ひょんなことで出会った島根県のお寺のお坊さん、武田正文さん。カウンセラーとして活動しながら、YouTubeの番組「武田正文の仏心チャンネル」でも精力的に配信しています。そんな変わったお坊さんである武田さん。まずは、武田さんが僧侶を志したきっかけや、知られざるお寺の世界などをお伺いしました。
クリエイティブの。
反対語。
こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。このポッドキャストは私、栃尾江美が好きな人やお話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。えー、今日から男性の声になりましたけど、武田さんに来ていただいております。
はい、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。武田さんは何をしている方か、教えていただいてもいいでしょうか?
はい、私はですね、浄土真宗本願寺派の僧侶ということで、お坊さんをしてて、まあ、色んなことをやってるのですが、臨床心理士、公認心理士ということで、心のカウンセラーをやってます。まあ、欲張りなんですが、もう1個始めて、最近はYouTuberとして、お坊さんYouTuberとしてオンライン上での色んな発信を頑張っているという感じです。
お坊さんで、カウンセラーで、YouTuberですね?
はい(笑)。
(笑)。すごい、場所はどちらなんでしたっけ?
私はですね、島根県の邑南町(おおなんちょう)というですね、もう日本の中でも過疎高齢化最強の場所みたいなところ、すごい山奥に住んでるんです。
あ、最強なんだ。
はい、一番山奥ぐらいですね。
へぇ、私があれですよね、何年前でしたっけ? 安田さんのPodcastの公開収録のときに。
何年前だろう。そう、そう、お会いしたんですよ。
そうですよね。
えぇ。
別にたぶんPodcastを聞いていたわけじゃなくて、何かお知り合いのあれでいらしてくれたって感じでしたっけ?
そう、その会場の方と実はお会いする機会がたまたまその日だったんですよ、本来。
あぁ、そうなんですね(笑)。
はい(笑)、色んな偶然でしたよね。
それで、「じゃあ、行ってみようかな」みたいな。
そう、そう。「なんか面白そうだな」と思って行って、ホント面白かったですけどね。
へぇ。それで、なんか「お寺を活性化させるにはどうすればいいですか?」みたいなことを質問をしてくださって。
そう、質問をさせてもらったんですよ(笑)。
(笑)。
懐かしいですね。
そうですね、だから昔のPodcastを遡れば、その回が出てるはずですね、何回だったか、忘れちゃいましたけど(笑)。
もう結構昔ですからね。
でも、そのときから面白いことやってらっしゃいましたよね?
そうですね、当時の仲間、まあ、今でもあの仲間も頑張ってるんですけどね、「My Japan」と言って、「日本文化を世界に発信しよう」って言って色んなことをね、やってる人たちで。
うん。
はい、そのメンバーで遊びに行きましたね、あの日はね。
武田さんはその当時結構お寺でイベントとかしてましたよね?
そうですね、イベントをバンバンやってましたよ。
(笑)。
(笑)。
音楽関係の?
まあ、音楽に限らないですけどね、まあ、音楽は好きなので音楽は結構やってましたけど。
はい。
最近結構頑張ってるのは、プログラミングですよね。
え?
最先端技術を使おうと、田舎でね。
はい。
「これを子供に色々教えよう」ってことをやっててですね。
あぁ。
色んな先生をお呼びして、今、子供にアプリ開発まで何とかもっていこうと思って、企んでるんですよ。
すごい、何の言語なんですか?
いや、まあ、言語ってほどまでいけてないんですけど、Rubyのですね。
おぉ。
Rubyというちょっと遊びのモノが……子供用のがあって、で、まあ、中学生ぐらいになるとRubyちょっと書き始めますけど、まだ、ちょっとそこまでいけてないんですけど、まあ、いけたらいいなみたいな感じです。
すごい。なんでそんなに変わったことをやってるんですか?
なんででしょうねぇ(笑)。
(笑)。
まあ、でも、お寺っていうところは、おそらく昔からですね、その地域で何か足りないものとか、課題があるのを解決する中心的な場所だったんですよ。
ふーん、はい。
昔、寺子屋っていうのがあって、子供の教育もやってたし、昔、病院もお寺だったんですよ。薬作ったりとか、病気治したりとか。
へぇ、そうなんだ。
で、江戸時代なんかは、役場の仕事はお寺が全部やってたんですよ。
へぇ。
戸籍の管理とかね。
えっ(笑)。
そう、やってた、やってた。
はい、すごい。
だけど、みんな知らないじゃないですか。
はい。
元々、お寺っていうのは仏教の教えを元に皆が幸せになれるとか、なんかこう豊かになれるきっかけを作るっていうのをどんどんやってたんですけど、今の時代だと、まあ、うちの住んでるところなんか、本当に周りに情報がないので、最先端のモノもないし、何かを変えようという人もいないから、そのきっかけを作ってやろうと、お寺で。
ふん、ふん。
なので、皆がやらない音楽のイベントをやったりとか、皆がやらないプログラミングを一人でやったり、最近はYoutubeをやったりとこう忙しいわけです(笑)。
(笑)忙しいですね。
まあ、好きですけどね、好きでやってるんですけどね。
「本来のお寺の役割みたいなのをもう1回考え直して、現代に甦らせよう」みたいな感じ?
そうですね、イメージそんな感じ。格好よく言うとそんな感じ。
あぁ、すごい。(笑)そうなんだ。えっと、それってお寺の経営って言うんですか? そういうのに関係してくるんですか?
あぁ、まあ、経営で言うと、田舎のお寺っていうのはかなり維持するのが難しくなってきているんですよね、もう。
ふん、ふん。
何人いたら保てるみたいな世界の、人口が減ると、それすなわち厳しい世界がやって来ていて。
はい。
ただ、じゃあ、この色んなイベント打ったら経営がよくなるかっていうと、別にそうでもないんですけど。
(笑)そうなんだ。
ただ、町が元気になれば、お寺も元気になるんですよ。
あぁ。
町が衰退するとお寺も衰退するっていうのは、もうこれは明らかなものなので、周りの人とか、関わる方が元気になっていけば、ものすごく長い目で見れば経営がよくなるかもしれないですけど、目先の経営にはあんまり役に立ってないかもしれないですね。
あぁ、そうかぁ。なんかお寺ってそもそもなんですけど、その地元に住んでる方の寄付みたいなことで成り立ってるんですか?
そうです、そうです。
あぁ。
はい。
そうすると、やっぱり人口を増やすのが結局は一番いいみたいな。
まあね、今までのお寺モデルを続けるなら、そういうことですね。
あぁ、はい、はい。
今までのお寺モデルなら、もう近所の家が何軒あるかで決まってくるんですけど、でも、僕ね、これたぶんもう変わると思ってるんですよ、これから。
はい。
もう建物とか、土地とかに縛られない時代になってるじゃないですか?
はい。
そうなってくると、お寺がじゃあその土地で、この近隣半径何㎞の人たちに支えられるっていう時代はたぶん終わって、もっと本当は人単位ですよね、この住職が面白いとか、このお坊さんが面白いとかっていうことで、ファンが集まって、コミュニティができるっていう形がたぶん始まるだろうなと思って、そういう意味でもYoutubeっていうのはもう住んでるところ関係なくて繋がれていくので、これを皆より先にやろうということで、働いているんですけど。
なるほど、それで仏教の教えみたいなことがコミュニティを作るにあたっては強みになるみたいな感じなんですかね。
そうですね、この仏教の価値観っていうのは、もう他の世界には全然ないものがいっぱいあるので。
ふーん。
これを本当に求めておられる方がたくさんいらっしゃるので。
はい。
本当に淡々と仏教の話をしていくだけで、Youtubeっていうのもかなり皆観てくれるなっていう印象は持ってますね。
へぇ。武田さんはいつからお坊さんなんですか?
えっと、18歳のときになったので、あぁ、もう何歳……何年前? 17年前ですね。
へぇ、それはお父様がやってらしたんですか?
そうですね、もう代々お寺なので、強制的に「お坊さんになりなさい」ということで、大学1年生のときの夏休みに、お坊さんの修行に行って参りました。
えぇ、大学生なのに。
そう、そう。夏休みに行くんですよ(笑)。
あぁ、そういう決まりなんですか?
いやいや、決まりじゃないんですけど、「お参りの手伝いはしなさい」と段々言われててですね、夏休みとかに。「だから取ってきなさい」と。で、取ってきたら「お参りの手伝いするためには車がいるだろう」と、「取ってきたら軽自動車を買ってあげるから、行ってきなさい」と言って、「では、行ってまいりましょう」ということで、車をね、小っちゃいやつ(笑)。
のせられて(笑)。
ミニカーみたいな車を買ってもらいましたよ(笑)。
はい、はい。
そう、そう。
へぇ、それはじゃあ、子供の頃から言われてたんですか?
そうですね、生まれたときからお寺の長男ってもうそういう宿命というか、呪いみたいなもんで、お坊さんにならなきゃいけないんですよねぇ。
ふーん、それは抵抗感はありました?
あんまりなかったんですけど、ただ、その普通のお坊さんルートに行くのは嫌だったんですよね。何か……
あ、もう当初から。
はい、何か自分らしいことがやりたいなとは思ってたので、大学では心理学を勉強して、「仏教と心理学の組み合わせいいだろう」っていうのを高校時代から思ってたんですけど(笑)。
(笑)すごい、戦略的に。
もう戦略をその当時から立ててたんですけど。
はい、はい。
まあ、今はね、良かったと思っていて、やっぱり心の悩みを抱えている人にアプローチするっていう意味では、仏教も心理学も一緒なので、その辺りではね、やってて良かったなという感じです。
へぇ、じゃあ、最初の頃からわりと「どんな変わったことをやろう」みたいなことは頭を悩ませたというか、ひねらせてたんですか?
そうですね、わりとたぶん早い段階から考えてたと思いますね。高校時代には結構もう考えてたんで。
へぇ、そうなんですね。その頃からどんなことを考えてたんですか? さすがにYoutubeは考えてなかったと思うけど。
Youtubeはまだなかったですからね、当時は(笑)。
(笑)うん、うん。
まあ、当時はまだ心理学くらいですよね。
あぁ、なるほど。
当時言われてたのが、葬式仏教っていう言葉があるんですよね。
ふーん。
お坊さんがもうお葬式しかしない、と。お経しか読まないからあんまり世の中で役に立ってないよね、みたいなことが結構言われる時代があったんですよ。で、その当時が僕が進路を選ぶときだったんですよね。じゃあ、仏教って何を一番しなきゃいけないのかなって言ったら、困った人を助けるとか、悩んでる人の力になるっていう。で、それができてないんだったら、それをするための学問って何が一番いいかなと思ったら、やっぱり心理学だろうということで、心理学を選んだって感じですね。
武田さんから見て、その両方を学ばれて、どういう相乗効果みたいなのがあるんですか?
あっ。
簡単に言うと難しいかもしれないけど。
でも、これね結構実はあって、仏教側だと教えはすごい素敵なんですけど、何せ仏教用語が難しいんですよ。
あぁ。
もう何言ってるかわからない。
あぁ。
で、現代の私たちはですね、仏教用語ではさっぱりわからないんですけど、それを現代語訳していくのが、心理学の言葉を使うとわかりやすくなるんですよね。
なるほど。
心理学の方が馴染みがあるじゃないですか。
はい。
だから、そっちが良くて。で、逆に、心理学の方だと、実はカウンセリングにも限界があって、人間が死んじゃうとかっていうときって、大事な誰かが亡くなったってときって、カウンセリングしても解決しないんですよね。
へぇ。
人間の命の問題とか、もうどうにもならない苦しみとかっていうのは、カウンセリングの理論ではどうにもならなくて、で、そのあたりを仏教っていうのは、実はカバーできる力があるので。
ふーん。
そういう意味でもう、ホント相乗効果でどっちにもいいことがあるなと思いながらやってます。
補い合えるんですね。
はい。
へぇ。じゃあ、仏教の用語を、難しいままで言葉にする術が今までなかったってことなんですか?
そうですね……まあ、センスのある人はですね、中にはやってた人はいらっしゃるんですよ。わかりやすいお説法とかをされる方もやっぱりいらっしゃったんですけど。
はい。
ただ、それはスーパーセンスのある人たちで、でまあ、僕はもうちょっとこの心理学っていうのはロジカルに組み立ててあるので、もうちょっとスマートな説明みたいなものができるかなと思って。
あぁ。
まあ、まだ完成してないんですよ、これは人生をかけてやろうって話で。
へぇ。
今、色んな言い換えとか、別の表現というのを僕も模索しながら、それで思い付いたのをYoutubeで話すみたいな感じですよね。
すごい、すごい、なるほど。仏教はちなみに、どんなプロセスで学んでいったんですか?
えっとですね、もう本当に独学みたいな感じになってて。
ふーん。
最初まあ、18歳のときに、お坊さんになるので、お経の最低限の読み方を覚えて、京都に行くわけですよ。で、講義があって。
あ、そうなんだ。
講義とかで仏教学とかをめちゃくちゃ勉強させられるんですけど、やって。
はい。
それはそれで勉強になったんだけど、その次が問題で。住職になるための資格っていうのが、また別枠であるんですよ。
ふーん。
これが結構試験が難しくって。
ふーん。
仏教系の大学に行ってる人っていうのは、そこで自動的に取れるんですけど、私みたいに他大学に行った人っていうのは、それを取らないと住職にならせてもらえないっていうね、決まりがあるんですよ。
ふーん。
で、めちゃくちゃ勉強しましたよ。これ、大学院のときに取ったんですけど、こっちの資格は。
はい。
だから心理学の大学院の入試もあるし、仏教の勉強もしなきゃで。で、しかも、仏教の本、一人で読むと全然意味がわかんないんですよね。
あぁ。
だけど、もう気合いですよね。気合いで全部覚えて、なんとか受かったんで良かったですけど。大変でした。
へぇ。
だから、ほとんど独学ですよね、自分で勉強したって感じですね。
心理学の大学院も行かれて、その上で仏教の資格も受けてっていうことですか?
そうです、そうです、はい。
へぇ。
並行してやってますよ、だから、ずっと。
えぇ。
大学も、大学院も、仏教と心理学両方学びつつみたいな。
なるほど、なるほど。勉強漬けみたいな。
そう、そう、そう。
それってお父さんは教えてくれないんですか?
まあ、教えてはくれてましたけど、まあねぇ……
教える専門家じゃないしね。
うーん……
はい、はい。
でも、基本は……、わかんないところは質問するみたいな感じでしたけどね。
ふーん。
基本は、自分が本と向かって。
なるほど。
まあ、憶えなきゃいけないですからね。最初は暗記ですから。
なるほど。暗記はお得意だったんですか?
まあね、勉強は苦手じゃないので、まあ、そんなに抵抗はなかったんですけど、何せ単語が難しかったので(笑)。ちょっと面倒くさかったですけど。
へぇ。
まあ、何とかなりましたね。
じゃあ、いわゆる住職とかお坊さんって言われてる人は、皆さんそういう大学を出ているか、もしくはその厳しい試験を受けているっていうことなんですね。
はい、皆さん、それは通過しているはずなので、語れるはずです。
(笑)なんか教科書みたいなのがあるんですか?
あるんです、あるんです(笑)。
(笑)。
結構大変なんです。
そうなんだ。
(笑)。
一般の人は絶対に読まない?
いや、読んでる人は結構いますよ。
あぁ、いるんだ。
で、あの一般の人でも、よくいらっしゃるのは、60歳過ぎて、退職されてからお坊さんになるって実は結構おられて。
へぇ。
で、そういう方たちはですね、第二の人生をどうやって生きたいかっていうときに、ずっとビジネスしてた方なんかは、次のですね、何か人生は、人のためになることをしたいって言って、お坊さんの道を選ぶ人は結構いるんですよ。
へぇ。
そういう方たちは、そういう本を見て勉強するんで、私と同じような感じで、そういうのを見て。
なれるんですね、そもそも。
なれます、なれます。誰でもなれるんですよ。
あぁ、そうなんだ。
はい、なれる。
へぇ。で、雇ってもらえるんですか?
うーん、まあ、雇ってもらおうと思うと、雇えるくらいの大きいお寺じゃないと無理なんですけど。
はい、はい。
ただ、それこそ、退職された方とかって、もうそんなにお金はいっぱいいらないよって方もいらっしゃるじゃないですか?
食べられればね、はい。
そういう方は、近くの小さいお寺のお手伝いみたいな感じで、ちょっとお参り一緒に行ったりとかっていう。生計が立つほど給料は出ないけど、それを喜びとっしてやってらっしゃるという方もいっぱいいらっしゃる。
へぇ、面白い。はい。
特殊な世界ですけど。
へぇ、なるほど、なるほど。じゃあ、今回は、武田さんの紹介ということで、これぐらいにさせてもらってですね。
はい。
次回から、また、なんだろうYouTuberの話とか、アウトプットの話とか色々お伺いできればと思います。
はい。
はい、では、以上、栃尾江美と。
武田正文です。でいいのかな?(笑)
はい、大丈夫です。
<書き起こし、編集:折田大器>