【コラム】ひとことで「文章力」と言ってもいくつかのレイヤに分けられる


「文章力」とは何か。私なぞが言い切るのは難しいけれど、当然ながら、ただ間違いがなければいいというわけではない。「読みやすい文章」を目指す場合でも、文章を洗練させていくうえで、ポイントがいくつかのレイヤに分けられる。 その「レイヤ」についてざっくりと紹介したい。

編集的立場での仕事を久しぶりにした。いただいた原稿で直してもらいたい部分を指摘し、修正してもらう。ところが、指摘のレイヤが多岐にわたっていて、1回で指摘するのはなかなかむずかしいと気がついた。

分解すると次のようになる。

レイヤ1:てにをは、言葉や語尾、助詞の重複、係り受けの間違い

慣れていないと、言葉の重複は大量に起こる。テーマとなる言葉だけでなく、通常の言い回しでも頻発する。「思う」が一段落に2回以上出てくると少し多すぎる。「ます」という語尾が連続する場合は直した方がいい。また、「に」「を」「の」などの助詞はかなりダブリがちだ。

「係り受けの間違い」もよくある。レイヤにすると1.5くらいかもしれない。やや高度。まあまあ見つけづらい。

レイヤ2:意味なし語、指示語など

「これらのことは」「~という」などの言い回しは避けた方がいい。意味があるようでないのだ。

指示語である「こそあど言葉」も減らした方が読みやすい。「こと」はできるだけなくす。動詞の「行う(おこなう)」は他の言葉の置き換えですべてに使えてしまうのでできるだけ使わない。

レイヤ3:文章のなめらかさや意味の流れ

文章のリズムやなめらかさは、何度も読んでみて調整するしかない。好みもある。

例えば、漢字が多いと情報が詰まりすぎる傾向がある。その場合は読むスピードに頭の情報処理が付いていけないのでとても読みづらくなる。ひらがなが多いと意味の切れ目がわかりづらい。

また、読点が多いと読んでいる最中に一文の長さを予想しづらく、結果として読みにくい。

喋り言葉に近い方がスムーズでリズミカルであることもままある。ただ、喋り言葉ならではの読みづらさがつきまとう。

書き言葉として読みやすいようにレイヤ1、レイヤ2を直していくと、途端にスムーズさやリズムが崩れがちだ。フォームを直したがためにいっとき下手になる、スポーツのようなものなのかもしれない。

レイヤ4:全体を通しての構成

「結局つじつまがあっていない」「何を言いたいのかよくわからない」といった誤りは、もっとも大事でもっとも直しにくい。順番を変えればそれで済む場合もあるが、そもそも情報が足りないケースも。

文章力を磨くために

文章力を磨くとは、これらのレイヤのスキルを少しずつ向上させていくこと。面白いことに、読んでいて引っかかった部分には必ずこういったおかしな「原因」がある。最初に原因はわからないが「おかしいな」と引っ掛かりがある。その原因を見つけ、修正するために「理屈」があるのだ。

理屈だけを知っていても、おそらく見つけることはできないだろう。だから「おかしいな」と感じるセンサーも同時に磨かなくてはならない。すっと頭に入ってこない「読みづらい文章」に出会ったときに、その原因を見つけるのもいいかもしれない。