経営者の方からのアウトプット相談。その日は2回目だった。いくつかの事業があるけれど、一番採用したいのはエンジニア。だから、その人たちに届く発信をしていきたいという。前回の相談ではTwitterのアカウントを持っていなかったので、開設するところから。その後の様子を見ているとツイートするのは苦でないようなので、より「ターゲットの役に立つ情報」を投稿するためのヒアリングとアドバイスをした。
できごとを何となくツイートしていた
その方は、ツイッターやnoteで発信を始めていた。投稿自体にはそれほど気負いはなく、日常のことをゆるくツイートしていた。抵抗がないのはとてもいいことだと思う。
なんとなくやり方がわかってきたので、次のステップに行きたいところ。もう少しターゲットに照準を合わせて、役に立つことをツイートしていきたい。
ところが、どんなことが「役に立つ情報」なのか、思いつくのは難しいようだった。
自社の紹介では、「お役立ち」にはならない
「届けたい人の役に立つ情報を持っていませんか? 何か思いつくことはありますか」
と、私は聞く。
「そうですね……。うちの会社は研修制度も整っているし、ステップアップするための仕組みもしっかりとあります」
「それは、『入社したらいいことがありますよ』という情報ですね。基本的にツイッターを見ている人は、『自分のいる場所はそのまま』で得をしたい、役に立つ情報が欲しいと思っていると考えてみてください」
「ああ、なるほど……」
「例えばエンジニアさんだったら『このプログラミング言語を習得しておくと今後つぶしが効く』みたいな情報は嬉しいと思うのですが……」
「エンジニアが知りたいような技術的な情報は、現場の人に聞かないと難しいかもしれません」
普段エンジニアから相談されることは?
「社員のエンジニアの方と、面談とかしているんですか?」
「そうですね、定期的にしています」
「その中で、相談されることとか、質問されることは?」
「プロジェクトの細かいことはありますが……。多いのは、今のプロジェクトにずっといるのではなく、次のステージに行きたいとか」
「なるほど。そうしたらどう答えるんですか?」
「次のプランを一緒に考えます。プロジェクトで立場を変えてもらう交渉をしたり、それがだめなら別のプロジェクトに異動することを提案したりします。あとは、今のままがいい、という人もいるんですよね。能力があるととてももったいないし、いいように使われてしまうというか」
「そうですか。能力のある人は成長すべきだと思いますか?」
「僕はそう思いますね。その方が自分の価値が高まり、人生が豊かになるんじゃないかな」
「私がエンジニアで、どこかのプロジェクトにどっぷり入っていて、外の世界がわからないとしますよね。そうしたら、『成長するためには新しい立場になったり、別のプロジェクトを経験した方がいい』という情報はありがたいと思います。また、『今のままでもいいかな……』と思っていたとしたら、『さまざまな経験をすると自分の価値が高まるし、人生が豊かになる』とわかると士気が高まりますね」
「なるほど……そういうことですか。探せば役に立つことはあるんですね」
少しのヒアリングでいくつもの投稿ネタが生まれた
先ほどのヒアリングによって、次のようなメッセージ性のあるツイートをすることができる。
「次のステージに行きたければ、今のプロジェクトで立場を変えてもらったり、ステップアップできる別のプロジェクトへ行くといい。能力のある人がずっと同じ場所にいると、いいように使われてしまうことがある」
「能力のあるエンジニアは、どんどん次のステージを目指すべきだ。その方がエンジニアとしての価値が高まるし、人生も豊かになる」
もっと具体性のあるエピソードがあるとなおいいが、採用のターゲットになりうる人が、「何もせず、ただで得をしたり役に立ったりする情報」「それを読むだけで今日から行動できる情報」などを発信するといい。そうすることによって、いろんな人がこちらを向いてくれるようになる。
そのほか、短いヒアリングで5つも6つも投稿のネタが生まれた。自分の中にあることはずっと自分の「あたりまえ」になっている。だからこそ、第三者から質問されないと、なかなかその価値を見つけられないのかもしれない。
<執筆:栃尾江美>