【コラム】自己認識を高める日記の書き方


アウトプット相談に来てくださる方に、ときどき日記をお勧めすることがある。自分の創造性を高め、内面を知るプロセスとして。私がおすすめしているのは「モーニング・ページ」で、毎日30分だけ自分の想いをそのまま書くというもの。ところが、「自己認識を高める」という点で効果を発揮するためには条件があると『insight(インサイト)』に書かれていた。今回はその内容を引用とともにまとめてみたい。

日記をつけても自己認識能力は上がらない(一部の例外を除き)

『insight(インサイト)』という本を読んでいる。これは「内的自己認識と外的自己認識の齟齬をなくそう」という趣旨のことが1冊にわたり書いてある。

自分の内面である「内的自己認識」と、外からの見え方「外的自己認識」をともに深く理解している方が、より幸福度が高いという科学的証拠があるそうだ。幸福度だけではなく、判断力や子育て、キャリア、コミュニケーション能力、仕事の成果、もろもろの優位なデータがあるらしい。

この中で私が読書の足を止めたのは、「内省をめぐる4つの間違った考え」という章。

その4つとは以下のもの。

  1. 南京錠のかかった地下室という迷信(あるいは私たちが自分の無意識を掘り起こせない理由)
  2. なぜか「なぜ」を考える
  3. 日記をつける
  4. 内省の双子の悪魔

それぞれとても興味深いのだが、私が覚えておかなくてはいけないのは「日記をつける」の部分だ。アウトプットのアドバイスをする立場として、こういった書籍の後ろ盾があると強い。

この本では、日記をつける人が

のちほど紹介する些細だが重要な例外をのぞいて、内的(または外的)自己認識が優れている事実はなかった。

というのだ。ここで、「些細だが重要な例外」を知ることが大切になる。それ以外はあまり意味がないということだろう。確かに、日記を書いている人がみんな、自己認識力が高いというイメージはない。

出来事と感情をセットにして書く。場合によって分析は逆効果

読み進めると、ひとつ目のヒントが出てきた。

心理学者のジェームズ・ペネベーカーは、彼が呼ぶこころのライティングに関して数十年単位の研究をおこなっており、日記のつけ方を知るにあたって有力な方向性を示してくれている。

この後、『こころのライティング』をポチったことは置いておき、こころのライティングのやり方も記されている。

一度に20~30分、「自分の人生に大きな影響を与えてきた問題に対する一番深い部分の思考や感情」を書くことだ

私は折に触れて、これをやってきている。過去ではなくリアルタイムだけど。逆に言うと、人生に大きな影響を与える問題について、出来事や思考、感情を書かずにはいられない。書くことなしに問題をやりすごしたり、乗り越えたりするのはとても難しい体質になってしまった。

逆に、幸せな出来事を「詳しく分析して」書くことは内省に逆効果なのだとか。楽しいことは分析しなくていい。とてもシンプルだ。

ネガティブな出来事は検証し、ポジティブな出来事については考えすぎないこと

これが最初のポイントらしい。

同じことを語り続けない。周囲への影響を理解するために書く

出来事を何度も同じ形で語り続ける人には向上が見られない。自分の体験への見方に成長、変化、あるいは区切りがあるべきだ

私はこれもやっている。同じことを書くのは退屈だから、つい違うことを書いてしまう。ただそれだけなのだけれど。

「こころのライティング」の多くの効能は、出来事に関する事実と感情の両方を書くときにのみ現れる。

ここまで読んで何となくわかってきたのは、私にとって「こころのライティング」は、外向けのブログではないということだ。ときにそういうこともあるが、基本的には誰にも見せていない自分用の日記。そこでは、どろどろした感情を持つ自分と、それをたしなめる自分と、楽観的でポジティブな自分が入れ代わり立ち代わり文章を書いている。もちろん、あとから読み返せるように出来事も書く。それは、できるだけ解釈を入れずに淡々と。

真に自己認識をしている人物は、多くの人が自分の内面を探索する機会だと考えている日記を、周りへの影響を理解する手がかりになるものだと考えている

そしてここ。私がやってもいるし、まだ足りない部分でもある(「真に自己認識をしている人物」であるかどうか定かではない、ということもある)。

ただ結果的に、私の誰にも見せない日記は自分の感情からスタートし、それに飽きて自分を客観的に見つめ、されにそれを置いておいて他人のとらえ方や感情をゆっくりと書き始めるというプロセスをたどる。それによって、いろいろな視点から物事を見ようとはしている。

文章の中では、相手をむやみに批判するのはとても退屈で、裏側の想いや感情のパターンを分析することが楽しい。そしておそらく、それこそが大事なのだろう。

毎日書いてはいけない??

日記の効能を最大限に得るには、おそらく毎日書かないことが最善だ。これは本当のことで、ペネベイカーらは、数日おきに書く方が何日も続けて書くよりも効果的であることを明らかにしている

毎日書こうとしたこともあったが、必要とするときにだけ書くサイクルが私には合っていた。必要な時には自分でそう感じる。

とても複雑でエネルギーが必要で、書かないことには処理できない大きな問題は、数日と置かずに書くこともある。あるいは、今これを書いておきたいという欲求にかられるタイミングで書く。

『こころのライティング』が届いたらまた読み進め、アウトプット相談で「自己認識を高めたい」という方にお伝えしたいと考えている。

『insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』ターシャ・ユーリック (著)

『こころのライティング―書いていやす回復ワークブック』ジェームズ・W. ペネベーカー(著)

<執筆:栃尾江美

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