「私、問いを立てる力がないんだと思う」と、彼女は言う。それを聞いて初めて「私は問いを立てる力があるのかもしれない」と思った。インタビューで次々に質問を考えなくてはいけないので瞬発力もあるだろうし、自分の内面を考えるのが好きなので深く考える問いもよく立てる。
問いを立てる力は、これまでに鍛えてきた気がするけれど、どのようにしていたのだろうか。彼女といろいろ話すうち、二つの事柄が見えてきた。
1. いろいろな角度から問う
2. 答えや前提を繰り返し疑う
その2つのやり方を書いてみる。
いろいろな角度から問う
例えば「調子に乗る」ということについて考えるとき、いろいろな角度から問う練習をするといいかもしれない。
問い:「調子に乗る」とはどういうことか?
問い:「調子に乗っている」と「調子に乗っていない」の境目は何か?
問い:私は過去、どういう時に「調子に乗っている」と思ったか。
問い:身近な人で誰が「調子に乗っている」と感じるか。
問い:「調子に乗っている」人を見るとどうして不快になるのか。
問い:「調子に乗る」のは悪いことなのか。
問い:なぜ悪いことのように感じるのに、字面は良さそうなのか。
問い:「調子に乗っている」と言われたら、どんな気持ちがするか。それはなぜか。
などなど。たくさん考えていく。問いを考えるのも面白いし、問いに答えていくのも面白い。
答えや前提を繰り返し疑う
問いを聞くと、人はつい答えを考えてしまうもの。それでも悪くはないけれど、その答えをどんどん疑っていくのも有効。
問い:「調子に乗る」となぜ悪いのか。
答え:成長が止まるんじゃないか。
それに対して
問い:(答えを疑う)本当にそうだろうか。調子に乗っているのに成長し続けている人はいないだろうか。
または
問い:(答えの是非を問う)成長が止まるのはいけないことなんだろうか。本当に?
などなど。
それから、最初の前提を疑うことも大切。最初の問いはこれ。
問い:「調子に乗る」となぜ悪いのか。
これに対して、
問い:本当に「調子に乗る」は悪いことなのか。
と考える。つまり、質問に間違った前提が含まれていることがあるのだ。「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」などはこの典型で、勉強しなくちゃいけないという前提が含まれている。
日々こんなことをくり返していると、問いを立てる力が付いてくると思う。ひとりではなく、誰かとやってもいい。