【読むPodcast】 #199 器が大きいって、いいことなの?(ゲスト:三谷さん)


「器が大きい人」に憧れ、そうなりたいと思っている栃尾ですが、「いつでも器が大きい人なんているー??」と懐疑的な三谷さん。身の回りのもの(いい家具とか、いい革製品とか)にこだわっている人は、器が大きいのでしょうか? いろんな角度で考えてみました。

栃尾

クリエイティブの。

三谷

反対語。

栃尾

こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。

三谷

こんにちは、三谷です。

栃尾

このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。

三谷

はーい。

栃尾

はい、えーとね、「器が大きい、小さい」って言いますでしょ。

三谷

人のね(笑)。

栃尾

(笑)三谷さんは「言わない」って言っていたけど(笑)。

三谷

(笑)。

栃尾

結構、器の大きい人が好きだなと思っていて。

三谷

ふーん。

栃尾

「それは何だろうな」って。

三谷

どういうときに器が大きいって感じるの?

栃尾

まあ、許容範囲なのかね?

三谷

許容範囲。

栃尾

うーん。

三谷

何の許容範囲?

栃尾

何の許容範囲だろう。まあ、人に対してやっぱり思うかなぁ。

三谷

ふーん。

栃尾

ちょっとしたことで……、たとえば、自分の考えと違っても受け入れるとかさ。

三谷

うん、うん。

栃尾

それも器の広さだと思うし。

三谷

なるほど、はい。

栃尾

あと、「できない人をできないと決め付けず、良い所を探す」みたいなのもさ、「器が大きいな」って思うし。

三谷

うん。

栃尾

「普通は怒るだろう」みたいなところで、怒らないで……

三谷

穏やかで。

栃尾

穏やかでみたいなのも、器が広いなとかね。あと、奥さんの文句ばかり言っている人と、「いやぁ、奥さんこういう事情でよくやってくれてるよ」みたいなことを言う人では、後者のほうが器がデカいなって思うし。

三谷

度量が大きい。

栃尾

度量が大きいみたいな(笑)。

三谷

で、度量が大きくなりたいんだよね?

栃尾

あぁ、私はなりたいし、そういう人にやっぱり憧れるよね、「素敵だな」って思うけどね。

三谷

へぇ。

栃尾

三谷さんは?(笑)

三谷

そうっすねぇ。

栃尾

「器という概念がおかしい」って言っていたけど(笑)。

三谷

(笑)。

栃尾

呼び方の違い?

三谷

さっきも話したんだけど、どちらの方向から見ても器が大きいとか、どちらの方向、どんなテーマにおいても寛容であるとかっていうことが、果たしてあるんだろうかっていうのは思うんですよね。

栃尾

うん。

三谷

役割認識として、「そういう役割だから、結果、その部分に関していうと度量が大きかったりとか寛容だったりとかする」ということはあると思うんだけれども。

栃尾

なるほどね、この人は……

三谷

「こっち側からみたら許容範囲がめちゃくちゃ狭いね」ということは、その角度だったりとか、人との関係性とかによって変わるなっていう風に思うっていう。

栃尾

なるほどね。

三谷

「分人じゃないけど」みたいな。

栃尾

はい、はい。

三谷

うん。

栃尾

特に三谷さんはそうかもね。

三谷

特に?(笑)

栃尾

特に。

三谷

何が、何が?

栃尾

「あえて器を小っちゃくしているときがある」みたいな。

三谷

はい、はい。

栃尾

うん。「ここは別に許容範囲広げなくていいっしょ」みたいな(笑)。

三谷

(笑)。

栃尾

「広げる気もないし」みたいな(笑)。そういうことは三谷さんには確かにすごく感じるよね。

三谷

あ、ホントですか。

栃尾

うん。

三谷

ヨッシャ。

栃尾

(笑)だけど、片や極端に、「いやいや、人は人だから」みたいな、極端に許容しているような部分もあるね。

三谷

うーん、諦めの部分みたいな?

栃尾

諦めの部分とか、うーん、「誰でも長所はあるでしょ」みたいなことを言ったりとか。

三谷

はい、はい。

栃尾

「誰でもやればできるでしょ」とか、そういうところかな。

三谷

えーと、概念的に「器が大きいとか小さいとかっていうのはなんか嫌だな」って思うのは、「大きいほうが良い」みたいな、「小さいと微妙」みたいな。

栃尾

(笑)。

三谷

っていう考え方の一軸、Yes/No、白黒みたいなやつが嫌だなって思ってる。

栃尾

気に入らないと。

三谷

そう、そう。

栃尾

はい、はい。確かにそう考えちゃってたところはあるかな。「この人は器が大きいよな」みたいに、「もうその人で一個の器を持っている」みたいな考え方をしていたような気がするけど、でも確かに、持ち物とかにすごいこだわっている人いるじゃん?

三谷

はい。

栃尾

「ここの服じゃなきゃ嫌だ」とか、「ブランドだったら、“ここ”か“ここ”しか着ない」とかさ、わかんないけど。

三谷

文房具はこういうのにこだわってるとかね。

栃尾

こだわってるとか。どこどこの万年筆だとかね。

三谷

はい。

栃尾

そういうのってすごい素敵だけど、まあ、狭いって言えば狭いよね。

三谷

逆に、こだわっているから狭くなるってことだよね。

栃尾

そう、そう。「100円のボールペンなんて使ってられないわ」みたいな感じは狭いっちゃ狭い、確かにね。

三谷

うん。

栃尾

だから何て言うか、人を傷つけない分にはいいのかな?

三谷

うん、確かに。

栃尾

その器の狭さで人を傷つけたりとかさ、攻撃したりとかさ。

三谷

うん。

栃尾

それで、何て言うのかな、器が小っちゃいだけなのに、「自分は正しくて、あなたは正しくないです」みたいな言い方をする人とかが嫌なのかなぁ。

三谷

ほぅ、それは感情起伏だったりとか、うーん……

栃尾

うん。まあ、視野の狭さってことなのかもね。

三谷

ふん、ふん。

栃尾

うん。「自分の視野を疑わない」みたいな。視界を疑わない……なんて言うんだろうね?

三谷

なるほど。

栃尾

最初に「自分の意見と違っても受け入れる」って言ったけど。

三谷

はい。

栃尾

そういう人はやっぱり度量がデカいなみたいな。

三谷

「受け入れる」っていうことと、「認める」っていうことに若干差はあるなって思っていて。

栃尾

うん。

三谷

「その意見は理解できるし、わかるけど、受け入れられない」っていうことは。

栃尾

ある。

三谷

あるんじゃないかなと思っていて。

栃尾

うん。

三谷

「受け入れる」っていうこと自体が、うーん、「良いことなんだろうか?」って思ったりするね。

栃尾

まあね。

三谷

1つのパーソナリティの中に、色んな人の考え方を本当に受け入れられる人がいると思ったら、その人はバケモノですよ。

栃尾

もちろん、100%の話はしていなくて、器が無限に大きいっていう話はしていなくてね。

三谷

うん。

栃尾

だから、もちろん受け入れられない部分はあるんだけど。

三谷

うん。

栃尾

反射的に言われたことを拒否っちゃう場合ってあるじゃん。

三谷

うん。

栃尾

だけど一旦「それもありかもしれない」と自分のテーブルの上に載せると、初めてそれがちゃんと見れる。

三谷

あぁ、それはいいね。

栃尾

それを見もしないで、「そもそも自分の考えと違うから違います」みたいなのとか、あとは、「あなたは新人だから、聞けません」みたいな態度の人が結構いるなって思っていて。

三谷

へぇ。

栃尾

哲学対話とかで特にね、あるんだけど。

三谷

うん。

栃尾

どんな子どもが言った意見でも、「それってこういう意味なんじゃないかしら」と一旦見つめてみるみたいなのが、結構……、その上で、受け入れる、受け入れないを判断したほうがいいけど、それができる人ってなかなかいないなと思ってるんだよね。

三谷

それはそうだね。姿勢の問題なんじゃないですかね。

栃尾

姿勢の問題ね。

三谷

相手に興味をもって知ろうとするっていう姿勢があるっていうことなんじゃないかなって思う。

栃尾

なるほどね。そうだね、そう、そう。

三谷

僕、嫌いな言葉に、「みんなちがって、みんないい」っていう言葉があって。

栃尾

(笑)。

三谷

「みんなちがって、みんないい」わけないだろうって。

栃尾

(笑)そうなの? いいじゃん(笑)。それはね、結論付けられちゃうと私も嫌だね。

三谷

そう。

栃尾

うん。

三谷

あの……、リタリコでタグラインを作るときに。

栃尾

何を作るとき?

三谷

お客さんに対するメッセージタグラインを作るときに。

栃尾

タグラインね、うん。

三谷

「人はちがう。それでいい。そこからはじまる。」っていう風にしたんですね。

栃尾

うん。

三谷

人が違っているのは当たり前で、それでよくって、それは当たり前だから。で、そこからスタートしましょってことにしたんですよ。

栃尾

うん。

三谷

「みんなちがって、みんないい」っていうことじゃなくて、違いがあって、それが認められていて、そこからスタートして、理解を深めていったりとか、関係性をスタートしましょうよ、っていう風にしたんですよ。それは結構、中でも人気がありますね。

栃尾

ふーん。「みんなちがって、みんないい」のどこがダメなの?

三谷

「みんなちがって、みんないい」っていうのは、違っていて、それがグッドであるっていうこと。

栃尾

うん。

三谷

まあ、これは我々が障害福祉をやっているからなんだけど。たとえば、車いすの人が、「みんな違って、みんないい」って言われて、「あなたの車いすだってことも個性だ」って言われたって、「いや、俺、車いすなんか全然気に入ってないし、個性じゃない」って思ったりするわけじゃないですか。

栃尾

うん。

三谷

知的障害だって、知的障害の本人が知的に障害があるってことを「良い」って言われたときに、「いや、良くないでしょ」って思うじゃないですか。

栃尾

うん。

三谷

だから、「みんなちがって、みんないい」っていうのは、それは理想論ではあるけれども、それを何て言うのかな、本当かどうか、言われた側として……、言う側は気持ちいいかもしれないけど、言われた側として正しいかどうかっていうことは、結構議論しますね。

栃尾

リタリコのタグラインは何なんだっけ? もう一回言って。みんな……

三谷

人はちがう。それでいい。そこから始まる。

栃尾

そこから始まる。

三谷

そう。別に「良い、良い」とはもう……、良いかどうかわかんない。

栃尾

「それでいい」って言うのに、プラスの意味が含まれていないっていうことね。

三谷

そう、そう。フラットであるっていうことが大事だと思っていて。

栃尾

あぁ、なるほどね。

三谷

事実として人は違いますっていうことと、それが良いも悪いもなくて、そのままでいい。

栃尾

「みんなちがって、みんないい」の「いい」もさ、もしかしたら、グッドっていう意味で使ってないかもしれないよね?

三谷

それもそうかもしれないね。けど、グッドっていう意味で使う人たちが結構多いなって思っていて。

栃尾

あぁ、なるほどね。それで誤解が生じちゃうからっていうことね。

三谷

そう、そう。人種が違ってもみたいな、カッコいい人がいても悪い人がいてもみたいな、能力が違っても、みんな良いよねって言われたら、良いって言われたら優位にある人しか言えないね、みたいな。

栃尾

うん、うん。「それで」にしたことがポイントっていうことね。

三谷

「それでいい。そこから始まる」ね。

栃尾

なるほどね、何の話してたんだっけ?

三谷

器の話です(笑)。

栃尾

器の話ね。

三谷

そう、だから、器が大きいのが良いのか、小さいのが悪いのかみたいなのはちょっと疑問だし、「広げていけばいくほど素晴らしいっていうことなのかどうか」っていうのもちょっとわかんないなって感じがする。

栃尾

ふーん。まあ、視野と関係あると思う? 視野が広い、狭いって言うじゃない。

三谷

そうっすね、視野も狭いときがいいときもあるし。

栃尾

ふーん、それはでも、広い視野を持っていて、あえてフォーカスするっていうことなんじゃないの?

三谷

うーん、けど……

栃尾

広い視野をそもそも持ってなくていいと思う?

三谷

うん、別に持ってなくてもいいと思いますよ。その分野で、「ここだけにこだわりが強くて」みたいな、「他のことは知りません」みたいな人でも別に……

栃尾

外の世界はまったく知らなくても?

三谷

「でもいいんじゃないですか」って思ったりしますけどね。まあ、モノによるけどね。

栃尾

うん、まあね、具体例がないと難しいか。

三谷

「分野の狭さっていうところを切り取る」っていう話なら、「それでもいいんじゃないですか」っていう風に思うよ、みたいな。

栃尾

なるほどね。

三谷

それを、視野を広げるって言うのは、世界を見よ、みたいなことになるけど。

栃尾

うん。

三谷

世界を見てやるっていう、大きくやることが得意な人もいれば、そうじゃなくて、この距離感とか、この目の前の範囲の中で何かを極めて行くほうが得意な人もいるって思っていて、だから、広ければいいってもんでもないなって思ったりするね。

栃尾

なるほどね、あんまり関係ないと思う? 器と?

三谷

そういう風に、「いい人の定義をマジックワードにしているっていうのが、なんか嫌だな」みたいな(笑)。

栃尾

(笑)。

三谷

「疑り深いな」みたいな(笑)。

栃尾

そっか、そっか、まあね。

三谷

歴史の偉人とか、「理想の上司は?」みたいな、器が広い人っていうけど、「そんなに何でもかんでも器が広い人っているかな」みたいな。

栃尾

うん、うん。まあ、「私に対して」っていうことなのかもね

三谷

そう。自分に対して許容してくれるとか、自分に関して認めてくれるとか、自分に関して寛容な人が好きっていう話だったら、「Yes」っていう感じがする。

栃尾

それは「Yes」なんだ(笑)。

三谷

「それはそうだよね」みたいな(笑)

栃尾

そうだよね、自分とか、あとは目に見える関係者っていうことかな。

三谷

そうだね。けど自分にとって、「こっちから見て器が大きいっていう人が、その他の人にとって器が大きい人かどうかはわかんないよね」って感じがするよね。

栃尾

わかんないね。

三谷

そう。

栃尾

それは狭くてもいいのかな?

三谷

うーん、色々だなって思うよ、って。

栃尾

まあね。

三谷

入れるものによっても違うし、あとはさっき言った距離感によっても違うし。

栃尾

うん。

三谷

器が広い、大きいっていうことは、距離、近い人をたくさん抱えられるのかどうなのか、一定の距離感の人たちをガサッと囲うのが得意な人なのか。

栃尾

「器が小っちゃいな」って思うことはないっていうこと?

三谷

器が小っちゃいな?

栃尾

そういう風には考えない? 人に対して?

三谷

人に対して? 「この人は器が小さいな」って? あんまり思わないかもしれない。

栃尾

ふーん。そういうときどうするんだろう? 許容が狭いような人に、どういう風に思うの? どういう印象をもつの?

三谷

えっ? 許容が、具体的にどんな感じ? 許容が狭いって?

栃尾

「具体的に」……、そうだなぁ、まあ、さっき言ったみたいに、些細なことで奥さんの文句を言ってたりとか。

三谷

はい、はい。

栃尾

かなぁ……、あとは、まあ、そうだなぁ……

三谷

つまらない愚痴を言う人みたいなこと?

栃尾

(笑)つまらない愚痴を言う人はそうね、器小っちゃそうな感じするわ。

三谷

(笑)器は関係なく、ウザいねみたいな(笑)。

栃尾

そっか(笑)。

三谷

愚痴を言いやすい。

栃尾

確かになんか、マジックワードでちょっとずるい感じはするね。ただ、文句を言ってるのが気に入らないだけなのに、「器が小っちゃい」みたいな、「大義みたいなことで、この人を攻撃しちゃえ」みたいな。

三谷

そう、気持ちの中で整理をつけやすいよね。

栃尾

私自身がね。「私がムカついてるんじゃなくて、器が小っちゃいあなたが悪いんでしょ」みたいなことにすり替えているのかもしれないね。

三谷

そうだね、それはあり得る。

栃尾

確かにね。それはあるな。

三谷

でも、「なんでその人がそういうことを言うのかな」っていう背景にもよるから。

栃尾

うん、うん。

三谷

こっちから見たら、「小っせぇこと言ってんな」って思うかもしれないけど、「その人にとっていうと結構重大なポイントっていうことは、当然発生するな」って思うから。

栃尾

まあね。

三谷

そう、そう。「この人はここに興味があるんだな」みたいな。「正しくルールを守るっていうところに興味があるんだな」って思うけどみたいな。「細けぇこと言うな」っていう風には思いはしないって。

栃尾

そっか、思いはしないってこと?

三谷

そう、そう。

栃尾

あぁ、その人の興味がそこであるっていうことか。

三谷

そう、そう。

栃尾

私も別のところで細かいわけだからね。

三谷

そう、そう。それぞれ細かいじゃんみたいなね(笑)。

栃尾

うん、うん、確かにそうだね。

三谷

「それぞれ器が小さいよ」みたいな(笑)。

栃尾

そっかぁ。でも、使っちゃうな。もうちょっと器っていう言葉の解像度を上げていこうかな、そしたら。

三谷

確かに、いいんじゃないですか。

栃尾

と思います。はい、そんな感じでしょうかね。

三谷

うん。

栃尾

えーと、私はですね、『note』も書いていて、ちょっと『note』には、なんだろうな、そんなにたくさんは書いてないけど、結構不登校のことをエントリーして書いてたりするので。

三谷

お子さんのね。

栃尾

そう、そう。子どものね、不登校のこととか書いていて、そういうのでお悩みの方にね、私の経験がちょっとでも役に立てばなと思っていたりするので、もしご興味あれば、読んでみてください。以上、栃尾江美と。

三谷

三谷でした。

<書き起こし、編集:折田大器

http://emitochio.net/hantaigo_199/
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