小説仕立ての創業ストーリー


小説仕立ての創業ストーリーを書いている。先日、編集者さんに「これまで小説って書いてたんですか?」と聞かれた。編集者さんは私がライターとして長いこと一緒に仕事をしてきた方で、私が割とテクニカルにそつなく仕事をこなす様子を知っていた。

その質問をされたことで、私がこれまでに小説に立ち向かい、打ちひしがれてきた過去を軽く振り返ってみたくなった。

小学校に上がったくらい、ノートに初めて「物語」を書き始めた。絵本ではなく結構な大作(児童文学みたいな)を書こうとしていたので、自分としてもそういうものを読んでいた頃だと思う。書き終わりはしなかったけど、そういうものを書いた最初だと思う。

高校とか大学でも、短編みたいなものをたまに書いていたと思う。基本、誰にも見せない。家族に読まれて意気消沈すること何度か。

小学校から高校まではバレーボールに明け暮れていたが、本はそれなりに読んでいた。大学生のときに「小説家になりたい」とかなり強く思う。

小説家になるとしても、まずは食べていかなくてはならない。私の学歴では理系の企業に就職するのがいいだろう、と就職。その間に小説を書いて新人賞みたいなのに応募しようともくろんでいたが、一向に書かない。そのうち、小説家という職業名は、「過去の夢」ボックスに片付けてしまった。

でも、崖から飛び降りるような気持ちでライターになった。そうなっても、小説家は「過去の夢」ボックスに入れたまま。そこから引っ張り出すなんて、怖いことはしたくない。

でも、そうなっても、「小説家になるために」みたいな本は目につくたびに買って読む。小説ってこう書くのね、という知識は徐々に増えていく。

人にどう見られるか、みたいなことを気にしないで生きたい、と思ってから、徐々にいろいろなことを外に出せるようになってきた。ひとまず、書いてみなくては始まらないと、ずっと書きたかった児童小説を書いた。途中まで書いたものの、終わりに向かうことができずに頓挫してしまった。

そんなことをしていくうち、「小説家になりたかった」と言えるようになった(ずっと誰にも言っていなかった)。

noteに短編を書くようになった。書く前は死ぬほど恥ずかしいのだけど、書いてみると何のことはないのだ。いいと言ってくれる人もいた。私はとても素敵な小説ばかりを読んできたので、自分の書いたものがとても下手だというのはわかる。だからそれを「いい」と言われると、嬉しい気持ちはあるけど何かが違うという気持ちもある。

安田佳生さんに話しをすると「ライターと小説、両方活かしてビジネスができるはずだ」と言われて勇気をもらった。会社の創業ストーリーを小説にするという商品を考えた。そうしたら、安田さんの紹介で4~5件のお仕事をいただいた。取材をして、短い小説を書いた。喜んでいただけたと思いたいし、そう言ってくださるかもたくさんいたが、そこで自分の力のなさも思い知った。才能は別にない。でも、そこでがっかりする必要はない。これから力を付けることはできる。私には技術力が足りないのだ。

その後、友人がやっているメディアで相談をしながら、小説にチャレンジさせてもらえることになった。2件ほど取材をしたが、結局小説は書けなかった。何とか冒頭を書いたかとてもイマイチなものだった。編集者の友人には、もうほんとうにとてもとても時間が経ってから、謝った。そうしたら彼女もすごく気にしてくれていて、彼女も「ごめんね」と。お互いに言いづらかったのだった。優しい人です。私に知らないことは書けない。妄想力が弱い。だったら、それ以外の部分で勝負をするしかない。

そしてやはり、事実を小説として書くことに戻る。作るのが苦手な物語のプロットも、キャラクターも、時代背景も、すべてが用意されている。その中で私は、大好きな「描写」を使って、小説としての命を吹き込むのだ。なんてすばらしい仕事! 頑張ります!