【コラム】自分の過去を読んでなぜ楽しい?

定期的にしている「アウトプット相談」。今回は、「どう思われるか」心配で、自分のことをネット上にはあまり書きたくないというKちゃん(男性)。美味しいごはんやさんで、ランチをいただきながら聞いた。

付き合いは長いほうだけれど、実はあまり彼のことを深く聞いたことはなかった。ぽつりぽつり聞いているのだけど、断片的で、そんなにつながっていない。自由奔放な面と、保守的な面を両方持ち合わせている。見た目はワイルドだけれど、中身は繊細。そんなイメージ。

「どう思われるかが気になって、自分のことを書くのに抵抗がある」

と言う。そういう人はとてもたくさんいる。よく思われないんじゃないか。何か思われたら恥ずかしい。そういう人に、私はたいていこう言う。

「自分が思うほど読まれないから大丈夫なんだけどね」

でも、数人でも読まれると嫌な人がいるという。そこで、コミュニティの人だけが読めるブログに書いてみようかな、と彼。

自分の方向性を見つけたいという。そのために過去を棚卸したい。

「自分のことを書くのは楽しいよ。私はそればっかりだからね。特に読むのが楽しい」

棚卸が苦行にならないといいなと思いながら、そう言う。そこで私は、普段あまり聞かれないことを問われた。

「自分のことを読むと、どうして面白いの?」

ああ、そんなの初めて聞かれた! と思いながら、面白い要素はたくさんあるけれど、何を一番に伝えようかと思いを巡らせる。初めての問いに答えを探すこの時間はある意味至福だ。

「まず、出来事も感じたことも、結構忘れてしまうってこと。でも、書いたものを読めば当時のことがありありと思い出せる。自分のことは自分が一番わかるから、少ない描写で当時のことを追体験できる。悲しみも、喜びも、複雑な葛藤も、読んだら即座に自分に戻ってくる。だから、実はどんなによくできた小説よりも、よほど面白いエンタメなんだよね」

「へえ!」と彼は言った。「確かにそうだね。そう聞くと、やってみたくなるね」

そんな風に言ってもらえると思わなかったから、すごく嬉しかった。

かくして彼は、コミュニティ内のブログにほぼ毎週ブログをアップし始めた。過去から時系列で書こうと思ったけど、それはなかなか難しくて、今に絡めたところから。そんな風にして、彼の、彼だけのエンタメ作品ができてゆく。