
今回もゲストはだいまり! インタビュー前の質問作りについて、2人で話しました! だいまりは、質問を作るのにとても苦労するのだそう。インタビュー前に栃尾が気を付けていることは、テーマを把握しておくこと、質問項目を5つくらいに絞ること、などなど。今日も話が止まりません……(笑)。

クリエイティブの。

反対語。

こんにちは。ストーリーエディターの栃尾江美です。

ライターの代麻理子です。

このポッドキャストは、私、栃尾江美が、好きな人やお話したい人をゲストにお迎えして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。今回もだいまりちゃん、よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

今日は何のことを話しましょう?

ライターの仕事について最近気付いたのが、インタビューとかがないライティングの仕事もあるじゃない?

あるね。

例えば「構成をお願いします」とかだったり、「既にある音声を記事にしてください」っていう仕事だったり。

うん、資料から起こしたりね。

そうそう、インタビューとセットじゃないものもあるけど、それはそれで別のテクニックがいるよね。インタビューが付き物な仕事の場合は、必ず質問を自分で考えていかないといけないと思うんだけど、まず、前提として質問は編集者さんが大まかに考えることもある? それともライターが考えるもの? どっちが多いんだろう?

編集者……、例えばタイアップとか。

記事広告ってこと?

そうそう、それだと結構クライアントと編集部で詰めて、「これをこういう順番で聞いてください」みたいに決まってることもあるから、やっぱりアピールしたいところがあるじゃん。だから、そういう場合は、編集者からもらったりすることもあるけど、基本的に、私は自分で質問を作らないとうまく聞けないタイプかなぁ。

そうだよねぇ。

聞きたいことが例えば一塊(ひとかたまり)であるじゃん。それを端的に表したのが質問文だよね。だから、質問文から質問したい内容を再現するのって自分しかできないよね。

確かにそうかもなぁ。

氷山で喩えると、氷山の一角のところが「何々ですか?」って文に表れてるだけで、「これってこういうところを聞きたいんだよね」というところまでは水面下だからさ、自分で作らないとそれは見えてこないじゃん。だから、「自分で作らないと全然無理だな」っていつも思う。やりやすさが全然違う。

自分で質問を作るところが取材の中で、ライティングの仕事の中で一番大きなパートなのかな、大変なことの一つかなという風に感じているんだけど、質問のバリエーションというか、これを聞けばいいみたいなものってあったりする?

鉄板の?

鉄板の。

ジャンルが違ったら別にもうないよね。

うん。

だけど、キャリアインタビューみたいなものをすることが多くて、その人の「仕事をどんな風にしてきた」とか、「紆余曲折」とかさ、あと採用ページとか多いんだよね。企業の採用ページで社員の人のインタビューをすることが多いから、それはやっぱり結局キャリアの話じゃん。そこで「苦労して乗り越えたことはありますか?」みたいなことは聞く、一応。

なるほどね。

それは面白くなりやすいし、あと読者も共感しやすいし、お決まりだなと思いながらも聞いているな。面接みたいなものだよね。

んー、そうかぁ。

採用面接でも聞くじゃん。

聞く、確かに。

「苦労したことはなんですか?」とかさ。「あなたが成長したことはなんですか?」とか。

それ、成功した事例ばかりよりも、大変だったことのほうが読む側は確かに面白いもんね。

そうそう、でもそうすると、「いやぁ、私覚えてないんですよね」って言う人もいるわけ。

そしたら、どうするの?

それはそれで面白いじゃん。

あぁ、そうか。

あぁ、そういう性格なんだと。

じゃあ、そのまま書くんだ。

そのまま書くっていうか、「なんでそうなのか」というのを聞く。つまり、「一時期落ち込むけどすぐ忘れちゃう」のか、「落ち込みすらしない」のか、「いつも良いように捉えちゃうんだよね」とか、そういう「何でその凹みがないのか」みたいなことを聞くかな。

なるほどねぇ。

だから、そこは結構臨機応変に変えないといけないけど、そうするとキャラクターがワァーって浮き上がるじゃん。

確かに、その人固有だもんね。忘れちゃうことに関しても。

そうそう。それはそれで面白いキャラクターを原稿を通して出して行けば、「そういう楽観的な性格だから、こうこうこうなのかしら」みたいな感じで、締めたりね。

なるほど、それすごい良いこと聞けた。

あぁ、そうなの(笑)。

うん、覚えてないって言われたら、「え?」で終わっちゃうっていうか、そこまで深められない。

(回答を)出してよみたいな(笑)。

どうしよう……みたいな。「あぁ、そうなんですか、ハハ」で終わっちゃうとこだった。それを「その人のキャラクターとして起こす」ってことを考えたら、そこから深掘りできるもんね。

そうそう。でも、普段はやってるでしょ、だいまりも?

そうかな、会話だと?

「えっ、なんで、なんで?」とか言うよね(笑)。「なんで落ち込まないの?」とか(笑)。

あぁ、言う。言うんだけど、取材となるとやっぱりすごくまだ緊張するし、いつもの会話よりも大それたものとして挑むから、あとでテープを自分で聞き直すと、「あぁ、全然良くなかったなぁ」みたいなことは多々ある。でも、テキストにすればいいっていう風に、とっちーがこの前、教えてくれて。例えば、取材で毎回すごい緊張するんだけど、「明日は取材だぁ」みたいな、楽しみでもあり緊張もするんだけど、「ライターというのは、そのとき聞くだけで終わらないで、文字にして上手くいけばいいから」というのを聞いてすごく楽になったんだよね、気持ちが。

そうそう、取材のときに上手くいく必要はなくて、相手に好きだと思われる必要もなくて、書くのに必要な要素を引き出せれば最悪いいわけだから、そのときシドロモドロでも、相手がムッとしてても、いい風に書ければ、万事OKかなとは思う。

それ、すごい聞けて良かったことだわ。「この返しはないだろうよ」とあとから思って凹んだりするわけ。

まあ、相手が気持ちよくなってくれるほうがもちろんいいけど、私はやんないんだけどね、すごい乗せる人っているのよ。「あぁ、そうですよねぇ!!」みたいな、「そんなこと思いつきませんでした!!」みたいにすごい乗せる人がいるんだけど、乗せてその人がすごい気持ちよくなっちゃうと、発言が上滑りするというかさ、そうやって悪い風になることもあるんじゃないかなと私は思うのね。同じことをずーっと喋ったりとか、相手に関心されたいから喋ったりとか。だから、あまりそういうのをやりたくないんだよね。私はさ、「インタビュー中はすごい塩だ」ってよく言われるんだけど。

えぇ、そうなんだ。

すごい塩なんだって、塩対応なんだって。だからあまりリアクションは大きくなくって。

でも、的確に聞くことは、聞き取って帰るんでしょ?

そういう風にしているつもりよ、実際はどうなのかはわからない。

それはさ、質問というか、会話じゃない? 取材って。だから、深めていくことをとっちーが言ってるんだろうね。的確に後で書けるような素材を、盛り上げなくても、持ち上げなくても抜き取れるようなものを持って帰るってことはさ、やっぱり質問っていうか、返しがいいんだろうなと思うんだけど。

どうなんだろうね、返しがいいかはわからないけど、質問はそうね。

だから、とっちーがやってる『コルクラボの温度』で、サディとのやり取りを、サディインタビューのときをよく聞いていると、「やっぱり返しがいいよなぁ」って思うわけ。

あぁ、そうなの?

この返しを、私なんか「えぇ、そうなんだ」みたいなことばかり言っちゃうから。そうじゃなくて、「もっと聞き出すには、やっぱり違うんだな、リアクションが良いだけではダメだな」ってことは自分でもよく思う。

サディとのことでよく言われるのは、肯定ばかりはしてなくて、「それ違くない?」とか、「その喩え変じゃない?」とかってよく言う。サディっていうのは、聞いてる人はわかるかな?佐渡島庸平さんね。そうだよね、それはあるし、確かに納得できないことを相手が言ってくることを、そのままその人の意見として書いてもいいんだけど、そこを結構突っ込むってことをするね。サポートセンターの人とかに、「これちょっと失礼かもしれませんけど、クレームみたいなこととか、文句言う人って正直面倒くさくないですか?」みたいな、「そんなきれいごと言ってますけど、面倒くさいでしょ、実は」みたいなことを。

聞くんだ?

まあ、言葉は直接は言わないけど、ちょっとオブラートに包みながら聞く。そうすると、でも、その人の中にはちゃんと哲学があって、その人たちも面倒くさくないっていうような考え方がちゃんとあるのね。で、ちゃんとそういう風に説明してくれるの。

へぇ。

だから、「この人こう思ってるんだからこう書かなきゃ」じゃなくて、結構ちゃんと聞くと、ちゃんとした人であれば、私が納得できるところまで説明してくれるんだよね。

それは結構質問で、用意していく質問のうちに省いちゃうというか、答えづらいだろうなっていうことはあんまり入れ込まないようにしてたかも、今まで。気分を害されたら嫌だなっていうのもあるし、「これは聞いちゃいけないのかな、どうかな?」という判断が、まだそこまで上手くないから、その人が得意そうで、なおかつ他の人ではない知識を持っているみたいなところに絞って、痛いところは突かない戦法をしてたわ。

私もそういう傾向があるかもしれないけどね。でも、実はそこをやったほうが。

聞きたいよね。知りたいことだよね。それは結構みんな。

それがタイトルになるぐらいのメインになったりする。やっぱり自分が感動するじゃん。「あっ、こっちで思ってたけど、こういうことなのね」みたいな、「反対だったのね」みたいなことで、「違う見方をすればそうなんだ」みたいな、結構びっくりするから、そこは結構。

それは事前に「これを聞いてみよう」と思って準備して行くというよりは、会話の中で「ここはどうなんだろう」という風に出てくるものって感じ?

私の場合はそうだね。最初から「ここの辺は言いづらいだろうけど聞こう」みたいに用意して行くことはあんまりなくて、編集者さんに「ここはぜひ聞きましょう」とか言われたら聞くけど、自分ではあまりなくて、話しているところで「やっぱり違和感あるなぁ」とかさ、「なんか納得できないなぁ」みたいなところを聞くことが多いねぇ。

でも、それがきっと感性であり、個性なんだろうね。ポイントが違うじゃん、人それぞれで。

そうかもしれない。人によって違う。

だから、それでとっちーが書く良いモノっていう風になるんだろうね。

うーん、まあそう、わかんないけどね。そうだといいけどね。

なるほどね。とっちーにおいて言えば、質問はそんなに準備するのがすごく大変なものだっていう思いはあんまりない感じ?

ない。質問自体はね。

へぇ、慣れていけばそうなるのかなぁ? 私は今だと、質問を用意して行くことがすごく大変だから。

なんかすごく読み込んだりするってことだよね。

そう。じゃないと……。

なんか読み込んでいってさ、それ……。私があんまり調べないライターだから良くないんだけどさ。

でも、書けるのがすごくない? そうじゃなきゃ、聞けなきゃ書けないって思っちゃう。

でも、呆れられてるかもしれない。それも知らねぇのかみたいな(笑)。

(笑)。でも、語ってくれるわけでしょ?

そう、嫌な顔しながら(笑)。

「それも知らないのか」の「それ」自体はさ、ザックリと掴んでるってことじゃん。

うーん、どうだろうなぁ。

そのインタビュイー(取材を受ける側)のことを大まかには調べてということだよね。

そうそう、例えば、「この1時間は、この人についてガッツリ調べよう」と決めてやったりとか、ばーって調べて、気になったのをスクラップしておいて、直前にこれ全部読もうとか、なんかそれぐらいで。

なるほどね、それで結構十分なのかもね。

書籍は読むとなると結構大変だし。

大変。

やっぱりちょっと、こう言っちゃなんだけど、すごい大物みたいな人だったら、読むぞみたいな感じで読んだりもするけどね、という感じかなぁ。でも、質問を作るの自体は30分とかよ。

へぇ、そうなんだ。

その前に色々と調べたりはするかもしれないけど。

そっか。

考え方としてはその企画のコンセプトとか、(後ろで子どもの声)、ちょっと子どもの声が入っておりますが(笑)。コンセプトとか、メディアの特性とかいうのを目指すところに置いておいて、それに向かってどういう質問をしていくと分かるかなっていうことを考えるんだけどね。難しいけどね。

なるほどね、メディアの特性。それは編プロ時代にやっていく中で学んで行ったっていう感じ? そのやり方を。

実は編プロのときって、インタビューはそれぞれやっていたのね。

一人ひとりの社員?

そうそう。まあ、先輩の取材に同席はするんだけど、それでインタビューのノウハウを教えてもらったみたいな経験はあんまりなくて、結構みんな独自でやってた。

へぇ。

だから質問の作り方とかも自分で考えたんだと思うんだよなぁ。

へぇ、そうなんだ。

まあ、そうね、経験して行って、これぐらいないと困るとかさ、これぐらいあれば十分だとかさ。そういうことなのかなぁ?

なんかさ、質問を10個とかさ、1時間に対して10個ぐらい用意していくとさ、「あれも聞かなきゃ、これも聞かなきゃ」みたいに頭で思っちゃうこともあるじゃない。本当は話が盛り上がって来たのに、だからそこを聞くべきなのに、用意してる質問「これも聞きたかったな」みたいなことが出てきちゃうことが私はあるんだけど、そういうときは、どっちをどういう順序で優先したらいいだろうね?

私は4、5個しか考えない。

1時間だと4、5個?

そう。

なるほどね。

自分で覚えてられる範囲。

ふーん、紙で見なくてもってことか。

そうね。喋りながら、「これならあそこに繋げられる」とか、相手から聞きながら、「これなら4番目に繋げられる」とか、「5番目で聞こうとしたこと今言ってるな」とか、振り返れる範囲の質問しか用意して行かない。

でも、それプロの技だね。それこそサディが言ってたこと、私にアドバイスをくれた書き方のことは、そういうことだった。

そうなんだ。10個あるとさ、忘れちゃうでしょ?

そうだよね。「こっちが盛り上がんないでイマイチなことしか聞けなかった場合に」とか思っちゃうんだよね。

保険でね。

そうそう。

それは保険として置いておけばいいかも。メインは5個にしておいて、時間がどうしても余っちゃったらこの保険を聞こうって感じがいいかもね。

なるほどね。それはそうしよう次から。

という形で今日もあっという間になってしまいましたけど(笑)。

はい(笑)。


『破天荒フェニックス』(田中修治 幻冬舎 2018年)とか、まさにそういう造りだったよね。

まあ、あれはご自分で書いているけどね。

そう、でも完全なるフィクションではないけど、ノンフィクションとフィクションの間で、あれを読んだ人は「OWNDAYS(オンデーズ)」という会社が好きになるというか、それを作ってもらえたら、まあ、自分であれを書ける人は稀じゃない。

そうだね。

そう、すごいなって思う。

そう、そんな感じです。以上、栃尾江美と。

代麻理子でした。
<書き起こし、編集:折田大器>