【コラム】文章の構成は建築の骨組みと同じ


クオリティアップを期待されている立場で、メディアのお手伝いをしている。クオリティは、企画、インタビューの質問、実際のインタビュー、記事の構成、文章内容などいろいろな要素に関わる。その中で今回は、記事の添削の話。

「とっちーさんに全部書いてもらうと時間がかかり過ぎちゃうんで、インタビューの質問や構成案を考えてほしい」と、私の仕事としては珍しく、執筆以外の部分を担当することになった。

私がインタビューの質問を作り、インタビューを進めて、文字起こしは別の方にお願いして、それをもとに記事の構成案(原稿を書く前の筋道のようなもの。プロットや骨子ともいう)を作った。私自身はプロダクトの内容や方向性にあまり関与していないが、その方向性が変わったことで、構成案の一部をざっくりと削除したりもした。

構成がぶれていなければ添削は簡単

やり取りしている担当者の方はとてもとても私を尊重してくれていて、「手がかかり過ぎないように」といろいろ気を使ってくれる。だから今回も、私の構成案をもとに、別の方が記事を書いた。「公開しました!」とグループチャットに連絡が来る。

開いてみると、文章のクオリティで気になるところが多かった。これでは、プロダクトのクオリティが高くても、文章で信頼を失ってしまうかもしれない。担当の方に事情をお話すると、「いま変更しちゃうので、添削お願いできますか?」とのお返事。

私が10年以上所属していた編集プロダクションでは、後輩の面倒をたくさん見てきた。いろいろなことを教えるが、一番時間をかけるのが文章の添削だ。

まず、プロではない人の文章は「文として係り受けがおかしい」ものが多発する。話し言葉では気づきづらく、ニュアンスで通じるが、文字にするととたんにNGになる。余談になるが、素人の人が読んで「読みにくいな?」と思うのはこういうところだと思っている。「言語化できないけどなんだか気持ち悪い」――それが読者の離脱を引き起こす。

それ以外にも「説明不足」「流れがおかしい」「ネタ的に不要」「一文が長すぎる」など、指摘ポイントはいろいろある。

その中でもっとも手間がかかるのが、「そもそも構成がおかしい」「情報が足りていない」というもの。これはもう、建築物の骨組みと素材が間違っているようなものだ。

編集プロダクションにいた頃は、若手の文章力をアップさせるのが目的なので、彼らが一から書いたものを添削する。しかもできるだけ直接直さず、なぜNGなのかという指摘だけをする。これは本当に、ものすごくパワーが必要だった。

今回の文章を添削し始めると、数は多いものの、すべて軽微な修正でどうにかなった。質問やインタビュー、構成を自分でやっているため、骨組みや素材が私の意図したものだったから。30分ほどで添削をして、真っ赤になった画像を担当者さんへ送る。

「修正しました! これ、やってみるとすごく勉強になりますね!」

この担当者さん、ほめ上手なんだよね……。