
『insight』という本に書かれていたことを発端に、内的自己認識と外的自己認識のギャップを埋めたいという発想になった私(栃尾江美)。そのためにフィードバックが大切だと書かれていたので、そのまんまヤギワタルさんに質問してみました!
栃尾クリエイティブの。
ヤギ反対語。
栃尾こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
ヤギイラストレーターのヤギワタルです。
栃尾このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人や好きな人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。えーとですね、最近気になっているのが、フィードバックのもらい方というか、受け取り方というか、認識の仕方というか、なんか私の界隈でちょっと流行ってたのかな、『Insight』っていう本があって、まあ、それまだ途中までしか読んでないんですけど、結局その自己認識っていうんですか。
ヤギはい。
栃尾「自分をどう認識するか」っていうところで、自分の「内的自己認識」だったかな、と「外的なもの」と2つあると。
ヤギうん。
栃尾で、「内的なもの」っていうのは、「自分の思考の癖はどんなのか」とか、「根源的にどんな欲求があるのか」とか、まあ、そういうのが「内的なもの」だと思うんですけど、まあ、「外的なもの」っていうのは、「この人は人の気持ちがわかんないな」とか、「仕事ができる、できない」とか、そういうのが「外的なもの」で、その両方が長けている人ってあんまりいないって話を聞いたんですけど。
ヤギうん。
栃尾でも、その両方が長けていると、やっぱ成長だったかな? まあ、すごく、判断とかもちゃんと……適正な判断ができるしとか、まあ、そういう「いいこと」がいっぱいあるんですよ、人生で。
ヤギ確かに。
栃尾うん、うん。認識がピッタリ合ってるというか、内側と外側で。で、「その外側を鍛えるためには、適切なフィードバックをもらうべきだ」みたいな話があって、「でも、それってすごい難しいよね」みたいな話があって。
ヤギそうですね。
栃尾「ヤギさんどうしてるのかな?」っていう……
ヤギあぁ……
栃尾ちょっと前置きが長くなりましたが。
ヤギいや、今思い出したのは、若いときってすごいズレてますよね。
栃尾そう、そう。自意識がね、すごいから(笑)。
ヤギ内的?
栃尾うん、自己認識かなぁ、たぶん。
ヤギ自己認識と、外的?
栃尾うん、自己認識?
ヤギなんだ?
栃尾外的じゃなくて?
ヤギ内側の評価と外側の評価、全然……
栃尾そう、えっ、外的自己認識じゃなかったかなぁ……
ヤギズレてますよね。
栃尾まあ、そうですよね。
ヤギ自分の「俺はすごいんだ」みたいに思ってるけど、実は何にもできてないとか。
栃尾うん。
ヤギ「アイツ何にも仕事できない」って思われてるとかってのは、若いときはよくありますよね。
栃尾どっちにズレてました?
ヤギ僕は……
栃尾「俺はすごい」系?
ヤギ「俺はすごい」系ですね。
栃尾(笑)。
ヤギどっちかって言うと。
栃尾そうなんだ、そうなんだ、はい。根拠のない自信っていうやつですね。
ヤギそれって結構難しいですね。
栃尾えっ。
ヤギ逆に、「根拠って何?」みたいなのはありますけど。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギ自信っていうのは根拠がないものだと、どっちかっていうと思いますけど……
栃尾えー……
ヤギありますかね?
栃尾なるほどね。えっと、わりと女子あるあるなんですけど、女性って自分を低く見がちらしいんですよ。
ヤギあぁ、はい。
栃尾例えば、なんとか詐欺症候群っていうのがあって、例えば、高い評価を受けると、「私はこの人を騙してる」って思っちゃうんですね。で、「自分が高いとは思えない」みたいなのが結構女性に多いらしくて。
ヤギはい。
栃尾だから、私はわりと自分が思ってる以上の評価をいただくなっていうことが多かったりして、で何だっけ? そうそう、でも、自信が付いてくるのは、外側の評価が重なってくると自信が付くので。
ヤギあぁ。
栃尾それは、まあ多分、私的には根拠があるんだと思うんですよね。
ヤギなるほど。
栃尾はい(笑)。
ヤギあぁ、そっか。だから、うーん、でも、若いときっていうのは、友達としか会ってないんで。
栃尾はい、はい。学生のとき。
ヤギ友達の評価をちゃんともらってるんですよ。だから、面白いやつっていうのは、周りから面白いって思われてる可能性が高い。
栃尾はい。
ヤギだから、それでいうと……
栃尾根拠はある。
ヤギピッタリ合ってる。
栃尾(笑)。
ヤギ友達のフィードバックと、自分のフィードバック、内的評価が合致しちゃう可能性ありますよね、今の話。
栃尾それは、合致してればいいんじゃないですか。
ヤギでも、「一般社会から見るとおかしい」みたいな。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギちょっと難しいですね。
栃尾なんか学生時代って、「面白いが正義」みたいな。
ヤギありましたね。
栃尾だから、面白いって言われると、「俺すごい」になっちゃうってことですか?
ヤギそうですね。
栃尾あぁ、で、ヤギさんはわりとそうだったってことですか。
ヤギ(照笑)。
栃尾お笑い目指すぐらいなんか(笑)。
ヤギそうですね。それはありましたね(笑)。
栃尾(笑)なるほどね。面白いキャラだったんですね?
ヤギ僕は、うーん……。それを自分で言うのはアレですけど。
栃尾確かに。
ヤギでも、面白ければいいっていう時代はありましたね。
栃尾あぁ、大学生ぐらい?
ヤギそうですね。
栃尾でも、私もそれありました。
ヤギあ、ホントですか。
栃尾大学生のときは、ファッション、恋愛、お笑、がすべて。
ヤギはい。
栃尾なんでだろうって思うけど(笑)。
ヤギまあ、でもね、よくある話だと思いますけど。
栃尾(笑)でも、女性はね、分かれるかもしれない。
ヤギあぁ、そうですか?
栃尾私は女子校出身だったのもあって。
ヤギはい。
栃尾女子校って面白い人がね、やっぱり人気があるんですよね。共学だとそうでもないんだろうな、と想像します。
ヤギあー、なるほど。
栃尾うん、うん。で(笑)、フィードバック……
ヤギちょっと話がズレてるかもしれないですけど。
栃尾そう、そう。
ヤギフィードバックねぇ、難しいですね……
栃尾そうだなぁ……
ヤギとにかく、自分では……自分は自分のことを外からは見れないっていう可能性が高いので。
栃尾結局はね、はい。
ヤギなるべく、「外側から自分がどう見られてるか」っていうのは、気にしなきゃいけないかなとは思いますね。
栃尾想像するんですか? それとも、やっぱり人に聞いたりとか、人の言葉を受け止めるとか。
ヤギ「冷静になってみる」みたいなのは必要かなと思いますね。
栃尾自分を?
ヤギ自分を。そうですね。
栃尾え、例えば? 「こんなこと言っちゃった」みたいなときとか。
ヤギそうですね……、自分の中では理屈が合ってるんだけど、外側からは自分がやった行動とか、話したことだけしか見られないんで。
栃尾はい。
ヤギ自分の中では、例えば、1、2、3、4って何かを積み上げていって、10というのを、10だけ言ったとしても、周りからしたら、その10しか見えないんですよね。だから、その前の論理が見えないんで、「この人、急に10って言った」みたいな、「何を言ってんだろう」みたいになっちゃうんですよね。
栃尾はい。
ヤギだから、その1、2、3、4みたいな筋道も、10を言いたいんだったら、1、2、3ぐらいも何か言っておかないといけないんですよね。
栃尾うん、うん。
ヤギでも、若いうちの評価の仕方とか、若い人全員かはわかんないですけど。
栃尾(笑)。
ヤギ僕はそうだったってことで言うと、やっぱり10を言いたい。とにかく10だけバンバン言ってけば、評価は付いてくるものだと思っちゃう。
栃尾うん。
ヤギだけど、ほとんどの場合、10っていきなり言われても何も伝わらない。
栃尾うん。
ヤギでも、友達は僕の1、2、3も知ってたりするんで。
栃尾あぁ。
ヤギ普段から一緒にいるから。
栃尾はい。
ヤギ「コイツが面白いことを言う」っていうのは、わかってたり、その前提を知ってるから面白さに気付いてくれたりする。その友達のフィードバックっていうのは、その前提を踏まえた上で成されている。でも、初めて会った人っていうのは、その前提を知らないから、10だけ見て、「この人意味わかんないこと言ってる」っていうフィードバックになったりするっていうのを、想像するしかないかもしれないですね。
栃尾なるほどなぁ。
ヤギわかりますか?
栃尾わかりますよ。えっとね……わかります。わかるって言っていいのかな、簡単にわかるって言って(笑)。
ヤギいや、いいです。
栃尾私もそういう感覚はあって、例えば、Twitterで日々私のツイートとかを見てくれている人は、私がどういう考えなのかとか、「意外と結構考えてるんだな」みたいなこととかを知ってくれてるんですね。だけど、私の文章だけ、商業的な、仕事で書いた文章だけを見たりとかって、「はあ、はあ、こんなもんね」と思うと思うんですよね。
ヤギうん。
栃尾だから、その……、でも、私の日々のプロセスを知っていて、その原稿を見た人と、やっぱ……、それ愛着とかも関係していると思うんですけど、かなり違うなとは。
ヤギそうですね。
栃尾思います。
ヤギはい。だから、そのフィードバックを誰からもらうかで、結構違いが生まれちゃうというか。
栃尾うん、うん。ある、ある。
ヤギすごい近い人からすると、わかってくれてるから、「あなたは大丈夫」みたいな。
栃尾あぁ、確かにね(笑)。
ヤギ評価が高くなりやすい。
栃尾確かにね(笑)。
ヤギ「私はあなたのことを理解してます。なぜなら、1、2、3ってあなた積み上げてったから、今10来てるよね」みたいな。
栃尾うん。
ヤギでも、すごい遠い人からすると、「なんか急に来たけど、アイツ何にもないのに、急になんか難しいこと言ってる」とか、「そんな大したことないな」みたいな評価になりやすい。
栃尾はい。
ヤギでも、その途中の……、あんまり突き離しもしないけど、なんか自分の過去とか未来までケアしてくれる人からの評価が一番重要かなとは思いますけどねぇ。
栃尾そうですね。
ヤギフィードバックのあり方がいくつかあるっていうのを理解してないと、フィードバックはちゃんともらえないかもしれないですね。
栃尾なるほどなぁ。なんか、まだその本を全部は読んでないんで、あれですけど、何のためにフィードバックをくれるかってことにもよりますよね。
ヤギそうですね。
栃尾例えば、「仕事をうまく行かせたいんだったら、ここ直したほうがいいよ」とかっていうフィードバックなのか。仕事は抜きにして、「夫婦間を上手にやるんだったらこうしたほうがいいよ」とかによっても違うから。
ヤギはい。
栃尾それによって、例えば仕事のことを家族に聞いてもしょうがないかもしれないし、確かに、そういう見方はありますね。
ヤギそうですね。イラストレーターの話、具体的な話をすると。
栃尾うん。
ヤギイラストレーターっていうのは、結構、ファイルを持って、自分の作品ファイルを持って営業行ったりするんですよ。
栃尾うん。
ヤギそのときに、デザイナーなり、出版社なり、広告代理店の人とかに見てもらったときに、絶対になんかしらのフィードバックがあるんですよ。
栃尾なるほど、はい。
ヤギで、結構、色んなフィードバックが来ちゃって。
栃尾うん、うん。
ヤギ「こうしたほうがいいよ」みたいな。
栃尾それぞれ矛盾してるし。
ヤギそう、矛盾しちゃうんですよね。
栃尾うん、うん。
ヤギだから、全部を真に受けてると。
栃尾確かに。
ヤギブレブレになっちゃって。
栃尾はい。
ヤギ何にも花開かないっていうことがあります。
栃尾それどうするんですか?
ヤギうーん、だから、それで、「はい、はい」って言って何も聞かないとか、それがなんか僕は辛くて、持ち込みってのはあんまり止めちゃったんですけど。
栃尾皆アドバイスしてくるの?
ヤギ「アドバイスされたいから行ってるんじゃないんだけどなぁ」みたいなのもあるし。
栃尾(笑)確かにね。
ヤギでも、若いときはやっぱりアドバイスしてくれて、「あぁ、なるほど」みたいなこともあるんで、行ったほうがいいとは思いますけど、アドバイスとかフィードバックはありがたいんですけどね。まあ、その辺は難しいから信頼している人をこの人って決めて、この人の言ってることだけを守るとかはありますね。
栃尾へぇ、今そうしてるんですか?
ヤギ最近はないですけど、前はありましたね。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギ鈴木成一さんとか。
栃尾はい。
ヤギ関口信介さん、もう亡くなっちゃったんですけど、デザイナーで。その人が何て言うかは、気にする。でも、他の人が言ってることはそんなに気にしないとか。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギは、ありますね。
栃尾なるほどねぇ。あと、今作品を持って行くってことで思ったのは。
ヤギはい。
栃尾それ最終形しかわかんないじゃないですか、さっきの話で言うと、10しかわかんないじゃないですか。
ヤギはい。
栃尾でも、仕事ってやっぱり日々のやりとりのしやすさとか、前の回で言ったかもしれないけど、文脈を知ってイラストを描くと。
ヤギはい。
栃尾その文脈を知るみたいなプロセスってもうすっぱ抜けてますよね、作品だけ見ると。だから、その辺のフィードバックは持込みじゃ得られないですもんね。
ヤギあ、そうですね。
栃尾うん、うん。
ヤギそうなんですよ。だから、最初は難しいですね、仕事を得るのは。イラストレーターが。
栃尾仕事を一緒にしてる人からフィードバックをもらうことはありますか?
ヤギあります……。あんまりないかな、でも。
栃尾でも、聞けないですよね?
ヤギそうですね。聞けないですね。
栃尾聞けないから、言ってくれる方と出会えたらラッキーって感じじゃないですか?
ヤギそうですね。
栃尾あぁ。あんまり……
ヤギでも、褒めてくれる人ぐらいしかいないんですよね。
栃尾そう、そう。あんまり苦言は言わないっていうか。
ヤギはい。でも、まあ、その辺はわかるというか。
栃尾まあ、空気でね。
ヤギいや、自分で……わかるというか。
栃尾あ、ホントですか。
ヤギうーん、その辺はさっきもちょっと言いましたけど、突き放すしかなくて、自分を。
栃尾うん。
ヤギ「自分大好き」っていう気持ちと、「自分全然ダメ」っていう気持ちを両方持ってないと。
栃尾はい、はい。
ヤギうまく行かないですね。
栃尾なるほどぉ。
ヤギ前に『note』に書いた「自信の問題」もありますけど、「自信がないフリーランスの不安」っていうのを書いたんですけど。
栃尾3月初旬ぐらいですかね。あれ、中旬?
ヤギそうですね、初旬ぐらいですね。
栃尾初旬ぐらい。
ヤギ次に仕事がこないかもしれないっていう不安があっても、続けていけるのは、自分大好きだから。
栃尾(笑)。
ヤギ自分大好きだから続けられる。
栃尾うん、うん。
ヤギ自分の作品大好きとか。でも、嫌いでもある。嫌いでもあるから向上できるんですよ。
栃尾うん、うん。なるほどね。
ヤギそこがなんか、でも嫌い過ぎると「辞めりゃいいじゃん」みたいな話になっちゃう。
栃尾うん、うん。なるほどねぇ。
ヤギそこの両方必要で、なんで嫌いかって言ったら「ココとココがダメだから」。常に、そこは冷静に見れるようにしておかないと、伸びないし、それが自分からのフィードバック、外側からの視点としてフィードバックを自分でやってるみたいな感じですかね。
栃尾ふーん、なるほどねぇ。じゃあ、自分で2人いて、その2人が見てくれてるみたいな。
ヤギそうですね。自分の中と外を。
栃尾なるほど。
ヤギ自分を俯瞰して見れるようにする必要があると思いますね。
栃尾なるほど。
ヤギそれが前にもちょっと話した視点の問題で、視点をいくつか持っておけば、自分の視点っていうのは当たり前に皆持ってるんですけど。
栃尾うん、うん。
ヤギ視点を他の人に持っていけるように訓練しておけば、その人が見たらどういう風に思うかっていうのが想像できるんで、それがフィードバックですね。
栃尾なるほどねぇ。
ヤギでも、まあ、すっごい原理的に、原理的というか、いつもの僕は妻にイラスト見てもらってるんですけど。
栃尾(笑)ネタばらしが。
ヤギその妻がどういうかっていうのはすごい重要ですね。
栃尾なるほどね。それは確かに、大事。
ヤギピュアな目というか。なんにも文脈を知らないで見てる。そのまあ、矛盾はちょっとしてるんですけど、視点を具体的にずらすというか、自分じゃなくて、妻の目から見たらどう思うかっていうのと、想像しても……、妻だけだと具体的に、2個しかないんで、想像してもっと色んな視点を持って、フィードバックを自分で想像するってことですかね。
栃尾なるほど、なるほど。
ヤギそれが大事な気がしてます。
栃尾うん、うん。はい、じゃあ、ちょっとね、お時間になってしまいましたので。
ヤギすみません。
栃尾いえいえ(笑)。ということで終わりたいと思います。以上、栃尾江美と。
ヤギヤギワタルでした。
<書き起こし、編集:折田大器>

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