
理系出身のライター(文系)という栃尾です。ゲストのパンタグラフ・井上さんも、いろいろな二面性をお持ちだそう。「物理 vs 芸術」とか「アート vs 体育会系」とか。私は「どっちつかず」で苦しんでいましたが、井上さんは「どう使おうか」という観点でいたためか、苦しさはなかったのだとか。離れている特性は、離れているほど武器になるような気がします!
栃尾クリエイティブの。
井上反対語。
栃尾こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
井上造形作家のパンタグラフ井上です。
栃尾このポッドキャストは私、栃尾江美が好きな人やお話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。再び、井上さんお願いします。
井上はい、よろしくお願いします。
栃尾はい、えっと、井上さん私のポッドキャストを結構聞いてくださったということで。
井上はい。
栃尾似たような悩みが。
井上そうですね。
栃尾あったとお聞きしたんですけど(笑)。
井上そうですね、とっちーさんがおっしゃられていた二面性についてのお話で、僕も「あぁ、そういうことがあったのか、僕も共感できるな」という部分があって。
栃尾うん。
井上例えば、文系と理系ということだったんですかね?
栃尾はい、はい。
井上ですよね。僕も理系だったんです。
栃尾あっ。
井上理系で、物理大好きで。
栃尾えっ、そうなん……、でも、造形って確かに物理と関連してますよね、たぶん。
井上そうだと思うんですけどね。
栃尾うん、うん。
井上で、そういうことがあったり。
栃尾うん。
井上僕、大学で。
栃尾はい。
井上体育会の野球部にいたんですけど。
栃尾えー、すごくないですか(笑)。
井上ってなりますよね?
栃尾なる、なる。
井上僕にとって全然普通なんですけども。
栃尾はい、はい。
井上野球がすごく好きで、今でもやってるんですけども。
栃尾へぇ。
井上そういう野球部とかに所属していると、どっちも異端児扱いになっちゃうんですね。つまり、芸術学部でお勉強してるとですね。
栃尾うん。
井上「えっ、井上君、体育会の野球部にいるんだ、すごいね……」ってなっちゃうんですよね(笑)。
栃尾「僕と分り合えないね」みたいな(笑)。
井上そう、そう。で、野球部で練習してると、「井上君って芸術学部なんだね」ってなっちゃう(笑)。
栃尾(笑)。
井上「芸術やってるんだね」ってそっちでも異端児になっちゃうということで、わりと、そういう全然違う対極にある両方をやっちゃうっていうことが僕、結構あるっちゃあるんです。
栃尾うん、うん。
井上例えば、今、メディア・アートみたいなところで作品を発表したりしてますけど。
栃尾はい。
井上今、趣味で、お能をやってるんです。
栃尾へぇ。えっ、舞台に上がるやつ?
井上舞台に上がるやつです。
栃尾はい、はい。
井上つまり、お謡を謡ったり、獅子舞を舞ったりですね、着物を着て。つまり、能楽堂でやるやつですね。
栃尾ふぅーん。
井上そういう世界にいると。
栃尾はい。
井上先生についてやってるんですけども。お稽古していただいたりとか、発表会があったりとか。
栃尾へぇ。
井上お扇子持って、着物着てやってるんですけども。
栃尾うん。
井上先生はですねいつも、「世の中、なんでこんなに新しいものばっかり評価されるのかわかんない」って嘆いておられるんです。
栃尾なるほど(笑)。
井上「それ、もう、まさに私のことです」って思いながら、お稽古受けてるんですけども。
栃尾はい(笑)。
井上全然こう違うものを触れていくっていうことを、それに限らず時々やっちゃうことがよくあるんですよね。
栃尾それって苦しいですか?
井上うーんと、苦しくは僕はなかったんですよ。逆に、どっちかに逃げれるっていう感じで、逃げ場だったんですよね。どっちも逃げ場があって。
栃尾なるほど、なるほど。
井上はい、なので、僕にとっては心地よい二面性と言いますか。
栃尾ふーん、なるほどねぇ。
井上そうなんですよ。今、草野球やっていたりすると。
栃尾はい。
井上普段、アート関係、デザイン関係ばっかりの方としか話はしないんですけども、野球に行くとですね、週末に。一般的な普通……、普通というとあれですけど、の人たちと話をするわけですよね。
栃尾はい。
井上全然、アートとかデザインに興味がないんですよ、皆さん。悪いんですけど。
栃尾うん、うん。
井上「でも、やっぱりこの人たちに届かないとダメなんだろうな」と思いながらそういう交流をしていると、「為になることはいっぱいあるな」と思いながら、そういう行ったり来たりをしています。この世界とあっちの世界を行ったり来たり(笑)。
栃尾なるほど。野球関係っていうか、スポーツ関係でいうと、私も今はちょっとお休みしていますけど、ママさんバレーやってるんですよ。
井上へぇ、そうなんですか。
栃尾そう。確かにね、誰もツイッターなんかやってないし。
井上あ、そうですか。
栃尾そうそう(笑)。
井上へぇ。
栃尾そうですね。ウェブも全然見ない人もいるし。
井上あぁ、そうですか。
栃尾まあ、アートとかもあんまりね……。
井上うん、うん、うん。
栃尾ないんだろうなっていう感じですけど、確かにでも人の意識ってのはこれぐらいなんだと。
井上うん、うん、そう、そう。
栃尾一般的には。そういうのをなんか立ち戻るっていうか。
井上あ、そうですね。
栃尾そういうのは、確かに役に立ちますね。
井上そうですよね。
栃尾うん、うん。
井上うーん。
栃尾でも、なんだろう理系と文系とか、あと物理と芸術とか、わかんないですけど。
井上うん。
栃尾そういうのでいうと、私はなんかどっちつかずみたいな感じで、ちょっと苦しかったんですよね。
井上あぁ、そうですか。
栃尾うーん。
井上苦しかったんですねぇ。
栃尾苦しかったんですよね。
井上あぁ。
栃尾自分、なんかどっちかを極めないと、どっちかに絞らないと、ひとかどの人になれないんじゃないかとか。
井上それはあります。
栃尾あります?
井上少しありますね。
栃尾(笑)うん、うん。でも、どっちも活かせてるって感じなんですかね? 井上さんの場合。
井上うーん、僕の場合、そうですねぇ。「ここに新しい世界があるかも」と思ってしまうことはありますね。
栃尾うん、うん。
井上例えば、えっと、僕アニメーション始めたきっかけというか、コマ撮りアニメーション始めた「これがきっかけかな」と思うのが、野球が好きすぎて、高校時代。野球のバッティングフォームとかピッチングフォームありますよね。
栃尾はい。
井上それの連続写真を見るのが大好きだったんです。
栃尾人のですか? 自分の?
井上あのぉ、人の……、プロ野球選手の。
栃尾へぇ、はい、はい。
井上「この人はここで肘を上げるんだ」とか。
栃尾なるほどねぇ。
井上「ここで手首返してるんだ」とかっていうのを見るのが大好きで、それをパラパラ漫画に描いてたんですよ、自分で。
栃尾はい。
井上これってスポーツでもあるし、芸術でもあるなと思って。
栃尾はい。
井上なんかこう、「この2つ繋がらないかな」とか思いながらやっていたのを思い出していました。
栃尾はい、はい。
井上で、何て言うんでしょう……、そのスポーツの世界でも、今はだいぶ融合してきてますけど、芸術と。
栃尾はい。
井上例えば、プロ野球がすごくショーアップされてきたりとか。
栃尾うん。
井上ユニフォームがすごく凝ってきたりとか、ファンサービスがすごく盛り上がっていたりしますよね。
栃尾はい。
井上そういうものに、今はもう繋がっていってるんですけど、当時は全然分かれていた部分で、なんかこう思ってたんですよ、僕。スポーツの、例えば、「球場に行ってなんかショーができないか」とか、「デザイン的にもっとできないかな」っていう風に考えていて、大学を卒業してすぐ12球団に就職活動をバァーってかけていた時期もあってですね。
栃尾えっ、そのデザイン方面でってことですか?
井上あ、そうですね。球団事務所です。
栃尾はい、はい。
井上球団事務所に、ちょっとこれはもう無鉄砲で恥ずかしい話なんですけども、「自分がこうやってこういうデザインをします。こういう展覧会を学生時代ですけどしてきました」っていうポートフォリオをですね、どうにかして読んでもらおうと思って12球団にこう……
栃尾すごーい。
井上送ってですね、やっていったことがありましたね。やっぱりダメでした、全然。
栃尾ダメでした? まだ早すぎたんですね、きっと。
井上うーん、どうなんでしょう(笑)。まあ、そういう、そこが融合していない時代だったですかね。だから、そこが今はすごくショーアップされてきたので、見てて楽しいですけどもね、自分も。
栃尾でも、そういう風に若い頃からちゃんと異質のものを組み合わせるとか、そういう意識があったんでしょうね。で、自分で土俵を作ってくみたいな。
井上あぁ、そうですねぇ……、なるほど、そう言われてみると、ちょっと、まあ王道を行くのではなくて、なんかこう付け足して少し違うものにならないかなとかっていうことはなんとなく意識していたのかもしれませんね。
栃尾そうですよね。私はたぶん、「元々ある土俵で、道で、勝負しなければいけないのだ」みたいなことを勝手に考えちゃっていて、ここの土俵でまったく使えない、例えば、理系の文脈で、システムエンジニアっていう文脈で全然使えない「小説が好き」みたいなのってなんの役にも立たないみたいな思考回路だったんだと思います。
井上あぁ、なるほど、なるほど。
栃尾だけど、たぶんそこの両方が活かせるような土俵を新しく見つけるとか、つくるみたいな意識があんまりなかったんだと思うんですよね。
井上なるほど、なるほど。
栃尾だからそこら辺が違うんだろうなって今聞いてて思いました。
井上そうですか。
栃尾そういう意識っていつ頃芽生えたとかありますか?
井上どうかなぁ……。
栃尾うん。
井上うーん、まあ、さっき言いましけども、やっぱり野球とアニメーションが被ったとき。
栃尾うん、いつ頃ですか?
井上高校ですね。
栃尾へぇ。
井上高校時代にちょっと野球にハマって、パラパラ漫画にもハマってっていう時期に、「これ、全然混ざるじゃん」って思ったことがありますね。
栃尾すごいなぁ。
井上もちろん、それが何か明確に成果物になっていったわけでは全然ないですけれども、「なんか可能性があるんじゃないかなぁ」という風にはぼんやり思ってましたね、その頃は。
栃尾昔から、絵を描いたりとかモノをつくったりは好きだったんですか?
井上そうですね。工作が好きだったりとか、パラパラ漫画好きだったりとかですね。
栃尾うん、うん。
井上でも、それも特別、すごく好きというわけでもなくて普通に好きな。
栃尾うん、うん。
井上普通の学生でした。
栃尾でも、そこでパラパラ漫画と野球がつながった瞬間が何か、ずっと後になって花開くっていう感じですよね。
井上そうですね。何が本当に役に立つかまったくわからないですね。
栃尾ホントに、スティーブ・ジョブズが言ってた「点と点がつながる」みたいなことなんでしょうね。
井上そうですね。うん、それは思いますね(笑)。
栃尾うん、うん。
井上それがね、アイデアの回でも申し上げましたけれども。
栃尾はい。
井上全然関係ない2つの点が。
栃尾あぁ、確かに。
井上混ざると割と面白いことになっていくよってことにつながっていくのかもしれませんね。
栃尾そうですね。そこをなんか今まで別々だったものをどう繋げるかっていうのはたぶん井上さんならではの繋げ方があって、たぶん別の人だったら別の繋げ方をするだろうしみたいなことを今思いました。
井上そうそう、確かにそうかもしれません。
栃尾ね。
井上別々のものがあって、その繋げ方に作家性がにじみ出るというか。
栃尾なるほどね。
井上その人らしさが出てくるんじゃないですかね。
栃尾なるほどね、そっか、そっか。
井上だから別の人が同じ2点を選んでも、また違うものができていくのかもしれませんよね。
栃尾うん、うん。物理好きみたいなところはどういうところに表れてるっていうのありますか?
井上物理好きですか。
栃尾でも、ゾートロープとかはそうなのかな。
井上そうなんですよ(笑)。よくよく考えてみると割り算ばっかりしてますから、僕、ゾートロープで。
栃尾えっ?
井上「360度割るいくつはいくつで」とか。
栃尾あぁー。
井上かなり緻密に作らないとちゃんと動くオブジェにならないので。
栃尾はい。
井上すごく計算機は毎日カチャカチャやってますねぇ(笑)。
栃尾電卓叩いてやるんですか。
井上電卓叩いてます。
栃尾へぇ。その1ミリとか0点何mmズレるともう見れないってこと?
井上そうです。アニメーションが雑になっていくので。
栃尾はい、はい。
井上きっちり何等分して配置していったりとかっていうことはやるために、数学とか算数は毎日やってますね(笑)。
栃尾(笑)すごいですね。
井上いえいえ。
栃尾なるほどなぁ。そう、頭の使い方みたいなことって、モノをつくるときに、私も文章書くときも同じですけど、ここは左脳だな、ここは右脳だなみたいなのが結構あるんですけど。
井上あぁ……。
栃尾そういうのはありますか?
井上左脳と右脳ですか?
栃尾うん、例えばですけどね。
井上あぁ……。
栃尾今例えば、引き算と割り算とかは左脳っぽいなとか。
井上うん、うん。
栃尾なんだろうなぁ。動きを考えるのは右脳っぽいとかいうイメージですけど。
井上なるほど。左脳、右脳っていう風に意識したことはないですけども、今考えてみると確かに両方必要だなとは思いますね。
栃尾うん、うん。
井上その正確に割っていく、コマを割っていくところと。
栃尾そうですよね。
井上ここはちょっと情緒が欲しいなっていう、動きに情緒を付けるときもありますから。
栃尾はい。
井上そういうときはまた違うんでしょうね。
栃尾そんなに意識しないで、自分の中で流れるようにやってるんですか?
井上うーん、そうですね。あんまりそういうことを考えたことなかったですね(笑)。
栃尾(笑)。私はもうなんか圧倒的に左脳的な作業だとパフォーマンスが落ちるんですよ。
井上あ、そうなんですか。
栃尾没頭度合いが減っちゃうんですよね。
井上へぇ。
栃尾うん、で、ちょっとそれこそ情緒的な表現とか、ストーリーの流れとかを考えてるほうが、楽しく没頭できるんですよね。
井上そうなんですね。
栃尾はい。
井上わりとそこは混ざっちゃってる感じがしますねぇ。
栃尾へぇ。
井上なんでだろう(笑)。
栃尾どっちも好きって言うか。
井上そうですねぇ。もうなんかあんまり境界線がないような僕は感じがしています。
栃尾へぇ。ちなみに、いろいろ工程があると思うんですけど。
井上はい、はい。
栃尾本当はやりたくないんだけど、やらざるを得ないみたいなのもありますか? 苦手な工程っていうか。
井上うーん、それはありますねぇ。
栃尾例えば。
井上一番しんどいのですね、「このアイデア本当にちゃんと形になるかな」って、そのアイデアを練って練ってどうにかして形にしようとしているときに、もう、しんどくなります。
栃尾形にする前?
井上形にする直前ですね。
栃尾直前……、設計図を描くような段階ですか?
井上そうです、そうです。
栃尾あぁ。
井上「この形でいいのかな? この方向性でいいのかな?」っていう分かれ道がまだいっぱいあるときに、なかなか自信が持てなくて。
栃尾はい、はい。
井上苦しくなりますね(笑)。
栃尾へぇ。
井上それが定まってから、あとはもうこの設計図、ラフ通りに作るだけってなったらもう気が楽ですけれども。
栃尾なるほど、なるほど。設計図通りに作るのは比較的楽しいみたいな。
井上楽しいし、そこでは何回か前に申しあげました、音楽とか、周りで雑談とか、Netflix観ながらとかできるかもしれませんけれども。
栃尾あぁ、なるほど、なるほど。
井上そのラフ段階がすごくツラいです。
栃尾へぇ。漫画家さんと一緒かもしれないですね。
井上あ、そうなんですかね。
栃尾なるほど、なるほど。はい、じゃあ、今日もちょっとそろそろお時間となりましたので、この辺で終わりにしたいと思います。以上、栃尾江美と。
井上パンタグラフ井上でした。
<書き起こし、編集:折田大器>

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