました。はい、今日はありがとうございます。以上、栃尾江美と。
井川はい、マメヒコの井川でした。
<書き起こし、編集:折田大器>

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