【読むPodcast】#210 自分の軸ってありますか?(ゲスト:ヤギワタルさん)


「自分の軸」について考える機会があり、それをそのままヤギワタルさんに質問してしまいました。自分が嫌なことや悪だと思っていることを避けていると軸になるのかもしれません。また、話すうち、「自由」や「決める難しさ」について話が脱線をしていきました。

栃尾

クリエイティブの。

ヤギ

反対語。

栃尾

こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。

ヤギ

イラストレーターのヤギワタルです。

栃尾

このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人や好きな人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。でですね、結構「軸を持ってそうだな」と思って、ヤギさんが。それで自分の軸っていうのを言語化を試みてみようかと思うんですけど(笑)。

ヤギ

なるほど。

栃尾

はい、何か思いつくことってありますか?

ヤギ

うーん、そうですね……、「あんまりないかな」って思ってはいますけど……

栃尾

(笑)はい。

ヤギ

あるとしたら、「自分が納得するかどうか」ですかねぇ。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

「自分が納得していないものを使ったりすることはない」というか。

栃尾

へぇ、例えば。

ヤギ

例えば、文章とか書いていても、「この言葉は自分が理解できてる」って思う言葉は使いますけど、「この言葉なんだろう」みたいな、「ちょっとわかってない」って思うような言葉は使わないようにしたり。

栃尾

うん。

ヤギ

流行語とかはほとんど使わなかったりしますね。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

それは自分の中に、自分でまだ納得できてないときに、皆が使っていても、自分が納得してなかったら使えない、使いたくない。

栃尾

うん、それめっちゃわかります。私も、番組の結構前の回ですかね、同じこと言ったことがありますね。それは、もしかして「理解が遅いのかな」と思ったんだけど、でも、まあ、同じで、結局納得できないと使わない。自分の中にこう、まあ、肚落ちとかよく言いますけど、すっかりインストールされてから使えるというのは確かにありますね。

ヤギ

はい。

栃尾

で、例えばですけど、でも、イラストとか描かれていると、広告とかもありますか?

ヤギ

広告はほとんどないですね。

栃尾

あぁ、そうなんだ。じゃあ、あんまり……

ヤギ

たまにあるかな。

栃尾

そういうときって、まあ、私いわゆる普通のメディアのお仕事と広告仕事って全然色が違うと思ってて。

ヤギ

うん、そうですね。

栃尾

ですよね。で、広告はクライアントが神様みたいな感じで、その一声ですべてが変わってしまうと。

ヤギ

はい。

栃尾

で、メディアっていうのは、やっぱり公平さっていうか、公正さっていうか、そういうのをちゃんと編集者の人がバランスを取るっていうものがメディアだと思うんですけど。

ヤギ

うん。

栃尾

なので、結構理不尽な直しとかないですか? 広告系で。

ヤギ

あぁ、ありますね。

栃尾

その「なんか納得できない」みたいな(笑)。

ヤギ

あぁ、確かに……、確かにそうですね。仕事だと「別にいっか」みたいなのはありますね。

栃尾

あぁ、なるほどね。

ヤギ

仕事で譲れないものっていうのは、ほとんどなくて。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

最終的にクライアントとか、成果物を見たお客さんなりがどう思うかが一番大事なところなので。

栃尾

ふーん。

ヤギ

そこで僕の「いや、これはこういう言葉は使いたくない」、まあ、言葉はあんまり関係ないですけど、「イラストこういう絵は描きたくない」っていうのは、もうほとんどないけど。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

ギリギリ、「こっちのほうがいいんじゃないですか」っていうことはありますね。

栃尾

なるほどね。それはじゃあ、仕事よりも普段の生活のほうが軸があるっていうこと?

ヤギ

普段の生活……

栃尾

その言葉を今、言った言葉をちゃんと納得しないと使えないとか。

ヤギ

言葉はそうですね、はい。『note』を書いたりするときはすごい、Twitterつぶやくときも、「この言葉は使いたくないなぁ」みたいなことはありますね。

栃尾

うん、うん。なるほどねぇ。

ヤギ

イラストでいうとなんか、あんまり下品なやつは書きたくなくて。

栃尾

下品?

ヤギ

下品というか。うーん……

栃尾

まあ、確かに品がある感じしますよね。

ヤギ

「こんな下品なことやりたくない」みたいなことありますね。

栃尾

(笑)なんだろう。どういうのが下品?

ヤギ

あんまり僕にそういう依頼はないですけど、なんか「もっと煽った感じで」って言われたら、「そんなに煽んなくていいんじゃないかな」みたいなのは思ったり、たまに言ったりはするかもしれないですね。

栃尾

うん、うん。軸って、まあ、やりたくないことをなんかこう、「削いでいったら残るもの」みたいな。

ヤギ

あぁ、そうかもしれないですね。

栃尾

かもしれないですよね。

ヤギ

うん。

栃尾

私はちなみにそのほとんどギャラが見合え……、ギャラだけじゃないけど、まあ、色んな条件が見合えば、ほとんど仕事断らないんですけど、1つだけ、「インターネットの情報を拾って記事を書いてください」っていうのは、お断りするんですよね。

ヤギ

はい。

栃尾

だから、それは1つ私の軸からズレてるんだろうなと思っているんですけど。

ヤギ

うん。

栃尾

まあ、本当に、悪であるというのはあるかもしれないですけどね。コピーするみたいな、パクるみたいなことなんで。

ヤギ

そうですね。確かに。

栃尾

はい。変えればいいみたいに考える人もいるのでね。

ヤギ

そうですね。自分が悪だと思ってることは、できないですね、たぶんね。

栃尾

そうですよね。

ヤギ

善……、「正しいことをしたいというよりは、悪いことをしたくない」っていうほうが強いかもしれないです。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

正しいことが何かはわかんないけど、「これは正しくない」っていうことはわかってたりするので。

栃尾

なるほどねぇ。

ヤギ

「これはダメでしょ」みたいなことのほうがわかりやすいですよね。

栃尾

はい。

ヤギ

いいことはわかんないけど。

栃尾

うん、うん。なるほどねぇ。あと、思いつくのありますか? パッと。

ヤギ

譲れないことですか?

栃尾

軸みたいなやつ?

ヤギ

軸、軸……、うーん、「自分が納得する」っていうのと近いですけど、「自由でありたい」っていうのはありますけどね。

栃尾

ふーん、自由ってどういうことですか。

ヤギ

あんまり強くないかもしれないですけど。

栃尾

(笑)。

ヤギ

自由っていうのは、まあ、「自分で決められる」というか。

栃尾

そう、すごい、それはわかる。

ヤギ

「影響を受けないところにいたい」っていう感じですかね。

栃尾

えー、「影響を受けない」と「自分で決める」って関連してますか?

ヤギ

関係してないですか?

栃尾

あっ、わかんない。

ヤギ

関係してるような気がしますね。

栃尾

どんな風にしてる?

ヤギ

例えば、色んな人が周りにいたら、色んな人の意見を聞いて、自分の行動を決めなきゃいけないけど、それをなるべく自分が好きな人の影響だけを受けるようにしたいとか、嫌いな人の影響を受けないところにいたいですよね。

栃尾

あぁ、なるほど、なるほど。じゃあ、影響を全く受けたくないわけじゃなくて、嫌な影響は嫌だ。

ヤギ

あぁ、そうですね。嫌な影響を受けたくないですね。

栃尾

うん、うん。それならわかります。私も決める……自分で決めるっていうのは、すごい自由だなって思ってて。

ヤギ

うん。

栃尾

でも、やっぱり普通の人っていうか、お友達とか、会社員の人とかだと、あと普通に学校教育を受けてきた人だとか、エリートの道を進んできたような人っていうのは、自分で決める機会が圧倒的に少ないなと思ってて、だから、すごい難しいんじゃないかなって。

ヤギ

いや、そうですね。自分で決めるのは本当に難しいですね。僕も、本当に難しいと思いますね。

栃尾

どういうときに思いますか?

ヤギ

常に。決断したくないですね。決断したくない。

栃尾

2回言ったけど(笑)。

ヤギ

2回言いましたけど。決断は本当に嫌ですね、面倒臭いですよね。

栃尾

なんかそれも選択肢の中から選ぶ決断と、何もない中から、まあ、創り出すのと似てますけど。

ヤギ

はい。

栃尾

あの、なんか生み出すとか、決めなきゃいけないのと、またその難しさが違うなって思ってて。

ヤギ

そうですね。

栃尾

選択肢があればもうちょっとね、A社、B社、C社どれに行くっていうほうがわかりやすいですけど。

ヤギ

はい。

栃尾

「会社辞めたはいいけど、はて何しよう」みたいなのって、決めるのすごい難しいなって思いますね。その難しさをどう乗り越えてますか?

ヤギ

難しさは……

栃尾

でも、決めるの嫌だけど、でも、自分で決めたいんですもんね、自由が欲しいから。

ヤギ

そうなんですよ。だから、矛盾してるんですよね。

栃尾

そう。どっちもわかります。でも、それが人なんだろうなと思いますけど。

ヤギ

そうですね。難しいですね。決断は難しいっていうことだけはわかっています。

栃尾

(笑)。

ヤギ

だから、それを乗り越える方法は、今のところないですね。

栃尾

そうですか? (笑)。

ヤギ

(笑)とりあえず、「やってみてもいいことはやる」とかはありますけど。

栃尾

それは「やろう」って決めるってことですよね。

ヤギ

うん。

栃尾

まあ、小さいことから決めたり、小さいことからやるっていうのは、1ついいかなって私は、思ってますけどね。

ヤギ

そうなんですけどねぇ……、小さいことしかやれなくなっちゃったりするんですよね。そこがまた難しくて。

栃尾

そうですか(笑)。確かに、私そうかも。

ヤギ

毎日なんかやろうみたいに決めたりすると、毎日やれることしかやってない。

栃尾

はい。

ヤギ

イラストレーターでいうと、1日1枚絵をアップするみたいなのあるんですけど、1日で描ける絵しか描けなくなちゃうとかっていうのは、よくある話で。

栃尾

なるほどね、大作が描けなくなっちゃうんだ。

ヤギ

そう。だから、自分で決断するっていうのは、うーん、その決断を自分でもう一回、この決断で良かったんだっけみたいなのをもう一回考えないといけないから、面倒臭いんですよね。

栃尾

(笑)でも、「自分で決めたことしか、調整できない」と思います。

ヤギ

まあ、そうですね。「自分で決めてないってどういう人生なんだろう」みたいなのは、思いますよね。皆、自分で決めてるとは思いますけど。

栃尾

でも、会社に入って、「どの部署に行ってください」は会社が決めるとか。

ヤギ

あぁ、確かにそうですね。

栃尾

そう。で、「あなたはこの仕事をして、この仕事はしなくていいです」っていうのは会社が決めたりするので、その中で細かいことで何ができるかっていうのは、もちろん自分で考えなきゃいけないんでしょうけど、決めるって感じじゃないですよね、たぶん。このミッションがあるから、そのためにはこコレとコレとコレをすべきみたいな思考プロセスなのかなと思っていて。「本当に、果たしてその目標で良かったんだっけ」みたいなこととかを決める権限は、結構ないのかなって。

ヤギ

なるほど、そうですね。

栃尾

うん、思いますけどね。まあ、そこで頑張ってそこを決められる人が結構優秀と言われるみたいなイメージはありますけど。

ヤギ

うん、確かに。それでいくと、自分の決断の場合は、もう一回深掘りできるというか、「これは何のためにやるんだろう」みたいなことを自問できるから、そこがすごいいいですね。

栃尾

そうですね。

ヤギ

会社の場合は、「これはやることになってます」みたいなのは、決定してて、「コレやんなくていいんじゃないですか」とは言いにくい。まあ、言える人はいると思いますけど。

栃尾

うん。あとは、それを会社だったら証明しなきゃいけないとか。

ヤギ

うん。

栃尾

「この目標がいいと思います」みたいなときに、データが必要とか言われたりすると思うんですけど。

ヤギ

あぁ、確かにそうですね。

栃尾

自分で決めるんだったら、まあ、フィーリングで決めてもいいと思うし、やってみてダメだったら変えましょうもできるし、まあ、選択肢がありすぎて大変ですけど、それはやっぱりいいことだなって思いますね。

ヤギ

うん。

栃尾

ただ、さっきギクッとしたのは、小さなことしかできなくなっちゃうみたいなのは、確かに私は今あるなと思いますね。

ヤギ

そうですね。

栃尾

何日かがかりでやろうみたいなことって、もう考えないようにしてますね。

ヤギ

あぁ、やっぱり小さくまとまってっちゃうっていうのは、個人で動いていることのデメリットの1つだと思いますね。

栃尾

そうですね。会社でやってる事業を全部ミニマムっていうか、小さいサイズにして一人でやんなきゃいけないみたいなことですもんね。

ヤギ

そうですね。

栃尾

うん、うん。確かに、それは小さくなっちゃう。でも、大作作る場合1日1時間をそれに当てるみたいなことでしかできないですかね、そうすると。

ヤギ

あぁ、そうですね。そうなりますね。1日何時間か。

栃尾

うん、うん。で、1か月で仕上げるみたいなのとか。

ヤギ

そうですね。小説家とかはそんな感じだと思いますけど。

栃尾

確かにね、どんなに1日中やったってすごい時間かかりますもんね。

ヤギ

毎日、朝、何時間かけて書いて、いつ終わるかわからないみたいな。

栃尾

(笑)そうですね。

ヤギ

漫画家もそうかもしれないですね。

栃尾

そうですね。でも、漫画家って結構週刊連載がベースだったりするから、結構細かいかもしれないですけどね、タスクは。

ヤギ

確かにそうですね。

栃尾

うん、そうですね。なるほどなぁ。まあ、決めるとか、自由とかね、そういうのは難しいですけどね。

ヤギ

難しいですね。

栃尾

なんか、でも、嫌だけどやりたいっていうのは、なんかいいですよね。いいっていうか。

ヤギ

いいですか。

栃尾

いいです(笑)。

ヤギ

まあ、自由っていうのは本当に難しくて。最近の口癖がもう、「難しい」なんですけど、「難しい」っていうことだけがわかってればいいなとは思いますけど。

栃尾

あぁ、そうなんだ(笑)。

ヤギ

自由っていうのは、個人の自由と、個人の自由が皆が自由にやっていった結果、社会的にいいかどうかっていうのは、また別の話なんで、個人が、僕が例えば自分の軸とかって言って「自由」を掲げたとして、周りの人が「自由」を軸に掲げて、その社会ってどうなんだろうっていうのはあるんですよね。

栃尾

確かにね。誰かが合わせてくれないと(笑)。

ヤギ

そう、自由じゃない人が誰かいないと困る社会になる可能性あるんです。

栃尾

確かに。

ヤギ

村上春樹とかがよく言ってるのが、雪かきの話とかがあって。

栃尾

あ、わかんない。

ヤギ

「誰が雪かきするの?」っていう問題なんですよね。

栃尾

うん。

ヤギ

例えば、皆が「クリエイティブな仕事したいよね」みたいなこと言って、全員がイラストレーターになった場合に、誰も雪かきしないとか、誰も電車を動かしてくれないとか。

栃尾

うん。

ヤギ

例えば、それで、AIとかができて、コンビニの店員いなくなっても回るかもしれないけど、どっかで、誰もやらなかった仕事っていうのがたぶん生まれるはずなんですよね。

栃尾

うん。

ヤギ

それを失くそうとしてるのかどうかはわからないですけど。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

でも、なくなったからといって、皆イラストレーターの社会ってどうなんだろうみたいな、その辺はちょっとわからないですね。

栃尾

はい。それはちょっと追々考えて(笑)行きたいと思います。はい、じゃあ以上、栃尾江美と。

ヤギ

ヤギワタルでした。

<書き起こし、編集:折田大器

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