【読むPodcast】#216 今の仕事ができなくなったら?(ゲスト:高橋晋平さん)


「今の仕事ができなくなったらどうしよう」は、よく考えるテーマです。私ならおおまかに「書くこと」でお金をいただいていますが、例えば片腕が使えなくなったり、目が見えなくなったりしたらこの仕事は難しいでしょう。晋平さんは「笑わせる(笑われる?)こと」がとても大事だから、それであればおもちゃクリエイターでなくてもいい、とおっしゃっています。私はといえば、とても大事なのは「書くこと」だったりするのですね。最後には、「それはアートである」と晋平さんに言っていただくという、私にとって、とてもありがたい時間となりました。

栃尾

クリエイティブの。

高橋

反対語。

栃尾

こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。

高橋

こんにちは、おもちゃクリエイターの高橋晋平です。

栃尾

この番組は私、栃尾江美が好きな人やお話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。はい、えっと、この収録が配信されるときはどんな状況かちょっとわからないですけれども、今晋平さんとね、頭が柔らかい感じの晋平さんと話したいなと思ったのは、「今の仕事ができなくなったらどうやって生活していきますか」っていうことなんですけど、考えたことってありますか?

高橋

あぁ、もう常に考えてるかなぁ、と思いますね。

栃尾

ふーん。

高橋

そもそも、僕は、やっぱり独立して仕事をしている以上、まあ、じゃあ「10年後どうなってるんだ」とか、「20年後はどうか」みたいなこともやっぱり考えるタイプなんですよね。

栃尾

へぇ。

高橋

で、僕は今おもちゃを作ってるんですけど、まず「このおもちゃを作るっていう仕事は、どっかでやめるだろうな」とはもう思ってます。

栃尾

あぁ、そうなんだ。

高橋

はい。僕はそもそもおもちゃが好きなのではなくて、笑いが好きなので。

栃尾

うん。

高橋

おもちゃはおもちゃ会社に入って10年間学ばせていただいて、作れるようになったから今アウトプットの形としておもちゃっていうのが、他の人にできないスキルだから仕事にさせていただいているというような感覚があるのが正直なところで。

栃尾

うん、うん。

高橋

その中で自分が絶対に外せない「やりたいこと」っていうのは、「それを通して人が笑うっていう価値を生むこと」なんですよ。

栃尾

ふーん。

高橋

それをもっと、どストレートに言うと、「ウケたい」っていう気持ちが強すぎるんですよね。

栃尾

(笑)へぇ。

高橋

それはなんか昔18歳までずーっと友達もいなくて、人前でしゃべれなくて、地元の不良に絡まれて生きてきてね、田舎で。

栃尾

(笑)。

高橋

で、大学入って人間関係がリセットされたときに、落研入って、落語とか漫才やって、人生っていうか世界が変わって、「人を笑わせるっていうのは素晴らしいことだ」ってなって、そこからずーっと引きずってて、コンプレックスの裏側みたいなことで、もう笑わせることで自分を何て言うのかな、保ってるっていうか人に承認されている部分があるんですよね。

栃尾

なるほど。

高橋

もう何よりも気持ちいいし、ウケたら。で、それが別に自分のセンスで笑わせてるってことは僕はほとんどないんですけど、まあ、笑われてるというか。

栃尾

うん、うん。

高橋

それがやっぱり嬉しい。「笑われてるイコール存在を認められていて、嫌われてはいない」って思えるから、その瞬間がずーっと好きなんです。

栃尾

うん。

高橋

それは家庭でもそうだし、外でもそうだから、ずーっと笑われていたいなと思っているという人間です、と。

栃尾

うん、うん。

高橋

そうなったときに、じゃあ、おもちゃを作っているけど、何かのきっかけで、おもちゃっていうものが、まあ、考えづらいでうけど、無くなるとか、「もう商売として成り立たないよね」みたいな、あるいは、これは現実にありそうだけど、そんな「おじいさんにおもちゃ考えて」っていうのも言いづらいから、僕があと20年ぐらい先だったら、僕におもちゃ作ってほしいなんて誰も思わないわけで。

栃尾

(笑)なるほど。

高橋

それでも何かの仕事はして人の役には立っていくわけだから、だからおもちゃはどっかでやめるはずなんです。

栃尾

うーん。

高橋

でも、「笑わせたい」。これは一生変わらない。

栃尾

へぇ。

高橋

だから、そのとき、そのときのできることとか、自分の出せるパフォーマンスに合わせた笑いを作りたいというのが、漠然とした僕の人生の戦略です、と。

栃尾

ふーん。

高橋

ってなるともうなんでもよくて、普通に、元々、昔、歌とかもこっそり作ってて、ミュージシャンになりたいみたいに思ってた時代も大学のときとかあったんで、別に歌を作ってもいいかもしんないし。

栃尾

パソコンで作ってたんですか?

高橋

そうです、そうです。

栃尾

へぇ。

高橋

打ち込みで。で、布団かぶって歌って作ったりして。

栃尾

アハハ、なるほど、なるほど。

高橋

それが商売になるかわかんないですけど、歌でもいいし、文章書くのも好きだから、文章でもいいし。でも、何よりもやりたいのは喋りですよね。

栃尾

おー、なるほどね。

高橋

落語やってたから、だから、自分が喋ることがお金になるのであれば、それが最高なので。

栃尾

うん。

高橋

絶対に喉だけは大事にしたいって思ってますね。

栃尾

おぉ、なるほどね。へぇ。

高橋

うーん、たとえ、この手が折れようとも、足が折れようとも。

栃尾

うん、うん。

高橋

喋れるようにだけはありたいと。

栃尾

なるほどね、手足関係ないですもんね。

高橋

そう、だから、元々落語家になれるものならね、面白ければなりたかったけど。

栃尾

うん。

高橋

そもそもさっき「笑いが大事」とか言ってたけど、僕全然面白いやつじゃないんで(笑)。

栃尾

そうですか、面白いけど。

高橋

芸としてはね。

栃尾

あぁ。

高橋

芸ができるタイプではないですから。いわゆる「ザ・芸人」にはなれないけど、自分なりに学んできたこととか、やってきた仕事の話を「人の役に立ちつつ、かつ笑える」っていうことに落とすことは多分できるんじゃないかなと思うんです。

栃尾

うん、うん。

高橋

だから、そういうビジネス落語家になりたいなっていうのは、わりと公言していて。

栃尾

あぁ。

高橋

もう10年後には、それまでのなんか若い人の役にも立つようなことを、ただ話すとか、ただ講演で話すんじゃなくて、落語にしたい、笑い話にしたいっていうのがあって。

栃尾

うん。

高橋

やっぱり、すごい有名な人とか、すごい実績がある人の講演とかってよく聞くんですけど、あんまり、こう腹の底から笑えるのってないじゃないですか。

栃尾

あぁ、そうですね。

高橋

うん、「なるほどねぇ」と関心するけど、まあ、そこまでね、笑える面白い人ってやっぱりあんまりいないんですよ、ビジネスマンで。

栃尾

うん。

高橋

で、それを考えると、僕はビジネスの実績は別に弱いと思うんですけど、「笑いとしては勝って行けるかな」って思っていて。

栃尾

なるほど、なるほど。

高橋

うん。

栃尾

バイオリニストの高嶋さん、誰でしたっけ、女の人。

高橋

あぁ、誰でしたっけ。

栃尾

あの人とかも口が悪いってことで笑いをとって、それでやっぱり有名になってみたいな、バイオリンの腕はそんな日本トップではないけど、やっぱり「めちゃくちゃ面白いから」みたいなところはありますよね。だから、ビジネスマンでめっちゃ笑いがとれたら、それこそすごい目立つ(笑)。

高橋

うーん、そうですね。だから、実は、これも本音としては、今、モノを色々作ってますけど。

栃尾

はい。

高橋

その先に、これを作ったことで何が起きたかっていうのを語れるようなものを作りたいなっていう、目的でモノを作ることがすごく多いんです。

栃尾

うん、うん。

高橋

もちろん、その商品でお客さんに喜んでもらうのは必須ではありながら、自分の裏目的として、「仮にそれが売れなかったとしても、なぜそれが売れなかったのか」とか、あと、たまにその作ったゲームとかで、「そこのルールはこうじゃないんですか」とか、すごいしつこく質問が来る人とかいるんですよ。まあ、たぶんファン、ファンといっていいと思うんですけど、もう毎日、毎日、ルールの粗を探したりとか、「ここはどういうことですか」みたいな。

栃尾

へぇ。

高橋

で、それは丁寧に答えるんですけど、「すごいありがたい」と思っていて。

栃尾

うん。

高橋

で、そういうことが、まあ、個人情報とか出せないけど、そういうことがありましたっていうのも一つ、「あぁ、そういうことってあるんだね」っていうヒントになるかもしれないし。

栃尾

うん、うん。

高橋

「できるだけ、色んなことが起きる商品を作りたいな」って思ってて、そういう意味で、最近作ってるカードゲームは「Amazonで売らないで、手売りしかしないよ」みたいなことをやってみたりとか、それもエピソードをいっぱい集めたいなっていう気持ちもあるんですよね。

栃尾

なるほど、なるほど。

高橋

うん。

栃尾

私は今晋平さんの話を聞いて、絶対に人を笑わせたいみたいなのが、つまり、私にとって一生変わらないだろうなみたいなのって、文章を書くぐらいしかなくて、でも、たぶん今の仕事ができないときって、書けなくなったときだろうから、「そうしたらどうしようかな」って今思いましたけどね(笑)。

高橋

あぁ、そうか。今やっていることがイコールそれだからってことか。

栃尾

そう、そう。元々「すごい伝えたいものがあって、文章がツールである」っていうタイプではないんですよ。なんか、ツールが好きっていう、文章が好きっていう。

高橋

なるほど、なるほど。

栃尾

つまり、なんか「包丁がとにかく好き」みたいな感じなんですよね(笑)。

高橋

はい、あぁ。

栃尾

それで、「包丁が使えさえすればそれでいい」みたいな、「文章が使えればそれでいい」って感じなので、なかなか難しいけど、でも、私ずっと自分のことをアウトプットっていうか、日記に書いてきたりとか、ポッドキャストで話したりとか、色々やってて、アウトプットできない人の相談に今乗ってるんですね。無料相談っていうをやってて。だから、「もし私自身が書けなくなったら、それをやっていけたらいいな」なんてちょっと今思ってたりとか、あと、本当に食べれなくなったら、理系女子なんで、元々。

高橋

はい。

栃尾

「家庭教師でもやろうかな」って思ってますね。

高橋

いや、そうですね。なんかその、僕興味あって聞きたいんですけど。

栃尾

はい。

高橋

さっきタイピングが好きだって話を前に伺ったりしてるから、それが本当に純粋に行動としてというか、アウトプット形態として好きなんだと思うんですけど、例えば、自分の文章が世に出たり、誰かに読まれたりとか、あるいは、書いているときでもいいんですけど、「どこの瞬間で何が起きたときが一番嬉しいのかな」って聞かれたら、なんか答えってあります?

栃尾

まあ、嬉しいっていうキーワードかぁ。一番なんか「いい」っていうか、価値が高いと思ってるのは、書いているときなんですよね。

高橋

うん。

栃尾

私は人生とか、例えば、24時間の中で、フロー状態になれる時間を増やした方が幸せだと思ってて。

高橋

うん。

栃尾

で、書いてるときとか、あと、こうやって集中して喋ってるときっていうのはめちゃくちゃフローなんですよね。

高橋

うん。

栃尾

で、だから、本当に集中して書いているときが一番私にとっては価値が高いです。

高橋

うーん。

栃尾

でも、それは嬉しいとか、そういうのは忘れてるから(笑)。嬉しいかっていうとそれはまた別の瞬間になりますけどね。

高橋

うーん、あ、そっかぁ。でも、それすごい才能ですよね。

栃尾

(笑)。

高橋

そう、僕は文章ができて、読んでもらって反応をもらったときだけが嬉しいけど。

栃尾

あぁ。

高橋

「書いているときが一番幸せ」とは思わないですもんね。

栃尾

へぇ。

高橋

だから、僕、小説好きで、「この小説ものすごいな」って思って感動するから、小説書けるってすごいことで、羨ましいなっとか思うけど、「絶対になれない」って思いますもん。だって書くことが自体が好きなわけではないから。

栃尾

なるほど、なるほど。

高橋

だから、小説家の人「苦しい」っていうけど、それでもやっぱり好きだからあそこまでのことができるわけで。

栃尾

そうでしょうね。

高橋

才能ですよね。

栃尾

私も大元には、小説を書きたいっていうのがあるんですけど、私、枝葉でいうと、たぶん葉の部分が好きっていうか。枝葉じゃないか、森と木でいうと、木の部分が好きっていうか。

高橋

うん。

栃尾

その書いているときは好きなんだけど、全体のプロットを考えたりっていうのは、左脳なので、あんまり好きじゃないんですよね。

高橋

うん。

栃尾

それで、全然書けないっていうのを繰り返してるんですけど。

高橋

はい。

栃尾

でも、ただ、没頭して書くっていうは、もうただひたすら好きですね。

高橋

あぁ、僕、ひとつ、ついこの間、思ったのは、アーティストの人って、自分の創ったアートに付ける値段っていくらでもいいわけじゃないですか。

栃尾

はい。

高橋

絵に1億円とか、別に10万円からでもいいし、まあ、1,000円でも、それは自分次第なんですけど。

栃尾

はい。

高橋

「自分が書いた本って、アートにできないのかな」って思って。

栃尾

あぁ。

高橋

だいたい、その書いた文章って、今って量産されて多くの人が読むって形が一般的じゃないですか。

栃尾

はい。

高橋

それが、そのたった一人にしか渡さない物語みたいなことに、例えば1億円付けるっていうのは自由ですよね、たぶん。

栃尾

そうですね。

高橋

やるとしたら。

栃尾

売れる、売れないは別として。

高橋

売れる、売れないは別として、そうすると、1億円の価値のある商品を自分が書いて、「あっ、この駄文だったら、50円だな」っていうのもあれば、「これはすごいから、これは1万円でも、その人には価値があるだろう」って思うやつを、やっていくと、予期しなくても「これはすごいって1億円付けてもいい」っていうのができるかもしれないんですよ。付けるのは自由なんで。

栃尾

うん。

高橋

で、それを持つとまず、自分は1億円の価値のあるものを手に入れたことになるわけですよね。

栃尾

(笑)確かに。

高橋

それだけで。で、あとは、それってアーティストって人間とアートって一体だから、それはそのとっちーさんのことが本当に好きで、素晴らしくて、とっちーさんと触れていると、自分がアップデートされるっていうか、変わっていくんだみたいなことが。

栃尾

(晋平さんのアラーム音が)ピー、ピー言ってる(笑)。

高橋

あ、ごめんなさい。

栃尾

(笑)大丈夫ですよ。

高橋

っていうことが、起きる人だったら、それが欲しくなるかもしれない。1億円の。超大金持ちがね。

栃尾

なるほどね。

高橋

で、それって言ったら商売になるわけじゃないですか。まあ、アートってそういうことだから。

栃尾

はい、はい。

高橋

だから、そこまで文章が好きだったら、そこまで絵が好きな人とまったく同じで、アウトプット形態が違うだけだから、自分が「これが世界で1冊だったらいくら付けれるのか」っていうのを考えながら、そういう小説とか書いてみたら面白いんじゃないかなってちょっと思いましたけどね。どうなんだろう?

栃尾

なるほどなぁ。

高橋

そしたら「私はね、1億円の資産を既に持ってるんだ」と。ただ、誰も買わないだけでね(笑)。

栃尾

(笑)。

高橋

(笑)っていう。

栃尾

(笑)むずかしいな、売れない資産。

高橋

でもね、人生ってそうなんだと思うんです。

栃尾

へぇ。

高橋

もう自分次第で。

栃尾

うん、うん。

高橋

だから、もちろんね、仕事してお給料もらうんだけど、それは皆お給料もらわなきゃいけないですから。それは、この一連の1回目で話した「バイトしてたら生きられた」みたいな。

栃尾

うん、うん。

高橋

で、そのバイトも全部辛いわけじゃなくて、楽しいこととか、学びもいっぱいあったし。それともう分ける話なんですけど、文章が本当に好きだったら、色んなとこでいっぱい色んなことを書くんだけど、自分が果たして世界に1冊しかないので、いくら付けてもいいものを創れるかって考えて書いてみるって結構楽しいかもしれないなって。

栃尾

なるほどね、ちょっと考えてみます。

高橋

だから、アーティストなんですよ、皆。クリエイターとちょっと意味が違う。

栃尾

なるほどね。

高橋

人間ってね、その作品と一体で、アートなわけだから。

栃尾

うん、うん。

高橋

そしたら、もう、とっちーさんの魅力が高まれば高まるほど、その商品が魅力あるってことも人に伝えやすくなるし。

栃尾

うん、うん。

高橋

そしたら、もう生き方とイコールになって、どんな仕事をしたっていいっていうことになってくるんじゃないかなって思いますけど。

栃尾

なるほど、なるほど。そうですね。はい、ということで、今日はここで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。以上、栃尾江美と。

高橋

高橋晋平でした。

<書き起こし、編集:折田大器

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