あんなに「料理をしない」と言っていた三谷さんが、毎晩料理をしているそうです。「料理には暗黙知が多い」と言う三谷さんは、とにかく数をこなすことに専念しているのだとか。料理のことなら3時間語れると言っていましたが、15分で語ってもらいました(収録語にも散々語っていましたがw)。
クリエイティブの。
反対語。
こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。
こんにちは、三谷です。
このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。
はい。
三谷さんは最近ハマってることがあると。
そう、クリエイティブでも哲学的でもないけど……
クリエイティブじゃん。
そうかな。
そうでしょ。
僕はもう料理について話したいっていう。
(笑)「3時間ぐらい話ちゃうんじゃないか」っていうことなんでしょ。
そうそう、そうなの。
なんで料理し始めたの?
食べることは好きなんですよ、元々ね。
うん、知ってる。
とか、外食でどういうところで食べるとか、いい店を探すとか。
めっちゃ好きだよね。
「今日の昼飯何にしよう」っていうのを前日から考えちゃうみたいな。
ワクワクするみたいな(笑)。
で、「この食へのこだわりっていうのをいつか自分でやることになるだろう」と思ってたんですけど。
思ってた?
そう、そう。
へぇ、でも、「奥さんが料理上手だから作らない」って言ってたよね。
そう、かみさんが料理上手ってのもあって、あんまりこっちから「ああじゃこうじゃっていうのもないな」って思ってたんだけど、ついに始めてしまいまして。
(笑)
(笑)
思ったとおり始めてみたいな。毎日作ってるんでしょ?
毎日作ってる。
すごいよね、夕飯。
要は味覚レベルはエキスパートだと思ってるんですね。
なるほど。
でも、スキルレベルはマイナス100ぐらいなわけですよ。
あぁ、なるほどね。全然してないの?
全然してなかった。
一人暮らしのときも?
してない。
へぇ。
なんかカレー作ったりとか、麻婆豆腐作ったりとか、そういうルーがあるものぐらいはしてたけど。
でも、それも面白いね。
非効率だと思ってたんですよね、そのときは。
え? 自分で作ることが?
そう。美味しくないし。
まあ、そうだね。美味しく食べるためには非効率でしょう。
そう。で、「時間かかるな」って思ったから、「美味しいところへ食べに行ったりしたほうがいいな」って思ってたんですけど。
でも、それは他の創作でいうと、例えば、めちゃめちゃ目の肥えている絵画のバイヤーみたいな人がさ、自分で絵を描くっていうことでしょ。嫌になるよね、瞬間ですぐに。
だから、できないから(笑)。
圧倒的に足りてないってことが、ありありとわかっちゃうってことでしょ?
クソ不味いみたいなことでしょ。
目がなければさ、「まあまあ美味しいじゃん」って(笑)。
なるよね。
「満足して楽しい」みたいになるわけじゃん。そこがないってことでしょ?
ない。
苦痛なの?
8月からやっていて、8、9、10、11、12、5か月強やり続けているけど、「うわ、うまく出来た」っていうのはまだないっすね(笑)。
あっ、ないの?
「まあ、食えるな」ぐらいはあるけど。
へぇ。でも、素材にこだわったりみたいなのはするわけでしょ?
全然しないです。
あ、しないの? ちょっといいスーパーに買いに行こうとか。
全然ないです。
近くのスーパーで買って。
そう、だから「これを習得するのに、結局5年とか、10年とかかかるな」って思ったんですよね、料理をね。
すごいね。でもさ、例えばだよ、辻さんだっけ? なんだっけ? (笑)忘れちゃった。お料理の人。
うーん。
辻じゃない。なんだっけ、ど、ど、ど……
土井?
土井さん? だったかが、「自分で出汁を取ったうどんっていうのは、お店よりも美味いよ」って言ってて、「なんでかわかる?」って言ってたんですけど、なんでかわかる?
わかんない。
(笑)。
だってスキルレベルマイナス100だから、わかんないよ、そんなの(笑)。
出汁を取ったばかりだから。
あぁ、はい、「新鮮だから」ってことね。
そう。かつお出汁っていうのは、どんどん、どんどん味が落ちていくから、取った瞬間が一番美味い。で、それは家庭料理でしか味わえないっていうのが土井さんの言い分なわけよね。
へぇ。
だから、そういうのはあるんじゃないの? ないの?
僕は料理を習得しようと思ったときに、これはもうスポーツだと思ったんですよね。
あぁ、言ってたっていうか、さっき、言ってたね。
そう、そう。だから、とにかく、打席に立つしかないな、と。
はい。
たぶん、ある程度できるようになってきたら、そういう良い材料を使ったりとか、良い出汁を取ったりとかあるけど、もう圧倒的にできないから、「これはもう少なくとも振れるぐらい打席に立つしかないな」って思って、「これは物量しかない」と、だから「毎日作る」、「こだわらない」みたいな。
あ、こだわらないんだ。へぇ。
そう、だって全てのものを初めて作る。
そっか。
味噌汁も初めて作るみたいな。
うん。
で、料理ってやっぱり同じのを作る回数って少ないじゃないですか? 例えば、5か月やってても、2回、3回作る料理って限られるじゃないですか?
それはタイプによるよね、結構……
毎週決めてみたいなってこと?
とか、何かにハマると毎日のように作っちゃうとかいう料理研究家の人もいる。そういうのが好きな人も。
うーん、それだと家庭のニーズに合わない。毎日、同じもの食うわけにはいかないから。
だから、それは本人が好きなんだろうね。
確かに。
「そうやりたい。この材料極めたい」とかで、バァーってやっちゃうんだろうね。
そこまで行くとそうかもしれないけど、とにかく、毎日晩飯を作るっていうことをやろうと思ったときには、こだわってたりしてたらできない。なので、毎日ひたすら作るっていう。
すごいね、そのコンセプトっていうか、練習プラン。
あと、ちゃんと食材を無駄にしないとか、なんていうんですかね、本当にできないことばっかりなんですよ。
なるほどね。でも、それさ、どうするの? 毎日買い物行くの?
ありますよね。
レシピを探して。
料理は購買からスタートすると思ってるから、まずはチラシを見て、明日は何が安いか確認して。
レシピはその後決めるの?
最近はレシピを後に決めるときある。でも最初は、「まず、これを作りたい」があるじゃないですか。
はい。
で、決めて、それを買いに行くっていうことからやってた。
うん。
そうすると、余ってくるよね(笑)。
そうね、その中でやりくりしたくなるよね。
そう、そう。
で、それでまたレシピを見て。
そう。
それで、レシピを見なくても作れる感じにはなるの? レパートリー的な。
全然ならないよ。
ならないんだ。毎回、レシピを見るんだ。
毎回見ます。
なるほどね。得意料理もないんだ?
得意料理もない。
なるほどね。
で、これも理系的アプローチになっちゃってあれなんだけど。
理系的?(笑)
レシピが有りすぎて困るんですよ。
ネットに? そうよね。
例えば、「肉じゃが作ります」って言っても、肉じゃがのレシピって100個くらいあるんですよね。
ありそう。
なので、「わかんないな」って思って。再現なく調べちゃうから、一応、見るレシピは3つまでって決めてるのね。
なるほど。
3つぐらい見て、「大体、コレとコレとコレが入ってるから、コレはマストなんだな」。「コレとコレとコレは、コレじゃなくてもいいんだな」とかってのを見て、作り出します。
うん、スポーツとかってことでいうとね、わりと誰かコーチに付くでしょ?
あぁ、コーチがいるんならそれもいいかもしれない。
私はわりとさ、好きな料理家さんとかいたよ。
あぁ、なるほどね。
クセがあるから。
この人の料理本。
そう。
うーん、そこに行くのは3年後ぐらいかもしれない(大笑)。
(大笑)そっか。
まだ、弟子入りもできないみたいな。
何ができないって思う?
何もできないよ、だから。
レシピ通りに作ったら、それなりに美味しいんでしょ?
まあ、食えないことはないみたいな。
まあ、確かにお店の味になるっていうのはなかなか先があれかもしれないけど。
うちのかみさん上手いからさ、そもそも。
そっか、そっか。
そう。味噌汁なんか、「何回作ってもなんか味がボケるな」とかさ、あるじゃないですか。
そっか、あんまり気にしてないだけかも。
まあ、とにかく数をこなして。暗黙知が多いじゃないですか、料理って。
うん。
「これは煮過ぎてはいけません」とか。
なんか、「油がなじんだら」とかね(笑)。
そうそう(笑)。「色が変わったら」とか。
キツネ色とかね(笑)。
そう(笑)。
どんだけだよと(笑)。
曖昧過ぎて、できねぇみたいなことあるじゃん(笑)
ある、めっちゃある。
適量ってよく書いてあるんですよね。
適宜、適宜って書いてありますね。
適量って書いてある時点で次のレシピ行きますね、僕ね。
あ、やめるんだ、もう。
いや、それはそれで置いておいて、「その適量はどれぐらいなんだ」っていうのをなんか……
見なくてはならないと。
そう。
なるほどね。
けど、結局、その適量をわかるために打席数が必要だなっていうことで。
それはあるよ。
そこ、笑わないでね(笑)。
(笑)アユミちゃんが笑って聞いてた。
100回、200回打席に立って、初めて適量が理解できるなっていう。
でもね、ちょっと思うのは、同じ料理を何回も作ったほうがいいかもね。
そういう方向も考えるけど。
飽きちゃう?
家のニーズがだってさ。
毎週とかさ。
うーん。
でも、さすがに味噌汁の味噌がこれぐらいっていうのはわかるってことだよね。
それはまあまあ、なんとなく。
段々わかってくるか。
そう。
まあ、確かにね
今はだからもう幅広く、ありとあらゆるものを作るみたいな。
ふーん。
あとね、自分の食べたいものを作る。なので、一番最初に見るレシピは、またDマガジンとかになっちゃうんだけど、Dマガジンの『きょうの料理』とか、『オレンジページ』とか。
あぁ、雑誌で見るってことね。
『レタスクラブ』とか、いわゆる料理本で見た目を見て、「これ美味そう」って思って作り始めるんですよ。
うん、見た目大事。
そう、そう。『クックパッド』とかだったら、Howは載ってるけど、見た目とかが微妙だったりするんで。
まあね、一般の人が撮ってるからね。
そうそう。「これ作ろう」って思って始めるんですよね。
『クックパッド』はさ、同じような濃い味付けが多いんだよね。
あぁ、そうなんだ。
まあ、私が見てたのは数年前だから、今は知らないけど、『クックパッド』はまず開かないね、だから。
はい、はい。
別のにするけど。
『白ごはん.com』とか、『DELISH KITCHEN』とか。
あぁ、『DELISH KITCHEN』、はい、はい。
めちゃめちゃレシピサイトってあるんですよね。
そう。
そう。
やっぱり日々のニーズが高いんだろうね、主婦の。
これも結局修業で、たくさん見ていくと、「ここのレシピサイトはいいな」っていうのは、初めてわかるんだけど。
おすすめレシピサイトは?
うーん。
『DELISH KITCHEN』なの?
ベーシックなのは、『白ごはん.com』だな思ってるんですけど。
白ごはん、見たことないかも。
『白ごはん.com』はベーシックなやつをやさしく書いてある。
なるほどね。
「アクの取り方はこうです。別ページへ」みたいな。
あっ、すごーい。それはパパのニーズ、というか男性のニーズ。
「ブロッコリーの茹で方は」とかってちゃんと書いてあって、嬉しいなみたいな。
ブロッコリーも感じがわからないよね、どれぐらいで上げたらいいか。
でしょ。これも色んな説があるんですよ、だから。1分30秒がいいとか、2分がいいとか、3分がいいとかみたいな。
うん。あのぉ、勝間和代だっけ?
うん。
あの人がさ、すんごいロジカルに調味料を計算するよ。
へぇ、実験的にね。
お湯の量の何分の一、何%だから、塩分これだけだから、味噌の場合はこれ、塩の場合はこれ、醤油の場合はこれみたいに全部頭に入れて、その場で計算してやるんだって。
それやってたらなんか、僕スキルゼロだから(笑)。3日くらいかかっちゃうかもしんない。
(笑)感覚は掴めるかもね、そういうのを憶えるのが苦じゃなかったら。
うーん。
私はそこまで計算したくないから、それは取り入れられないなって思ったけど。
そう、まあ、とにかくね、修業だから、数をこなさなくちゃいけないっすよ。
奥さんは何か言ってくるの? アドバイスとかしてこないの?
いや、ほぼしないっす。
へぇ、してって言わないの?
うーん、なんだろうな、「楽しくやってるんだから、放っておいたほうがいい」って思ってるんじゃないですか。
三谷さんも放っておかれたいの?
放っておかれたい。
そうなんだ。
そう。だって嫌だもん、「自分で調べたいもん」みたいな。
そっか、そっか。
そう、そう。初めて出汁巻を作ろうとしたときに、途中で奪われた……
トラウマが?
って言うのもある。
そうなんだ。
「こうで、こうで、こうで」って言われて、「あ、もういいです……」って(笑)。
そういう経験があってね、なるほどね。
そう、そう。
スポーツでいうと、為末さんタイプってことでしょ? 為末さんってさ、自分でさ、トレーニングメニューとか決めるんだよね。
あぁ、コーチを付けないってことね。
そう、そう。
はい。
「そんなんじゃダメだ」って色んな人に言われたけど、まあ、それなりに成績を収めて、「それはそれでデメリットもあるよね」ってことはご本人も言ってるみたいだけどね。
自分でトライアンドエラーするっていうことが面白いからやってるんで、あと、いきなり上手くなろうと思ってないから。
なるほどねぇ。何料理もやるんだ?
何でも作りますよ。うーんとね……
中華だろうと。
酸辣湯とか作ったりとか。
へぇ。
嫁に「これを作れ」って言われて大失敗したのが、キッシュ、とか。
あぁ、難しそう、キッシュ。えっ、タルトから作るの?
いやいや、パイ生地で。
パイ生地でか、タルトじゃないか。
パイ生地でできるんで。
オーブンで焼くの?
オーブンで焼いた。
すごーい。
けど、初めてオーブンで焼くときに、初めて予熱っていうことを知るわけですよ。
そっかぁ。
そう。
それも知らないから。
そんなレベルだから。
うん。
「サラダを作るときは、まずは水で浸して、シャッキリさせて、水分をちゃんと取らないとダメなんだな」みたいなことがわかってくるんですよね。
はい、はい。
だから、暗黙知がそこら中で発生するんですよ。
でも、暗黙知だけを書いている本もあるけどね。
書いてあるけど、そんなのを読んでたら、いつまで経っても打席に立てないじゃん。
まあ、確かに、やりながら勉強するほうがいいか。
「この野菜は色が変わるから、何とか何とかで」みたいな。
うん。
「レンコンは色が変わるから、お酢に浸してから」みたいな。
うん。
ということを、毎回、獲得しながらやってる。
なるほどね。
今日初めてブロッコリーの正しい茹で方を知ったとかさ。
うん。
大体世の中そんなもんだと思いますよ。「パスタ茹でるときの塩加減どれぐらいなんだろう」とかさ。「そもそも塩っているんだ」みたいな。
うん。パスタの塩加減、検証の仕様がないよね。
だってわかんないもんね。
食べてみても、良かったのか悪かったのかわかんないから。
そう。
難しいね、なるほどね。
けど、面白いですよ。新しいものを獲得していくっていうことだし、正解が分かりにくかったりもするから、一遍に上手くなったりもしないから。
うん。だからなんかあれだよね。テニスもそうだけどさ、下手でも楽しめるんだね。
そう。全然楽しい。
それがすごいよね(笑)。
テニスも下手だけど、楽しいけど。
それがすごい、それが大事かもしれないなぁ。
めちゃくちゃ面白いっすよ。10年後ぐらいに、さっき言った素材にこだわるってのをやりたいね。
なるほどね、はい、はい。その継続するっていうのにちょっと関係する告知をして良いですか?(笑)
はい、どうぞ、どうぞ。継続ね。
私、SNSの発信をお手伝い、手助け? 名前はちょっと考えてるんですけど、そういうお仕事をしたいなって思っていて、企業の方、とくに、採用とかって今、情報発信しないと全然ダメみたいで。
はい。
広告とかで人が採用できなくなってきたみたいなことが言われてて、そういうことを中小企業、たぶん中小企業の方になると思うけど、そういう方と一緒にやって行けたらいいななんて思っていて。
へぇ、いいじゃん。
それをちょっとサービス化しようと、思っていますので。そのうち、ランディングページとか、チラシとか作りますので、良かったらご覧くださいって感じです。
ニーズはあると思いますよ。
ありそうだよね。たぶん、採用のホームページを作る人はめちゃくちゃいるけど、そこからどうやってリーチするのかっていうのは、面倒くさいじゃん結局。
うん、面倒くさい。
だから、それを企業の方、「私と一緒にやって自分でやりませんか」みたいにすればタッグを組めるかもしれないし、そういう感じで考えております。そういう感じで、以上、栃尾江美と。
三谷でした。
<書き起こし、編集:折田大器>