
文章を書くのは「つらく苦しい」という側面もあります。それを「とっちーはどうしているの?」と聞くゲストのだいまり。言いたいことはあるのに言葉が出てこない、という苦しみは、絵本の読み聞かせで改善しうると思っている栃尾です。それと同時に、文章のリズムがとてもとてもよくなります。お子さまがいる方にはおすすめ。
栃尾クリエイティブの。
だいまり反対語。
栃尾こんにちは。ストーリーエディターの栃尾江美です。
だいまりこんにちは。ライターの代麻理子です。
栃尾このポッドキャストは、私、栃尾江美が、好きな人やお話したい人をゲストにお迎えして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。
だいまりはい。
栃尾はい、今日はどんなことを。
だいまり今日は、「職業としてのライターの楽しさって、とっちーにとってはどういうところなんだろう」というのを聞いてみたいと思って。
栃尾はいはい。
だいまり『note』とか自分のブログでね、書くことは楽しいっていうのは理解できるし、私もそういう思いはあるんだけど、仕事としてもらった案件に対して楽しいと感じる点って、私はインタビューをしに行くときにすごくそれを感じるんだけど、書くということだったら、書く部門だったら何が楽しい? それもまるっと含めて、インタビューもセットで楽しいと思うか。
栃尾インタビューはインタビューで楽しいし、書くのも楽しい。やっぱり、インタビューだけだと自分に入ってこない感じがするんだよね。
だいまりなるほどね。
栃尾インタビューだけで終わっちゃうと、「講演だけ聞いて何もしないで帰った」みたいな感じ?
だいまりそうかも、確かに。
栃尾それで、それを書くことによって、もう一回自分の中で繰り返すっていうか。
だいまりそうだね。
栃尾それが血肉になるかなという意味があることに加えて、書くときって没頭するじゃん。
だいまりそうだね。
栃尾その没頭するのが楽しいよね。
だいまりへぇ、それはしゃべってるときでは得られない感覚?
栃尾しゃべってるときもね、没頭するから楽しいよね。
だいまりあぁ、そうなんだ。
栃尾うん。
だいまりしゃべってるときに没頭するっていう感覚が私には全然ないかも。
栃尾ラジオトークってこと?
だいまりそう。書くときに没頭するっていう感覚はわかるんだけど。
栃尾人とのおしゃべりは?
だいまり楽しいけど、没頭してるっていう感じではないなぁ。
栃尾でも、めっちゃ集中してるでしょ? そうでもない?
だいまりそうかなぁ、そういう風に思ったことが、というか考えたことがないから。
栃尾へぇ。
だいまりでも、「書くときに集中する」っていうのは、すぐ即答してそう思うね。
栃尾うん。
だいまり「もうそれしか見えてない」っていうかさ、だから翌日読み返したりすると、「あぁ、ちょっと違うなここ」みたいなことって絶対に出てくるというか。けど、本当に目の前の記事というか、書いているもののことしか頭にないっていうのは、書いているときが一番強いっていうのは、すごくわかる気がする。
栃尾うん。
だいまりでも、それが「楽しくもあり、結構苦しくもあるな」とも思うけど、そうでもない? 苦しいことではない?
栃尾なるほどね、ライターになりたてのときは、なかなか言葉が出てこなくて苦しかった気がする。
だいまり言い回しとかさ。
栃尾そうそう。
だいまり最後の「~だと思います」とかが重なっちゃいけないから。
栃尾あぁ、語尾がね。
だいまりそう、そういうバリエーションとかが、「あぁ、出てこないな」とか、リズムというか、文章の音の感覚じゃないけど、読み返してみてというのが「イマイチだな」みたいなことが結構発生するから、そういうときは、調べながら書いたりもするけど、「あぁ、これはツラくもある行為だな」みたいに思うけど、慣れてくればというか、ずっとこなしていれば、それは色んなバリエーションが頭に入ってきてという感じ?
栃尾たぶん。何かを表現するために、「言葉とかが出てこなくてツラい」みたいなのは随分減る。
だいまりへぇ。でも、それがたぶんしゃべることにも活きているんだろうね。
栃尾あぁ、それはあるよ、きっとね。出てくるか、出てこないかっていうね。
だいまりうん、言葉の豊富さっていうか、バリエーションは。
栃尾うん、それはある。
だいまり前に、私が佐渡島さん、サディーに「とっちーみたくあんな上手く聞いたり、話したりできない」って言ったら、「それはとっちーは書いてるからできるんだよ」って言ってて。
栃尾へぇ、そうなんだ。
だいまりそうそう。だからやっぱり長年書いてきてるから、バリエーションをね、出る言葉のバリエーションが多いっていうのは、普通の会話、おしゃべりとは違うよね。
栃尾うん、なるほどね
だいまりおしゃべりだともう決まってる単語しか、自分の中でよく使う単語とかで成立するけど、文章だと違うもんね。
栃尾そうだね。ちょっと難しい、口語では言わないようなことも使うし、でも、「パターンになっちゃうな」ってときもあるけどね。「あ、これこの間も使ったな」みたいな(笑)。
だいまりこの間っていうのは別の記事で?
栃尾別の記事だけど。
だいまりそれはいいじゃん。(読者には)わかりようがないから。
栃尾マニアックに私の記事ばかり読んでる人にしかわからないけど。
だいまりそうでしょ。
栃尾わかんないけど、2回出てきたってことは、もう1回使うかもしれないから、本当は違うバリエーションのほうがいいんだろうなとは思うけどね。
だいまりふーん。
栃尾でも、まあそれは確かに。それをね、苦しくなくなったタイミングがあるの。
だいまり何?
栃尾これ言ったかわかんないけど、この『クリエイティブの反対語』で言ったかわかんないけどね、絵本の読み聞かせをするようになってからなの。
だいまりへぇ。
栃尾すごくない?
だいまりうん、でも、どうしてだろう?
栃尾たぶん、やっぱり発音するからっていうのはあると思うよ。
だいまりうん、声に出してね。
栃尾そう、声に出してちゃんと読むから、黙読してるのとは違うんだろうね、体の通り方がさ。
だいまりふーん。
栃尾そして、子どもの絵本なのに、子どもがわかるくらいの平易な文章なのに、自分としてアウトプットしていない言葉があまりにも多いっていうことなんだよね、たぶん。
だいまりあぁ、なるほどね。
栃尾聞いたらわかるけど、出てこないってのはさ、英語ではよく言われるけど、日本語もたぶんめちゃくちゃあるの。
だいまりあぁ、そうかもしれないね。
栃尾そう、同じボキャブラリーしか使わない人っているじゃない?
だいまりうん。
栃尾だけど、こっちが言っていることは通じるじゃん、ちゃんと。
だいまりうん。
栃尾だけど、自分が発する言葉がもうすごく少ししかないんだよね。
だいまりうん。
栃尾だけど、私は絵本の読み聞かせをし始めて、すごく書くのが楽になったの。
だいまりへぇ。
栃尾そう、びっくりした。
だいまりそうなんだぁ。
栃尾びっくりしたよ(笑)
だいまりえー、難しい言葉って本当にないのにね。
栃尾ないけど。
だいまり5歳とか6歳ぐらいの子がわかるような。
栃尾そう、ちゃんと読むとたぶん、例えば、「目を瞑(つむ)る」とか「目を閉じる」とか、色々あるじゃん。
だいまり違うもんね、言い回しが。
栃尾「まぶたを閉じる」とかさ。そういうのってどれか1個しかたぶん使わないんだよね。
だいまりそうだね、自分が。
栃尾だけど、絵本だと色々書いてあるじゃん。「瞑(つむ)る」なんてあんまり使わない人もいるじゃん。で、物が「垂(た)れる」とか、「零(こぼ)れる」とか、そういうのも色々あるけど、それを使い分けてはいなくて、たぶん絵本でそういうのが自分のものになるんだと思う。
だいまりへぇ。
栃尾音読で。
だいまり私、前にとっちーと話したときに、「子どもに本読むの全然好きじゃないんだよね」って言ってね。私、家ではひたすら自分の本を読んでるわけ。
栃尾自分で読書してね。
だいまりそう。それで子たちがテレビ見てる間も、横でずーっと自分の好きな本を読んでいるんだけど。
栃尾うん。
だいまりだから、自分の本を読みたいっていう思いで、子どもに「本読んで」って言われても、「えぇー」って思っちゃうんだけど、それをとっちーが「すごい書けるようになるよ」って言ってたのね。
栃尾言ってたか(笑)。
だいまりそう思ったら、あんまり嫌じゃなくなったというか。
栃尾やるようになった?
だいまりそう、絵本を読むのが前よりも苦痛じゃなくなったんだよね。そういう風に意識しないと、絵本を読む機会って今までと同じようにあるのに、意識しなかったらそんな風に思わなかったわけ。そんな自分の実になっているとは思わなかったというかさ。
栃尾うん。
だいまりだけど、意識したら確かに音の感じというか、文章の音の感じがすごく学べるよね。
栃尾そう、絵本はたぶん普通の本に比べて推敲の回数も、校正の回数も半端ないと思うんだよね、文章が短いだけに。詩みたいなもんだよね、たぶん。
だいまり言葉が少ないだけに。
栃尾だけに、すごく洗練されてるじゃん。で、読みにくいひっかかりのある文章なんて滅多にないの。
だいまりない、ない。
栃尾本当にないのよ。だから、リズムはめちゃくちゃ磨かれると思う。
だいまりあぁ、そうかもねぇ。それを意識するようになってから、「読もう」、「読んであげよう」と思うようになって、すごいそれは聞けてよかったことの1つなんだよね。ずっと残ってる。
栃尾(笑)。でも、書きやすくはまだなってない?
だいまりうーん、まだ自分のバリエーションは足りてないけど、音にしたときに、目で読んでるだけじゃなくて、書いている途中に「リズムが悪いな」というときって、呟きながら書くわけ。何回か読みながら、口でしゃべって、読み直して、そういうことをするようになったのって、「音に対する意識、絵本のことを聞いたからかもな」と思うっていうか。
栃尾うん。
だいまりあまり音で読みやすいどうこうって思ったことがなかったというか、ただ、自分が本を読んでいるだけだったら、自分が好きな本は、もう上手く書かれているものだからさ、すでに。
栃尾そうだね。
だいまりそう、だから気付かなかったよね。でも、自分が書くものに対して結構その音の感じが大事だっていうことに気付けたのは、「とっちーが言っていたその絵本のことだな」と思った。
栃尾うん。それたぶん、書くときにリズムの悪い文章を書いちゃうのはあるんだけど、読み直したときに気付けるかどうかってのがやっぱり大事で。
だいまりなるほどね、そうかぁ。
栃尾そう、それはあると思うけど。そのボキャブラリーが出てくるかっていうのは、読み直して「変だな」と言っても、出てくるかはまた別だから。
だいまり別だよね。
栃尾そうね。
だいまりだから調べながらだよ、何て言うの。
栃尾類語とか?
だいまり類語。そう、ネットでね。
栃尾そっか、そっか。
だいまり「記者ブックみたいなやつ買わなきゃいけないかな?」って思ってる(笑)。
栃尾(笑)。あぁ。
だいまりそれ使うことある?
栃尾類語辞典はある。
だいまり類語辞典はある?
栃尾あるけど、大概出てこないよね。「それじゃないんだけど」みたいな。
だいまり「記者ブックは書く者の鉄板の1冊だ」みたいに書いてあったから。まだ買ってないんだけど。
栃尾それは持っているかな。持ってるけど、まず見ないよ。
だいまりあぁ、そうなんだ。
栃尾編集やってさ、言葉を統一しないといけないときとかは見る。
だいまりなるほどね。
栃尾この文字は「ひらく」か「ひらかない」かとか。そういうのは見るけど、どっちの漢字を使うのかとか。でも、ライティングのときは見ないね。
だいまりふーん、そうなんだ。そういうものなんだ。
栃尾私はね。でも、類語辞典は見るけど、もしかしたら慣用句とかのほうがいいのかな。慣用句辞典とかさ。
だいまりなるほどね、言い回しってことか。
栃尾でも読んだ人がパッと読んでわかんないと意味ないから。
だいまりそうだよね。
栃尾難しい慣用句覚えても意味なくって。
だいまりそう思うわ。
栃尾結局、目にしてるんだけど自分が使えないっていうやつを自分が覚えないといけないから。でも、小説もいいと思うよ。私も小説を読んだ後、すごい言葉が出てくるもん。
だいまりあぁ、そういう感覚あるかもね、確かに。
栃尾うん。
だいまり実用的なものを読んだときとは、違う感覚があるよね。
栃尾そう、表現力上がってるみたいな(笑)。
だいまりそう、わかる。でも、実際にそれをそのときに書けるかどうかって、読み終わったあとにすごく頭に浮かんでも書くまでにはあまり至らないというか、書くのは時間がかかる行為だと思っているから。でも、とっちーって、すごい個人的にもものすごい発信、アウトプットをするじゃない?
栃尾ツイッターとかね。
だいまりそれもだし、『note』のさ、「140字」(註:平日毎日140文字ぴったりでSNSに文章を投稿するという栃尾の活動)も欠かさず出したり、それはずっとすごいなと思っているというか、書くことに躊躇(ためら)わないっていうか、時間がかかるのはかかる?
栃尾「140文字」は出てこないときはかかるし、たまにサボってるときもあるよ。
だいまりそうなんだ。
栃尾うん。
だいまりでも、ほぼやってるよね?
栃尾まあ、月曜日はサボりがちだけど、日曜日の余波がこう出てきていて(笑)。
だいまりそれはわかる気がする(笑)。でも……。
栃尾でも、書いてる。
だいまり書いてるよね。それは無理やり「出てこないけど絞り出さなきゃ」みたいな感覚よりは、結構自然と?
栃尾でもね、わりと探す。
だいまり観察ってこと? 日常の中で?
栃尾そうそう。
だいまり気付き?
栃尾そうね、気付き。「自分の感情がどうだったかな」とか、「これによって何が学べたかな」っていうのは探すね。
だいまりふーん。
栃尾「これかな?」って思ったら、そこをまたギューっとレンズを拡大して見ていくような感じ。
だいまりメモを取ったりまではしない? 日常で。
栃尾メモは取んない。
だいまり取んない? そっか。
栃尾そのとき思い付いたやつを書こうって思ってるから、何となくね。
だいまりなるほどね。そう、ツイッターの運用というか、書いていてというのもあるけど、本当にただの思い付きというか感じたこと、そのときのこととかを書いちゃうと、本当につぶやきになるじゃん。けど、そうじゃなく、統一性のあるものにしていこうって思うと、それでも全然つぶやくことはあるんだけど、ただ感じたことを。そう思うと、結構日常的に本当に気を付けて、気付くようにしていないと難しいよね。
栃尾まぁねぇ。そうなんかな。でも、私、その「140文字」以外は結構思い付きで書いちゃうけどね。
だいまりそうなんだ。
栃尾うん。子どもがこういうこと言ってて「あぁ、面白そう」とか。
だいまりでも、統一性あるじゃん。それは子どものことに関してっていう感じでしょ。「これが美味しかった」とかそういうことじゃないじゃん。
栃尾美味しかったことも感動したら書くかもしれないけど。
だいまりでも、そういうのはあんまり見ないなと思って。だから、もう絞られてると思って、テーマが。
栃尾あぁ、前は絞れないのが悩みだったんだけどね。
だいまりえぇ、それは自分で思ってただけじゃなくて?
栃尾周りにも言われてた。
だいまり言われてた?
栃尾「色々あるよね」って。
だいまりそうなんだ。そっか、今はすごくうまいなと思うっていうか。
栃尾あぁ、そうなんだ。そうなってきたのかなぁ。子どものことは多いけどね。でも、仕事のこともあるし、あと「子ども哲学」も子どもみたいなもんだけど。ポッドキャストもさ、今はポッドキャストの人みたいになってるから統一感あるかもしれないけど、昔は全然「何言ってるの?」って感じだよね、たぶん。
だいまりえー、でも、それは別に言われたことはないでしょ?
栃尾でも、バラバラだとは言われるよ。言われたことあるよ。
だいまりあぁ、番組によって?
栃尾いや、ツイッターのキャラが統一されていないみたいな。
だいまりうーん、そっか。
栃尾うん、言われるよ。
だいまりそれ難しいよね、統一。今は、すごい揃っているように思うよ。
栃尾そうなのかな、うん。何の話だっけ?(笑)
だいまり楽しさ。ライターの楽しさ。
栃尾書くのは楽しいよね。だから、言葉が出てくるようになったら、もうあとは没頭して。
だいまり苦しさはないか、そっか。
栃尾歌ってるような、踊ってるような。
だいまりそういう感覚なんだ。
栃尾時間はかかるけどね。
だいまりそう、時間はかかるよね。1つ、1本に対して2,000~3,000字だったら、校正とか抜きで書くだけだとどれぐらいかかる? いつも大体?
栃尾時間?
だいまりうん。
栃尾えっ、どれぐらいの?
だいまり2,000~3,000字。
栃尾2,000~3,000字だったらまあ、2~3時間はかかるんじゃない。ダラダラやるともっとかかるよ。でも、まあ、それぐらいで見積もるね。2~3時間で書こうって見積もって、それで計画を立てる感じ。
だいまりなるほど。
栃尾ということで、話は尽きませんが。
だいまりはい。
栃尾告知はどうしようか、何だっけ? そう、この間、ゲーム会社の人に採用に使えるようなインタビューを書いたんだけど。
だいまり読んだ、すごい良かった。
栃尾私もさ、取材してすごい感動したの。「こんなに好きなことを仕事にしている人いるんだ」みたいな。
だいまりね、素敵だよね。
栃尾それってさ、インタビューして結構突っ込まないと出てこないから、そういうのを採用のコンテンツとしてね、書く仕事を結構やっていて、それも例えば『note』に貼るんだったら、その見出し画像もちょっと凝ったほうがいいよね。フォント入れたりとか。そういうのを一緒に受ける仕事をこの間やってすごく楽しかったので、そういうニーズがあれば、お声掛けいただきたいなと思っております。
だいまりぜひ。
栃尾はい、ということで、以上、栃尾江美と。
だいまり代麻理子でした。
<書き起こし、編集:折田大器>