【読むPodcast】#208 想像力がある方がいいの?(ゲスト:ヤギワタルさん)


以前出ていただき、リスナーさんから好評だったヤギワタルさんをまたもやゲストにお迎えしました! ヤギさんが考えていらっしゃるのが「想像力」について。想像力がありすぎると不幸になるのでしょうか。想像力を働かせず、ただ刹那的に今を楽しんでいた方が幸せなのでしょうか? 一緒に考えてみください! 本を読むサルのイラストはヤギさんにご提供いただきました。ありがとうございます!

栃尾

クリエイティブの。

ヤギ

反対語。

栃尾

こんにちは、ストーリーエディターの栃尾江美です。

ヤギ

こんにちは、イラストレーターのヤギワタルです。

栃尾

このポッドキャストは私、栃尾江美が話したい人や好きな人をお呼びして、クリエイティブに関することや哲学的なことを好き勝手に話す番組です。今回は、以前、どれぐらい前ですかね? 出ていただいたヤギワタルさんにまた来ていただきました。よろしくお願いします。

ヤギ

よろしくお願いします。

栃尾

えっとですね、最近気になっていることがあるということで、それについて話したいのですが。

ヤギ

はい。

栃尾

はい、説明いただいてよろしいでしょうか?

ヤギ

あっ。

栃尾

(笑)無茶ぶり?

ヤギ

最近気になっていることというか。

栃尾

はい。

ヤギ

ざっくり言うと「想像力」のことなんですけど。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

以前に、コロナ対策で、安倍首相が全国の小中学校に休校を。

栃尾

はい、しましたね。

ヤギ

休校を要請して。で、「そういうことがあり得るかな」とは思っていたんですけど、その要請のあとに、「休校をすると、そういう小学校の子どもを持っている親が困る」というのを僕は初めて知って、僕は子どもがいないんで。

栃尾

はい。

ヤギ

「そこまで考えてなかったな」みたいな。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

まあ、僕と同じぐらいの想像力。

栃尾

(笑)。

ヤギ

だったということなんですけど、安倍首相が。

栃尾

(笑)なるほどね。

ヤギ

だから、僕は安倍首相をその時はそこまで否定できなかったというか。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

「オレも考えてなかったしなぁ」みたいな。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

で、「この想像力って結構必要なんだな」っていうのを思ったという話ですね。

栃尾

そうですね、でも、今の話でいうと、「たぶん想像力って限界があるから、多様性を持たせましょう」みたいな社会の流れだと思うんですよね。

ヤギ

うん。

栃尾

「女性を役員に入れなきゃいけない」とか、そういうのって多分、そこに子育て中の女性が一人いれば想像できたことですよね。

ヤギ

そうですね。

栃尾

だから、そういう、あったほうがいいけど、限界があるっていうことなんだろうなって思いました。

ヤギ

そうですね、だから想像力っていうのは、「人の想像力には限界があるから、色んな人と会った方がいい」っていうことで、想像力じゃなくて単純に、例えば組織とかだったら、「色んな人を入れることによって想像力を補っている」っていうことですかね。

栃尾

それはあると思います。やっぱり自分と全然違う、例えば私だったら、「人が一人ぼっちだったら寂しいだろう」って思うわけですよ。

ヤギ

うん。

栃尾

もう当たり前のように。だけど、「全然寂しくないよ」っていう人もいて、そんなこと聞いたことなかったら想像できないですよね。

ヤギ

そうですね。

栃尾

はい。

ヤギ

そうなんですよねぇ。

栃尾

「想像力っていくつかあるな」と思っていて、まずは、人の気持ちを想像する力。

ヤギ

はい。

栃尾

今みたいに、寂しい人の気持ちとか、寂しくない人の気持ちとか、逆に「人がいるほうが落ち着かない」みたいな人もいますし。

ヤギ

うん。

栃尾

あとは「この先に何があるのか」みたいな。さっきの安倍首相の話でいうと、「休校にしたら親御さんが会社行けなくなるよね」みたいなこと。プラス、あとイメージする力。例えば小説を読んで、そのシーンがありありと頭に浮かぶのも想像力かな、みたいな。

ヤギ

そうですね。

栃尾

はい。そう思ってて、どれが気になってるっていうのありますか?

ヤギ

その「人の気持ちを想像する」っていうこととか、「これからどうなるか」っていうこととか、想像力あったほうがいいんですけど、いいとは思うんですけど。

栃尾

はい。

ヤギ

その想像力を鍛える授業とかはまったくないじゃないですか?

栃尾

うーん。

ヤギ

「想像力を鍛えましょう」って誰も言ってくれない。言われた覚えがないというか。

栃尾

でも、「人の気持ちを考えましょう」は言われ続けてるかも。

ヤギ

あぁ、確かに言われてますね。

栃尾

(笑)。

ヤギ

でも、「考えろ、考えろ」って言われても、「どうやって考えるんでしょうか」みたいな。

栃尾

まあ、考えようとするのはまず第一歩ですよね。

ヤギ

確かにそうですね。

栃尾

考えようとしないっていう選択肢もあるから。

ヤギ

うん。

栃尾

はい。まあ、私のやってる『子ども哲学』っていうのが、最近ちょっとやってないけど、活動としてやってるのがあって、それってたぶんすごい想像力が鍛えられるんですよね。

ヤギ

うん、うん。

栃尾

それは色んなこと、例えば、「幸せってなんだろう」みたいなことをテーマにして、子ども同士が話すんですけど、「誰も否定しちゃいけない」とか、「話し終わるまで遮っちゃいけない」とか、そういうルールが色々あって、そうすると、「自分とこんなにも意見が違う人がいるんだ」っていうのが子どもでもわかるし、あと「自分が突き詰めて考えていくとこんな考えなんだ」みたいなことがわかってくるんですよね。それは一つ想像力を鍛えることだなって思ってて、結構私はそこが可能性を感じてるっていうのは(ありますね)。あと確かに学校教育で足りないなとは思っているところですね。

ヤギ

そうですね。それで、「想像力がないほうが、有利なときがある」と思うんですよね。

栃尾

ふーん、はい。

ヤギ

「想像力があったほうが、人の気持ちがわかったり、これからどうなるかわかる」みたいなことがあって。

栃尾

はい。

ヤギ

だけど、人の気持ちを想像すると、その周りにいる人は幸せになるかもしれないけど、自分の主張が通りにくくなることがある、と。

栃尾

主張しづらいってこと?

ヤギ

主張しづらいですよね。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

「この主張を通したら誰かが困るんじゃないか」とか。

栃尾

うん。

ヤギ

政治とかは特に多いと思いますけど、あとは会社の方針とかで、リストラしたほうが会社の業績はアップする。

栃尾

確かに。

ヤギ

だからリストラするけど、想像力がある人はリストラできないですよね。

栃尾

なるほどね。その想像力って結構「共感」っていうことに近いですかね?

ヤギ

そうですね、人に対しては共感ですよね。

栃尾

でも、たぶん、私が思うに、頭の中で「きっと傷つくだろうな」っていうのがわかるのと、本当に傷ついた人を見て自分も痛みを感じてしまう人って、結構種類が違うと思ってて、たぶんこう痛みを感じてしまうっていうのはもう資質、その人の特徴、個性だと思うんですけど、でも、そういうことで痛みを感じる人がいるってわかるっていうのは、わりと後天的にできるかなって思っていて。

ヤギ

うん。

栃尾

でも、今のリストラのことでいうとアレですかね。「ツラいから首切れない」みたいなのは共感のほうで、いくら頭でわかっても「まあ、しょうがないでしょ」みたいな風な決断をするかもしれないなと思いますけど、そういう意味だと共感力がない人のほうが決断しやすいっていうのはあるかもしれないですね。

ヤギ

そうなんですよね、だけど……うーん。

栃尾

(笑)。

ヤギ

ちょっと話変わりますけど、想像力でも、環境問題の話をしていいですかね?

栃尾

はい。

ヤギ

環境問題で、最近プラスチックの問題ちょっと言われるように。

栃尾

ストローとかね。

ヤギ

ストローとか、スーパーの。

栃尾

袋とか。

ヤギ

買い物袋とか。

栃尾

はい。

ヤギ

ああいうのって、想像力がないとそのビニール袋とか、プラスチックゴミが最終的にどうなっているかわかんないんですよね。

栃尾

はい。

ヤギ

リサイクルできるみたいなマークがついてて、プラスチックゴミとかで捨てること、まあ、東京は違いますけど、プラスチックゴミっていう分類する地域もあって、さもリサイクルできてるかのようになってるんですけど。

栃尾

確かにね、すべて上手く行ってるように(見える)。

ヤギ

そう。だけど実態はそうじゃないらしいんですよね、結局。

栃尾

あ、そうなんだ、家庭ゴミも?

ヤギ

そうですね、家庭ゴミも。プラスチックリサイクルで回収はしてるけど、全部をリサイクルできるわけじゃなくて、結局プラスチックでも色んな種類があって。

栃尾

あぁ。

ヤギ

種類ごとに分けて、分けて溶かして、また同じ種類のペレットみたいなのを作って再利用しなきゃいけない。

栃尾

ふーん。

ヤギ

だけど汚れているやつとかは再利用できないんですよ。で、そのリサイクルできる工場っていうのが先進国にほとんどなくて、なんでかって言うと、中国が昔買ってたからなんですけど、中国がもうそのゴミを買ってくれなくなって。

栃尾

ふーん。

ヤギ

今、東南アジアとかにゴミが行ってて、東南アジアではリサイクルしきれないんで、結局捨てちゃってると。海に捨てちゃってるみたいな。

栃尾

そうなんだ。

ヤギ

なんかその辺まで。

栃尾

はい。

ヤギ

想像力っていうのは、目の前にあるものだけじゃなくて、どんどん先に先に行く必要あるんですよ。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

で、「その想像力ってどうやって身につけるのかなぁ」とか、結局、知識なんですけど、想像力がある人は、例えば、プラスチック問題に関して知ってる人は、「プラスチックこれリサイクルされないだろうな」と思ってリサイクルゴミとかに出したりして、モヤモヤを抱えるんですけど、「リサイクルされてる」って思ってる人は、堂々とプラスチック買いますよね。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

で、捨てたりして。

栃尾

なんの罪悪感もなく。

ヤギ

なんの罪悪感も感じないから。

栃尾

うん。

ヤギ

想像力がないほうが幸せなんですよ。

栃尾

物事がシンプルっていうかね。

ヤギ

その時点においては。

栃尾

あぁ、今時点では、はい。

ヤギ

そのプラスチック問題に関しては、知らない人が幸福なんですよね。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

だから、その辺が難しいのは、幸福っていうのと想像力があるっていうのが結びつかないんですよ。

栃尾

うん、うん。なるほど。

ヤギ

で、最近考えてたのは、幸せな家庭があって。

栃尾

はい。

ヤギ

「幸せだな」みたいに感じてる人が、例えば、女の人が、旦那さんと結婚して良い家庭築いてたと思っていたけど。

栃尾

はい。

ヤギ

旦那が連続殺人犯だったみたいなことがあった場合に、その事実を知ったほうが、知ってしまうとその事実って壊れちゃうじゃないですか。

栃尾

はい。

ヤギ

知らなければ、幸せを感じてたんですよね。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

ちょっと想像力とズレちゃいますけど。

栃尾

例えば、浮気を疑ってるほうが、想像力を働かせてるほうが不幸かもしれないみたいなことですよね。

ヤギ

そうです、そうです。

栃尾

はい。

ヤギ

だから、見ないほうが幸せだったり、想像しないほうが幸せだったりするっていう矛盾があるなって思って。

栃尾

なるほど、なるほど。私、今聞いたので思ったのは、想像力というよりも視野の、視座の高さというか、視野の広さかなって思ってて。確かに、視野が狭いほうが、大丈夫なうちは幸せなんですよね。だけど、何かあったときに何にも対応できないっていうリスクを抱えている。

ヤギ

そうですね。

栃尾

だと思ってて、だからそれはどっちがいいって言いづらいけど、でも、一生のうちにずっとその狭い世界で安泰だっていうことが非常に難しいだろうと想像できるから、やっぱり想像力があったりとか、視座が高いほうがリスクヘッジができるっていうか、そんな風に考えてます。

ヤギ

そうですね。

栃尾

例えば、「田舎のほうで何も考えず親の事業を継いで、そっちのほうが幸せじゃん」っていうのを聞くんですけど、でも私は、「その事業が終わっちゃったらどうにもできなくなる、路頭に迷うだけだから、それよりは色んな世界を知っているほうが自分はいいな」って思って。

ヤギ

うん。

栃尾

そういう納得の仕方をしてますけどね。

ヤギ

いや、そうなんですよねぇ。

栃尾

(笑)。

ヤギ

僕もまあ、そう、そっち側なんですけど。

栃尾

はい、はい。「モヤモヤが多いな」みたいな(笑)。

ヤギ

ケセラセラ的な。

栃尾

はい、はい。生き方が。

ヤギ

「なんでもいいじゃん」みたいなことを言える人って本当に強いなと思いますね。

栃尾

なるほどねぇ。

ヤギ

「なんでも別にいいじゃん」みたいな、全部を受け入れられる人。「別に想像力なんてなくても、これでいいじゃん」みたいな。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

バカボンのパパ的な。

栃尾

あぁ、はい、はい。

ヤギ

「これでいいのだ!」って全肯定できる人ってすごいじゃないですか。

栃尾

はい、はい。

ヤギ

だから、なんか「どっちがいいんだろう」みたいな。

栃尾

どっちかにするしかないんですかね。

ヤギ

どっちかにする必要ないですけどねぇ。

栃尾

(笑)両方あったらいいですよね。

ヤギ

うん、だけど、想像力って身に付いちゃうと、想像してなかったときのことに戻れないんで。

栃尾

うん、確かに。

ヤギ

だから、どっちかなんですよね。

栃尾

でも、「それをどう捉えるか」みたいな。「楽天的に捉えるか」とかはできそうじゃないですか、知った後も。

ヤギ

そうですね、そうですね。そう、だから最終的には、想像力を身につけて、悪いことまで知って、「ここはどうなってんだろう」みたいに掘り下げてったら、「やべぇ、こんな酷いことになってる」みたいなことに気付いちゃう。想像力があるから、掘り下げられちゃうんですよね、悪いところまで。

栃尾

はい、はい。なるほどなぁ。

ヤギ

それでもう「こんなことになってる。ヤバイところ見ちゃった」みたいな。「夫、連続殺人犯だったんだ」みたいなことに気付いても、大丈夫なようにしておかないといけないというか。

栃尾

そこから乗り越えてもいいと思いますけどね(笑)。確かにね。

ヤギ

そこを、その事実を受け入れる強さがないと、想像力って結構怖いところがあって。

栃尾

確かに。

ヤギ

「想像力があるから、動けない」とか。想像力があった結果、悪い所まで見ちゃって、ちょっと打ちひしがれちゃったりすることがあって、なんか無力感とか。

栃尾

うん、うん。

ヤギ

無力を感じやすいんですよね、想像力あるほうが。

栃尾

なるほどねぇ。なるほどねぇ。そう、もうちょっと聞きたいですけど、次に行くか、次回また続けるか、別のテーマにするかまた考えましょうか。

ヤギ

はい。

栃尾

はい、じゃあ、以上、栃尾江美と。

ヤギ

はい、ヤギワタルでした。

<書き起こし、編集:折田大器

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