「やりたいことがわからない」と言う人が多い中、自分がやりたいこと、しかも新しいことをどんどんやり続けているかのように見える井川さん。DIY的に、自分や周囲の人とともに作り続ける井川さんに、どんなふうに「やりたいこと」が沸き起こってくるのかを聞きました。実はとてもシンプルなお答えでした。
クリエイティブの。
反対語。
こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
こんにちは、マメヒコの井川です。
このポッドキャストは私、栃尾江美がお話したい人をお呼びして、クリエイティブなことや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。
はい。
はい、またまた井川さんよろしくお願いします。
はい。
えっとね、井川さんいろいろやってるじゃないですか。
うん。
カフェのオーナーかと思ったら、雑誌作ったり、ミュージカル? リサイタル?
うん、お芝居とかね。
お芝居やったり。
リサイタル。
リサイタル(笑)。
女装して。
女装したり(笑)。
リサイタル……ライブやったりね。
インスタグラマーだったり(笑)。
だったり、まあ、やってるよね。
YouTubeとかね、なんかいろいろ、お芝居一つにしても、どういうお芝居にするとかって、脚本も書かれているし。
そうですね。
音楽も作ってるでしょ?
うん、作詞、作曲もやったり。
作詞、作曲もしてるの?(笑)
うん、結構いい曲やってるんだよ。
(笑)何人いるんですか、井川さん? よく言われるでしょ(笑)。
言われる。「えっ、ホントですか?」って。
五つ子ぐらいですかって(笑)。
まあ、信じてもらえないけどね。
そうだよね。
うん。
でも、まあ、ウソではなさそうだなとは思うけど(笑)。
それでまた、クオリティ高いからね。
(笑)自分で言っちゃうけどね。
うん、自分で言っちゃうけど。
そう、そう、そう思う。
うん。
それで、新しいことをどんどんやるっていう、まあ、できるのはもちろんすごいんだけど、新しいのが浮かんでくるんですか? 「どんどんやりたい」みたいに。というのが聞きたかった。
そうだね。
へぇ。
浮かんでく……うん、浮かんでくるね。
たとえば、次のお芝居はこれをやろうみたいなのが、パッと浮かんでくるの?
浮かんでくる。
そのお芝居については、もうやる時期決まってるんですか?
うん、決まってんの。オレの場合すごいのはね。
うん。
たとえば、この前も「ゲーテ先生の音楽会」っていうのを年末にやったんだけどね、やっぱりみんな手伝ってくれる人が、「やっぱりもうちょっとこれを広めたほうがいいと思います」と、で、そのためには、先に宣伝をね。とにかくみんな知ってないから。
うん。
だから「早めに知ってもらうために、告知を早くしたい」っていうから、「そうだね」と。
はい。
「つきましては井川さんね」って、もう終わった直後ですよ、「次のタイトル決めてください」と。
(笑)むずかしい。
でね、それに「チラシも作って、配りたい」というわけよ。
うん。
それでしょうがないから、「ゲーテ先生、先生はどこの星から来たの?」っていうタイトルだけ決めたのよ。
すごい。
それで、それ用のポスターも作って。
作っちゃって。
で、それから「ところで内容をどうしようか」ってなるわけよ。
はい、はい。
結構それ直前なわけよ。
うん。
で、そこから逆算して、先にチラシとポスターがあって、タイトルもあって、そこから中身を作って、その通りのつじつまになったわけ。
すごっ。
それがすごいよね。
すごい(笑)。
うん。
そのタイトルが出てくるのは、でも、どうやって出してくるんですか?
それはコツがあって。
コツあるんだ、聞きたい。
「なんとでも取れるようなタイトルを付ける」ってことよ。
(笑)。
(笑)うん。
なるほどね、「あまり限定的にしない」と。
「あんまり限定的にしない」と。
(笑)。
で、今週もね、僕のフルコースの料理が食べられるっていう会があんのよ。
井川さんが作るの? やばくない?(笑)
うん、6,500円でやってるんだけど。
うん。
もう先にテーマは決まってるの。冬なら冬とか、節分なら節分とかって。
うん。
そういうテーマで作ってるけど、まだ、何も決まってないのよ、何やるか。
はい。
だけど、「まあ、節分なら何とかなるだろう」みたいな。その辺のあたりを付けるのが得意。
うーん、なるほどね。
それはね、前回の話と一緒で。
はい。
教養あるからオレ。
(笑)オレね。
細かいことは決めないのよ。
そっか、あとからでいいからね。
あとから何とでもなるっていうもの? だけど、視点というのがあって。
うん。
逆に言うと、人を集めるのって、細かいことをみんな見てないのよね。
んー、あっ、来る人は?
来る人は。
はい、はい。
「えっ、面白そう」とか、「えっ、美味しそう」とかいうことだけだから。
うん。
逆に細かいこと決まってなくても関係ないんだよね。
宣伝するならね。
宣伝するなら。
来てほしいと思わせられると。
そう、だけど、自分が作りたいものっていうのは、そういうこととは全然関係ないじゃない?
はい。
たとえば、うーーん、じゃあ、冬のメニューを作るって言ったって、自分の中では、揚げ物の中に、蒸し物を入れるみたいなことの一つテーマが決まってるわけ。
んっ? それは決めるんですか?
それはね、クリエイターとしてのテーマっていうのと、みんなに告知するテーマは別なわけ。
うん。
だから、モチベーションはクリエイターとして乗り越えたいものが一つ必ずあるわけよ。
それが、今でいうと、「揚げ物の中に蒸し物を入れる」っていうのが、やりたいほう。
やりたいほう。
はい、はい。
でも、それをみんなにね、仮にね、「揚げ物の中に蒸し物を入れる」みたいなね。
(笑)確かにね。
まあ、今は適当なことを言っただけだけど、それって、「えっ?」みたいな、「よくわかんない」みたいなことじゃない。
なるほどね、確かにね。冬って言われたほうが。
冬っていう。「冬の身体が温まるスープの会」みたいなことを言ったほうが、「えー、行ってみたいです」ってなるけど、自分のテーマは別個にあるわけよ。
それは、まったく別の方向から同じところに向かってくるような感じなんだ。
そう。
あぁ。
で、その全然違うところのものを2つ持ってきて、これを融合させたいっていうのがクリエイターなんだよね。
ふーん、でもその、たとえば、今言った「やりたい」っていうところは、どこから出てくるの? 勝手に出てくるの?
ううん、それはね、常にやってるっていうことが大事なんだよ。
ふん、ふん。いろんなことを?
いろんなことを。
はい、はい。
常にやってるからこそ、もうちょっとこうしたいが出てくるわけじゃない。
うん、うん。
だから、何にもやってない人はその最初の一歩が大変なわけ。
はい。
逆に言うと、一歩を踏み出せば、「あー、こんなことしかできないんだ」っていう反省はいっぱい出てくるじゃん。
うん。
この反省を一つ次は克服したい。で、克服する方法が自分でも浮かんでいる。
はい。
そしたら、もうすぐ次のことやりたいよね。
はい、はい。
だから、オレなんかだったら、お芝居やってるときとかは、やってるときは、もう次回のことしか考えてないわけ。
あー。
「早く終わんないかな」と思ってる。
練習のときも?
練習のときもそうだよ。
うわっ、そうなんだ(笑)。
だって、もうこの面子でやったら、これぐらいしか行かねぇのわかるじゃん。
はい、はい。
「あー、まあ、次回はもっとこうしよう」っていう風に、次に思う。
へぇ、なるほどね。
だから、やってるときに、もう根本的に今のこの状況を打破するには、もう新しい座組みでやるしかないっていうプロデューサー的な感覚になるっていう。
はい、はい。
だから、やってるときはあんまりもう面白くないよね、次のことだけ考えてるもん。
あぁ、よくタレントさんは舞台挨拶のときはもうね、映画撮ったのは随分前だから忘れちゃってるとか言いますもんね(笑)。
うん、みたいなもので、だから、次から次に浮かぶというより、もうやってるときには、次のことしか考えてないのよね。
ふーん、でも、それはいっぱいやってるからこそ、ってことですね。
そうだね、それはいっぱいやってるからこそだし。
どんどん浮かんじゃうんだ。
僕の場合は、とにかくどんどんそういうことをやりたいから。
うん。
やれるようにお店を作ってるかな。
えっ、どういうこと?
これがさ、僕よく言うんだけど。
はい。
お座敷芸者になるなっていうね。
うん。
お座敷芸者っていうのは、呼ばれてナンボじゃない。
うん。
全部お膳立てしてもらって、最後の最後に呼ばれて、唄や踊りを出す。だから、芸者さんは、呼ばれるようにすることが営業でしょ?
うん。
でも、それって呼ばれなくなったら終わりじゃない、早い話。
うん。
でも、僕の場合は、呼ばれる呼ばれないじゃなくて、自分でお座敷作っちゃってるからね。
うん。
だから、、呼ぶも呼ばないも、やるかやらないかでしかないのよ。
はい、はい。
そうでしょ?
わかります。
だから、そういう風に考えるとさ、いくらやりたいと思っても呼ばれなかったらやれないっていう立場の人はさ、次から次へとやりたくてもできないじゃん。
うん。
呼ばれなくちゃ。
はい、オファーありきっていうことだもんね。
オファーありきだもん。だから、もちろん、そうやってオファーが次から次へと途絶えない人はいいよ。
うん、まあ、途絶えない工夫もね、するんでしょうけど、そういう人は。
するんでしょうけど。
うん。
でも、たいていの人はさ、呼ばれるか呼ばれないかに一喜一憂しちゃって。
うん。
で、「もう次に呼ばれなくなったら嫌だな」と思うから、その一つのことをなるべく無難に収めようとするわけじゃん。
あぁ、ミスしないようにとかね。
そう。
はい、はい。
だけど、そうではなくて、自分の場合は、ミスしようが、ミスしまいが、常に挑戦できる。自分のお座敷なんだから。
でも、「失敗したらもう来てくれないかもしれない」みたいなのは?
それでも、「挑戦した結果、失敗してるよね」っていうのが、伝わる人には伝わるから。
うん、うん。
無難に収めようとして失敗したんじゃなくて、アイツは。
うん。
「やろうとしてることはあるけど、まあ、今のアイツの力不足でそこまでは行けなかったけど、長い目で見ればそこに行くかもしれないな」っていうお客さんだけが付くから。
そしたら、たとえば、井川さんってずっとやってることもあるでしょ? ラジオとか。
ある、ある。
そういうのに対して、どんどん新しいこともやりたくなっちゃうでしょ?
うん。
そしたら、そのバランスっていうか。
あぁ、そうね。だけど、これは事あるごとに言ってるんだけど、傍(はた)から見ればさ、ラジオやって、お店やって、料理やって、畑やってって、ジャンル違いをあたかも自由にやってるように見えるけど、僕から言わせればやってることは一つなわけ。
えっ? はい。
単純に言えば、人が喜ぶ、人が驚くっていうようなことがやりたいから。
ふーん。
そういう意味で言うと、ジャンルを飛び越えているわけじゃないわけ。
うん。
だから別に、音楽を作るのも、料理を作るのも、どっちかっていうと一緒。同じ感覚でやっていて。
うん。
それは「口中調味」っていう言葉があるのね。
あー、知ってる。口の中で混ぜ合わせると。
口の中で混ざり合う。そうやって食べ飽きないで食べれるわけじゃん。
うん、うん。
特に日本食っていうのはそういうことなわけよ。
うん。
つまり、井川さんが歌しか歌ってなかったら、もちろん、その歌が好きって言う人がいるけれど。
うん。
あの人は歌もやるし、料理もやるしっていうことを、井川さんに連れられて色んなことを体験させられたけど、トータルすると「口中調味」で、井川さんを味わったってことになるじゃん。
うん、なりますね。
そうでしょ。だから、そういう風に、僕の人間性とか、僕の視点そのものを楽しんで欲しいわけだから、何か一個を楽しんでほしいわけじゃなんだよ。
うん、うん。質問の意味はね、新しいことをどんどんやりたくなっちゃうのと、とはいえ、日々、ちゃんとやっていかなきゃいけない毎月とか、そういうのを、かたや飽きそうじゃないですか、そういうのって。というのと、新しいことをやりたいっていう気持ちをどうしてるのかなっていう。
あー、だから、日々やってることも、傍から見れば同じに見えることも、毎日変えてるわけよ。
なるほどねぇ。
ちょっとずつ。
お店も?
お店も。
へぇ。
だからしょっちゅうメニュー、「あれ? またこのメニュー変わってるんですか?」って。
変わってた、今日(笑)。
「あれ? こんなの前ありましたっけ?」とかいうことも当然あるし。
なるほどね。
スタッフだってそうじゃない?
うん。
だから、日々のことにもオレはそれを持ちこんでいるわけ。
あぁ。
だから、オレがかつて言われたことで「あぁ、なるほどねぇ」って思ったのが、「釣りをする人って、せっかちな人の方が向いてる」って。
私も聞いたことがあります。めっちゃせっかちなんだってみんな(笑)
だから、傍から見ると、よくそんな釣糸をね。
暇そうでね。
暇そうに同じところに垂らして、耐えられなさそうに見えるけど。
はい。
しょっちゅう、たとえば、その釣糸をね、浮きを変えてみるとか。
あぁ、工夫してるんだ。
垂らすとこを変えてみるとかやってるわけでしょ?
ふぅーん
だから、傍から見ると、「飽きもせず」って思ってるけど、続いている人は、そういうことが、どんどん色んなことが浮かぶ人?
おぉ、「次はこうしよう」って。
が続いて、「次は、こうしよう」って。
へぇ。
で、逆に「私はなんかいろんなことができないから、釣りだけやってればいいわ」なんて人は続かないわけよ、逆に。
楽しくないもんね。
楽しくないから。
あぁ。
だから、これが答えじゃない。
確かにね。
うん。だから、オレがずーっとこんなカフェを「井川さんって飽き性だっていうのに、15年も続けてすごいですね」なんて言われるけど、すげぇ変えてるもん。
(笑)毎日楽しい?
毎日、うん、だって場所変えようとか、席を替えてみようとか、そういうこともそうだし、スタッフも配置替えてみようとかっていうこととかも、全然同じ気持ちだったことなんかないわけ。
へぇ。
常にリフレッシュ。
リフレッシュね、なるほどね。
することで、なんかこう、悲壮感がないし、その流れで、『エトワール・ヨシノ』をやったり、何かやっても、傍から見ればすごい違ってるように見えるけど、近い人は「あんだけ日々のカフェを変えてるんだから、そりゃあ女装して歌も歌うわな」っていう。
(笑)。大したことないじゃないって。
大したことないじゃない。
(笑)。
だから、「小説を書くらしいよ」って言っても、「まあ、書けんじゃない」っていう。
なるほどね。
だから、何をやっても「まあ、できんじゃない」っていう気に周りがなる。
まあ、それもね、ありそう。
だから、それは才能がっていうんじゃなくて、日々変えてるから、「あんだけジャカジャカジャカジャカやってるんだから、その中で逆にあの人が『何もやらない』って言い出したら、それはもうきっと病気だな」
あぁ、「弱っちゃったんだな」って。
「弱っちゃたんだな」
心配しちゃうってこと。
心配しちゃうってことじゃない。
なるほどねぇ。
だから、本当にあなたの生活の中で、日々釣糸を垂らす場所を変えるとか、浮きを変えるとか、潮目を読むとかっていうことは、誰にだってあって、逆に、今の質問があるとすれば。
はい。
社会がどんどんシステマチックになって、「もうあなたはこれだけやってればいいよ」っていう社会に逆になっちゃってるから。
うん。
そういうことに耐えることが仕事で、そういうことに耐えることが勉強で、つまり、「耐え忍ぶことが生きることなんだ」って思い込み過ぎてるんじゃない?
うん、そうね。そういう人も多いですよね。
そう、だけど、そうではない。人生というのは、常に釣糸を垂らす場所を変えるっていうのが生きることだから。
なるほどね。
そっちの方が自然で、ずっと同じことをやってるっていうことを耐え忍ぶことが生きることではない。
うん、うん。そうすると、どんどん新しいことが、やりたいことが浮かんでくるっていうことなんですね。
うん、だってやったって別にいいわけだから。
うん、うん。
それはみんな、僕がっていうより、とっちーだってきっとそうなわけで。
うん。
そうではダメだっていう何かが思い込んじゃうから、どうしてんのかなって思うだけだと思うよ。
なるほどね。
うん。
はい、わかりました。えっと、以上、栃尾江美と。
井川でした。
<書き起こし、編集:折田大器>