【読むPodcast】#212 不安な時にどうしたか?(ゲスト:高橋晋平さん)


番組初のオンライン収録です! 今回は、以前も出ていただいたおもちゃクリエイターの高橋晋平さん(会社名にちなんでウサギ耳を付けてくださいました)。Twitterで時間があるとおっしゃっていたので、「また出てください!」とお願いしてみました。晋平さんはこれまでにいろんな逆境を乗り越えてきただろうと、その時の話をお伺いしました。晋平さんならではの「弱さ」を売りにした戦法を使ったようです。

栃尾

クリエイティブの。

高橋

反対語。

栃尾

こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。

高橋

こんにちは、おもちゃクリエイターの高橋晋平です。

栃尾

この番組は私、栃尾江美が好きな人やお話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。今日は晋平さんに来ていただきました、ありがとうございます。

高橋

よろしくお願いします。

栃尾

(笑)よろしくお願いします。で、音でね、わかるかもしれないんですけど、これリモートでやってますね。

高橋

はい、こういうことできるんですね。

栃尾

ね、ちゃんと録れてるのかアレですけど(笑)、初めての試みでございます。

高橋

録れてると思いますよ。

栃尾

「録れてると思いますよ」、そうですよね。

高橋

はい。

栃尾

はい、それで、えっと、晋平さんのご紹介は前の回を聞いていただくとしてですね。まあ、今の別のことをちゃんと話したいなと思って。「今のご時世、まあ、ちょっと不安なことあるよね」ってことで、未来が見えないというか、先が見えないというか、例えば晋平さんの前の話でいうと起業した当時とか、すごい不安だったんだろうなということで、そのときにどうしたかということをザックリとですけど、お伺いしたいなと。

高橋

はい。僕、2014年に大企業を、超安定している、お給料もすごくいい大企業を辞めてですね、1人で独立を……、2人でかな、2人で独立起業したんですけども、まあ、やっぱり不安ですよね。そのときに子どもがちょうど1歳になったばっかりで、家も半年前に買ってローンも組んだ状況っていうときに、なぜか辞めて起業したんで。

栃尾

(笑)。

高橋

で、大企業しか経験したことがなかったから、まあ、なんですかね、世間知らずなんで、「これ辞めたら野垂死ぬのである」みたいに思ってたんですよ。給料も、自分で仕事を取らないと何も入ってこないわけなんで、「もうどうするかな」みたいにすごいドキドキしながら始めたんですけど、このときの始め方で「非常に成功したな」と今でも思っていることが1つあって。

栃尾

はい。

高橋

最初の2か月間、僕、ほぼほぼバイトぐらいの仕事をやってたんです。

栃尾

ふーん。

高橋

普通ね、起業するってなると皆立派な人って、志があって、世の中をこうしたいとか、まあ、そういうのをちゃんと持った上で、起業プランとかも立てた上で始める人ってのがすごく多いと思うんですよね。まあ、もちろん、ノープランで始める人もいると思うんですけど、そんな中で僕はそのノープラン側で、結構体調がキツいから辞めちゃったみたいな理由も結構半分だったんですよ。

栃尾

うん。

高橋

だからもう、「どうしようか」っていうのは全然なくて、何だったら会社作るのか、個人事業主なのか、はたまた転職かぐらいまで迷ってたぐらいなんですね。

栃尾

就職しちゃおうかみたいな(笑)。

高橋

そうです、辞めたあとも迷ってたぐらいなんですけど、そんな中でやっぱり僕がすごく真面目で臆病で慎重派っていう性格があったからか、「もうこれ、お金が全然入ってこないのは耐えられないな」って思って、色んな人におねだりしてというか、甘えて、相談して、「なんかありませんか?」みたいなことを言ったところ、まあ、例えばPVの動画を、「YouTubeの動画撮るから手伝ってくれる?」っていう話だったりとか、あとは、「お店の実演販売の手伝いをしてくれる?」みたいな話とかがあって、それをこう全部やってたんですね。「ありがとうございます」って、「もうホント仕事いただけるなんてありがたい」ってやっていたら、まあ、それが2か月間ぐらい続いて、結構成立したんですよね、それで。

栃尾

生活するぐらいは稼げたみたいな?

高橋

そうです。

栃尾

へぇ、すごい。

高橋

だから「東京ってむちゃくちゃ仕事あるな」ってことがわかったんですよ。

栃尾

(笑)。

高橋

それが理解できたっていうスタートがすごく良かった、この性格にとって。

栃尾

なるほど。

高橋

うーん、だからそのときに、僕はそもそもおもちゃを作っていたので、自分で「こういうおもちゃを作って一発当ててやろう」みたいなことで、「資金を用意したりとか、いろいろ投資をして頑張る」みたいなことをやっていたら、もうすでに、精神的なショックで倒れていたかもしれないと、早々に。

栃尾

ふーん。

高橋

それが、とにかく、「目の前でわかりやすくお金、アルバイト代みたいなのが入ってくるっていう状況がほしいな」って思って、そういう行動をしたことで、「まず、この先どんなことがあっても、少なくともこの都会にいたら、仕事がないってことはあり得ないのである」ということを確認したわけです。

栃尾

あー、なんか「セーフティーネット」みたいな、「気持ちの上で」みたいな感じですかね?

高橋

そうですね。

栃尾

なるほど。

高橋

だってそれまでは、やっぱりなんも仕事がなくなって0円になっちゃって、家族が路頭に迷うみたいな妄想をしてしまっていたわけなんですけど、もう皆「人が足りない、足りない」って言って、何だったらもう『Wantedly』みたいなので、みんな求人してるわけじゃないですか。逆に、「よくそんなに求人するな」って思うんですけど。

栃尾

(笑)。

高橋

そのぐらい仕事の人手が足りないんですよね。

栃尾

へぇ。

高橋

だから、「それを手伝いたい、手伝いたい」って言ってたら、大丈夫ってことがわかったので、今でも、今のこの……例えば、状況によっては、社会が大変になる状況もあるかもしれないんですけど、それでも、やっぱり「人を手伝っているっていうシンプルなことで生きては行けるんだな」というか、「生かされることができるんだな」ってことは今でも思ってますね。

栃尾

へぇ、じゃあ、そのころやってたバイトみたいな仕事っていうのは、本当に晋平さんの得意なこととかまったく関係なく、本当に日雇いバイトみたいなこともやってたってことですか?

高橋

いや、でもさすがにこれ、肉体労働とかしたらすぐ骨折しちゃうようなタイプなんで、それはないし。

栃尾

(笑)。

高橋

あの、「ザ・バイト」みたいな、例えば、スマイル0円みたいな、そういうことはやってないですけど……

栃尾

ないんですね、さすがに(笑)。

高橋

なんかそれも大企業時代10年勤めて、予算が少ない部署で、イノベーティブ説いて、新規の玩具を作る中で、「お金がない中どうやって作って、どうやってPRしようか」みたいなことを考えながら、もう自分でそれこそ動画を自分でカメラで撮って作って、上げてみたりとか。

栃尾

うん。

高橋

もう色んなところを歩き廻って、「これ紹介してくれませんか」って頼んだりとか、もうそれこそ、大きい会社って売れ筋の商品が皆かかりきりで忙しいので、自分の新しい商品に人が割けないから、もう自分で営業しに行ったりとか、そういう何でも自分でやるっていうことをさせてもらってたので、大体のことはできたんですよ。

栃尾

なるほど。

高橋

なので、さっきの店頭販売の手伝いってのも、もう全く分からない人からしたら、「どうやってそれをお願いをして、どう挨拶をして、店舗に入って、何がマナーなのか」みたいなことが分からなかったので、そのアルバイトさん向けのマニュアルを代わりに作ってあげたりとか、そういうことも昔の経験からできたわけなんですね。

栃尾

ふーん。

高橋

なので、まあ、やっていたことはすべて大企業で学んで培ったことを応用した範囲っていう感じでしたね。

栃尾

なるほど、なるほど、一応……一応っていうか、得意なことでやっていたっていうことですよね。

高橋

はい

栃尾

なんかそこで……まあ、多くの人っていうか、結構「頼むことがハードル」っていう人が多いと思うんですけど。

高橋

うん。

栃尾

それはなかったですか?

高橋

うーん、そうですね、やっぱりそこは「不安になりがちな性格が逆に幸いした」っていう感じだったんですよ。

栃尾

(笑)。

高橋

焦っていたというのは正直あったので。

栃尾

あぁ、うん、うん。

高橋

別に「頼むのが苦手」っていうそういうプライドは特にないんですけど。

栃尾

ふーん。

高橋

でも、この……なんですかね、僕を知っている人はわかると思うんですけど、見た目が究極に弱々しいっていう。

栃尾

(笑)。

高橋

最大の武器もありますから。

栃尾

(笑)。

高橋

結構心配してもらえるっていうね、有利な点もあるわけですよね。

栃尾

(笑)おっしゃってましたよね。

高橋

で、自分でいうのもあれですけど、害もなさそうですし、だから、「一生懸命頑張ります」って言うと、結構手伝わせてもらえるっていう感じで。

栃尾

ふーん。

高橋

で、そうこうしているうちに、まあ、本当にやりたい仕事っていうのがお声がかかり出すようになってきて、今の形になったっていうことなんですけど、それもやっぱりそこまでちゃんとなるのに、丸2年くらいはかかったので。

栃尾

あぁ、なるほど。

高橋

結局……

栃尾

それ、頼むときって、「これができます、あれができます」みたいに言うんですか?

高橋

あぁ。

栃尾

それとも、「僕に何か仕事ください」って感じなんですか。

高橋

そこもですね、いろいろ深いエピソードあるんですけど。

栃尾

はい。

高橋

結論を言うと、そのアルバイトっぽい仕事の時代は、「あれができます、これができます」は言ってなかったんです。もう、なんか「何でもやります」みたいな感じでした。「肉体労働以外は何でもやります」みたいなぐらいで、やっていて。

栃尾

(笑)。

高橋

だけど、そのあとに、簡単に言うと、「なんか好きな仕事やりたいな」となってきたときに、僕はアイデア商品を作るみたいなところが得意技だったんで、「僕、アイデアすごいですよ」とかって言い出すと、こう上手くマッチングしないっていうことが起き始めたんですよね。

栃尾

あ、マッチングしないことが起き始める。なるほどね。

高橋

そう、それが、また話すと長くなるんで、それはまた今度でいいんですけど。

栃尾

そうですね。

高橋

なんか相手の……相手に自分が合わさっていくと、上手くいくんだけど、こっちがやりたいことを押しすぎると、そっちは求めてないっていうことがあって、だから、自分の強みから語るとあんまり上手くいかなくて、自分の弱みから語ったほうが、相手がこっちを助けてくれる形で、こっちが相手を補完できるみたいなことが起きたっていうイメージですかね。

栃尾

なるほどね。じゃあ、ちょっと焦ったりとか、仕事がそんなに思うように来ないなってときは、弱味を出していくっていう、「なんかこの人助けなきゃ」みたいな気持ちになってもらうっていうのがいいんですかね。

高橋

はい、そうですね。よく言うんですけど、「それは自分のこの細い見た目もよく作用しているから、そうできてるのかな」というのも半分思ったりしてて、「なんかズルいじゃん」みたいに思われたり、誰にでもこれをそう勧められるかは、まだちょっとちゃんと整理できてないんですけど、それは1つありだと思っていて、誰しもがやっぱり基本仕事するときって、「うちの強みは」とか、「私の得意技は」で語るじゃないですか。

栃尾

そうですね。

高橋

でも、それよりは例えば、僕の場合、デザインが全然できないんです。自分で引くことができないんです。「こういうのがいいな」っていうのはあるけど、手を動かせないので、「僕、玩具開発者だけど、全然アドビとか使えないですよ」っていうと。

栃尾

なるほど。

高橋

「うち、それ使える人いっぱいいるからさ、ネタ考えてよ」ってなるわけですよね。

栃尾

うん、うん。

高橋

だから、先に「俺のネタはすごいですよ」っていうと、そっちは「やべぇ奴きたな」ってなるんです……

栃尾

(笑)はい。

高橋

だから、僕は、話し方として、おもちゃを作ってるくせに全然デザイン引けないって話とかしていくと、向こうが僕を助けてくれるような形になって、組み合わさることができるなっていうのは、今もそんな感じですかね。

栃尾

なるほどねぇ。私は書く仕事ですけど、自分のことを進行管理するのは苦手なんですよね。

高橋

うん。

栃尾

でも、進行管理できる人っていっぱいいるじゃないですか、会社に。

高橋

はい。

栃尾

だから、もしかしたらそういうのを言っていくと、「じゃあ、管理しますよ」とか言ってもらえるのかもしれないですね。

高橋

あっ、そうですね。あと、それのもう一段階、最近すごい話し方のテクニックとして、自分の例なんですけど。

栃尾

おっ。

高橋

僕、ゲームをよく作るんですが、「僕が作るゲームはすごく優れていて面白い」ってことは絶対に言わないんですけど。

栃尾

ふーん。

高橋

僕、ゲームのトリセツつくるのが、めちゃくちゃ上手いんですよ、自分で。

栃尾

へぇ。

高橋

あの、これだけは自信があるんですね。

栃尾

なるほど。

高橋

自分より面白いゲームを作れる人は、もう世には数多いるんだけど、そのトリセツを「漏れなく、わかりやすく、簡潔に」まとめることがすごく得意なので、「僕、トリセツめちゃくちゃうまいですよ」って言うんですよ。

栃尾

はい。

高橋

で、この強みの言い方って、「別にトリセツってどうでもよくない」みたいな。

栃尾

(笑)ちょっとクスってなるところだけど。

高橋

そう、そう。ところなんですよね。で、そういうところだけど、絶対の自信があるっていうのを、この弱々しいやつが見せてくると、「あれ? じゃあ、コイツにトリセツやってもらいたい。じゃあ、コイツに全部頼もうかな」みたいな。で、トリセツ作れるってことは、論理的に考えられるだろうみたいなことで、イケるというか。

栃尾

うん。

高橋

だから、その強みをわりと、アイデアだ、企画だとか、デザインだって言わないで、「その中でもここだ」みたいなのを、わりとニッチなことを言うと、なんかこう組み合わさりやすいなって思ったりしますね。

栃尾

なるほど、でも、難しいな。「自分なんだろう?」って思ったときに、ちょっと出てこないですね。

高橋

うん、だからそれを磨いていくというか、なんかホントに好きなことって、なかなか気付かないものですけど、自分では。

栃尾

うん。

高橋

でも、必ず他の人から見るとあるんですよ。たぶん僕がとっちーさんともっと色々話すと、自分にできないことで。

栃尾

(笑)出てきますか?

高橋

まあ、さっきのね、タイピングの話然り。「タイピングがすごく速いな」っていうのをさっき見たんですよ。

栃尾

(笑)大好き。

高橋

好きだし、っていうポイントは自分では強みだとあまり思っていないことでも、まあ、1000人中1位ぐらいのものっていうのは誰にでもあるんだと思うんですよね。

栃尾

はい、はい。タイピング好きっていうのは確かにいいかもしれないですね。ライティングと結構直接的にかかわるし。なるほどねぇ。

高橋

そう、好きってのはいいですよね。

栃尾

いいですよね。

高橋

速いとかじゃなくて。

栃尾

うん。

高橋

「タイピングが速いんです」とか、「正確なんです」じゃなくて、「タイピングが好きなんです」っていいですよ。

栃尾

(笑)誰も傷つけないし、だから何って感じ(笑)。

高橋

うん、そしたらその人すごいノッて書いてくれるだろうし、ずーっと末永く一緒にやってくれそうな気がするなって思って。

栃尾

うん、うん。なるほど、なるほど。いいですね。じゃあ、ちょっと、そろそろお時間なので、えっと、不安なときにね、晋平さんがどう乗り越えてきたとかいうことと、ちょっと営業の話もね、ノウハウとしてお伺いしたところで、以上にしたいと思います。以上、栃尾江美と。

高橋

高橋晋平でした。

<書き起こし、編集:折田大器

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